2019年3月28日

 

2年前の今日、東京に出かけた。

その東京行きが最後になるなんて

少しも思っていなかったのに。

決して具合が良かったわけではないけれど、

新幹線で東京まで行けたから自分で歩けない程ではなかった。

 

その少し前、彼が自分の靴を整理していた。

もちろん私もお手伝いしたけれど、

玄関で自分の靴を磨いてた。

痩せてしまったお尻の骨が痛いだろうとクッションを持って行っただけで、

私が代わりに磨こうかとは言わなかった。

大丈夫、靴を磨いているくらいだもん・・・

少し元気ないけどきっと今のお薬は効いてるはず。

心の中でそう思った・・・本当は祈ったのかもしれない。

 

でもその後ろ姿が怖くて怖くてしかたがなくて、

遠まきにずっと見ていた。

リビングで一緒に居ても彼のことをじっとは見なかった。

私の不安に気づかれてしまいそうで、

怖かったから。

ここからいなくなってしまったらと思うといつでも何をしていても怖かった。

だから見てないフリをしながらも、

いつもこっそり見てた。

一度目線があったとき、

そんなタイプじゃないのに穏やかな悟りきったような笑顔を見せたのが

何より怖かった。

いつものいたずらっ子みたいな笑顔でいてよ・・・

そんな笑顔は私を不安にしかさせないよ。

 

 

帰省して義実家に滞在してから、

二回目のキートルーダを投与するために

前日に病院近くのホテルに宿泊した。

初回から3週間と少しぶりの外来では、

期待と逆で血液検査の結果が悪かった。

慌ててCTを撮ることになったけど、

キートルーダをした後に稀に起こる爆発的に悪化する状態ほどにはなっていなかった。

先生は2回目をやるかどうか悩んでいた。

前例のない投与で全額自己負担ということもあり、

現時点で数値が悪いという事実もある。

でも私たちの気持ちは決まっていて、

できるならやりたいと思っていた。

先生も迷いながらも「一か八か・・・」と言った。

そうか、最後のお薬なのに一か八かな状況なのか。

どこか他人事のように聞いていた。

 

投与が終わって数日後に外来の予約が入った。

私たちは予定を変更して病院近くのホテルに泊まった。

そこで彼はみるみる起きていられなくなっていった。

私は何もできなくてただ側にいただけ。

そこを離れるのは食事を買いに行くときだけ。

彼はほとんどずっと寝ていたから。。。

何であのとき病院に連れて行かなかったのかと

緊急入院になった後でやっと気づいて自分を責めた。

でも私はその時全然思いつかなかった。

ただただ外来の日が早く来るのを祈っていた。

なんて馬鹿だったんだろう。

彼の中で起きている急激な変化を実感できずにいた。

 

そしてやっと外来の日になったけれど、

彼はそのまま緊急入院になり治療は終了を告げられ

私は1人呼ばれて長くても2週間という余命宣告を受けた。

きっと去年も同じことを書いたんだろうな。

何となく記憶にある。

自分のお誕生日にベッドに横たわったままの彼が、

HappyBirthdayを唄ってくれて

その翌日に彼の残り少ない死を告げられたことで

3月末から4月は私の一番辛い時期になった。

お誕生日なんてもういらない・・・。

 

 

あれから来月で2年。

未だに彼が亡くなったことが実感できない。

何でいないのかわからない。

LINEを見たり動画を見たりできなくなった。

たくさん貼ってある写真を直視することもできなくて、

あの頃みたいに見てみぬふりをしながら

ちらっと見るだけ。

 

あの時はいなくなってしまうことが怖くてそんなことをしていたけれど、

今はいなくなってしまったことを実感するのが怖くて辛くて

哀しく寂しい気持ちが抑えきれなくなってしまうから

気づかないフリをしている。

 

そんな日中を何とかやり過ごし、

もうすぐ一日が終わる夕方になると少しホッとする。

夜、親しいお友達とのLINE。

私のなかで唯一の安らぐ瞬間。

未だに寝室は辛い。

なかなか眠れなかったり、

どうしようもなくなって泣き出したり・・・。

息を潜めて感情がおさまるのを待つ。

 

この、彼の気配のない静寂に

未だに慣れることができなくて

誰もいない暗い海の底にいるみたい。

一緒にいてくれると信じたいけど、

やっぱり無理。

声が聴きたい。

私を呼ぶ声…そして手を繋ぎたい。

もういちど抱きしめて頭を撫でて欲しい。

大丈夫だよといって欲しい。

 

 

 

来月は三回忌。

ブログがなかなか書けなくなったのは、

彼のことに前よりも向き合えなくなっているから。

ブログは私を助けてもくれたけど、

私のココロの声を綴るから

事実から逃げられない。

だからそれが辛くて更新できなくなる。

 

こんな頻繁に更新もしない、

進展もない得るもののない

拙いブログを読んでくださってありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

DieMaus