我々にとっては当たり前のことであるが、六肢動物の肛門は後肢の後ろに開口している。しかしこれは魚類の特徴を考えると不思議なことである。基本的に魚類の肛門は腹鰭と臀鰭の間、つまり中肢と後肢の間にある。これは初期の六肢類やルゴッサピスキス類においても同じであった。


現生六肢類の発生の観察から、中肢以降の腸管はそれ以前が内胚葉由来なのに対し外胚葉に由来することが知られているため、上陸した時点で表皮が消化菅の延長として発達したと考えられてきたが、その実態は不明であった。そして本種、ロンガサヌスの化石は、この仮説を裏付ける確かな証拠である。


本種は明確に六肢に指を持ち陸を歩いたことが明確な最初の動物である。本種の成体はエラを持たなかったようで、主に沼地のほとりや湿った草原を生活場所としたようである。首に並ぶヒダや顎の一対のヒゲはその役割が不明である。プロトパルスティラヌスと比較して明確に細くなった首は、本種が陸上で小型昆虫などを捕食していたことを示唆する。また、尾に並ぶトゲは本種がルゴッサピスキス類などに捕食されそうな際身を守るのに役立っただろう。


そして何より、属名の由来にもなった中肢左横から伸びた伸長した肛門が本種最大の特徴である。

肛門の後退が起こった理由は諸説あるが、最も有力視されているのが感染症対策という説である。皮膚の弱かった初期の六肢類が沼地などを這い回る際、小石などで腹部が傷つくことが多かったと考えられる。その際、肛門が中肢のすぐ後ろにあると排泄後、毎度必ずその上を這うこととなり、感染症に感染しやすかったのではないかと考えられている。結果、肛門周辺の皮膚が徐々に伸張したいう説である。奇妙な進化ではあるが、後肢周辺は体を前進させるための強い筋肉とその付着点である第二腰帯があるため、体内の腸管を伸ばすのは困難であったのだろう。

他の説として、土中に産卵するために伸びた産卵管であるという説もあるが、生殖孔が管と繋がっていたかどうかは定かではない。

ただ、本種以降の六肢類において、伸張した肛門が徐々に皮膚に固定化されていくことを考えると産卵菅というのは考えにくい。


本種以降の六肢類を、それ以前のものと区別して肛門管類と呼ぶ場合がある。また、一般的に本種以降を六肢両生類とする。


本種がユグネリア大陸南部で上陸を果たした3億6500万年前ごろ、大陸北東部で大きな進化が起こっていた。失われたもう一つの両生類である四肢両生類の上陸である。


Longusanus laksanui  (属名は長い肛門の意。種小名は発見地の所有者であるラクサヌトリア公爵への献名)

六肢動物上綱六肢両生綱真六肢上目ロンガサヌス目ロンガサヌス科

体長382mm

デボン紀後期