まん謎へようこそ!?漫研のハチャメチャ

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「漫研へようこそ」



春風が桜の花びらを舞い上げる4月のある日、青春高校の片隅にある小さな部室で、漫画研究会の新歓コンパが開かれていた。

「はーい、みんな聞いてー!」

赤毛のポニーテールを揺らしながら、部長の火川陽子(ひかわようこ)が大声で呼びかけた。

「今日から私たちの愛すべき漫研に、新しい仲間が加わるよ!みんなで歓迎しようね!」

陽子の隣には、緊張した面持ちの少年が立っていた。黒縁メガネをかけ、真面目そうな雰囲気を漂わせている。

「え、えっと...初めまして。1年の佐藤健太郎です。よろしくお願いします」

健太郎が深々と頭を下げると、部室に集まっていた女子たちから歓声が上がった。

「わーい、男子だー!」
「しかも真面目そう!」
「漫研に清き一滴ってやつ?」

健太郎は困惑した表情を浮かべながら、自分を取り巻く騒々しい雰囲気に圧倒されていた。

「まあまあ、そんなに騒ぐなって」

陽子が笑いながら手を振り、部員たちを落ち着かせようとする。

「健太郎くん、ようこそ漫画研究会へ!ここではみんな仲良く、楽しく漫画のことを研究してるんだよ。たまに暴走しちゃうけどね」

健太郎は小さく頷きながら、「はい、よろしくお願いします」と再度挨拶した。

「じゃあ、他のメンバーも自己紹介してあげて」

陽子の言葉に従い、まず立ち上がったのは小柄でショートヘアの少女だった。

「私は2年の水野みどりです。趣味は漫画を読むことと、キャラクターの衣装作り。コスプレイヤーでもあるんだ~」

みどりはウインクしながら、チャームポイントの猫耳型ヘアピンを指さした。

「へぇ、すごいですね」と健太郎が感心すると、みどりは得意げに胸を張った。

「でしょ?今度、健太郎くんもコスプレさせてあげる!」

「え?いや、僕は...」

健太郎が慌てて断ろうとするが、次の自己紹介者が彼の言葉を遮った。

「あたしは月島ルナ。2年。趣味は漫画を描くことと、みどりを困らせること」

長い黒髪を後ろでまとめた、クールな印象の少女がニヤリと笑った。

「もう、ルナったら!」みどりが抗議の声を上げる。

「冗談よ。でも、健太郎くん。この部活に入ったからには覚悟しておいてね。ここじゃ何が起こるかわからないわよ」

ルナの言葉に、健太郎は身震いした。何やら不穏な予感が胸をよぎる。

「まあまあ、怖がらせないでよ」

陽子が健太郎の肩を叩きながら笑う。

「大丈夫、みんないい子たちだから。ちょっと騒がしいけどね」

健太郎は少し安心したように微笑んだ。

「さーて、これで自己紹介も終わったし...」

陽子が両手を叩いて、全員の注目を集める。

「新入部員歓迎の儀式を始めましょう!」

「儀式?」健太郎が首を傾げる。

「そう、儀式!」陽子が目を輝かせながら説明を始める。「新入部員は必ず、自分の好きな漫画キャラクターに扮して、1分間即興ショーをしなきゃいけないの!」

「ええっ!?」健太郎が驚愕の声を上げる。

「そうそう、去年はみどりがセーラームーンのモノマネをしてくれたんだよね~」

みどりが赤面しながら、「も、もう思い出さないでよ~」と言う。

「わたしは美少女戦士セーラームーン!月に代わってお仕置きよ!...って感じで」

陽子がポーズを取りながら再現してみせると、部室中が爆笑に包まれた。

「さあ、健太郎くん。君は何のキャラクターになる?」

ルナが意地悪そうな笑みを浮かべながら尋ねる。

「えっと...その...」

健太郎は困惑しきった表情で、助けを求めるように周りを見回した。しかし、誰も彼を救う気配はない。むしろ、全員が期待に満ちた目で彼を見つめている。

「うーん...じゃあ...」

健太郎は深呼吸をして、決意の表情を浮かべた。

「僕は...ドラえもんで...」

「おお!」全員が歓声を上げる。

「よーし、じゃあ始めて!」

陽子が合図を送ると、健太郎は恥ずかしそうにメガネを外し、目を丸くして、

「ボクドラえもん!のび太くんのために未来の道具を出すよ!えーっと...タケコプター!」

と言いながら、頭の上で手を回す仕草をした。

「おおっ!」
「かわいい!」
「もっと!もっと!」

女子たちの歓声に押されるように、健太郎は続ける。

「どこでもドア!」
「タイムマシン!」
「どこでもテレビ!」

次々と道具を出す真似をする健太郎に、部室は笑いと拍手で包まれた。

「はい、タイムアップ!」

陽子のストップの声とともに、健太郎はホッとため息をついた。

「よくやったね、健太郎くん!これで晴れて漫研の仲間入りだよ!」

陽子が健太郎の背中を力強く叩く。

「ありがとうございます...」

健太郎は照れくさそうに頭を掻きながら、ほっとした表情を浮かべた。

「さあ、これからみんなで楽しい漫研ライフを送ろう!」

陽子の掛け声に、全員で「おー!」と声を合わせる。

こうして、健太郎の波乱万丈な漫画研究会での日々が幕を開けた。彼はまだ知らない。この部活が彼の高校生活をどれほどカラフルに、そして騒々しいものにするのかを...。


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 「漫画の世界へダイブ!」



新学期が始まって1週間が過ぎた頃、健太郎は放課後の部活動に慣れてきていた。しかし、漫画研究会の「研究」とは何なのか、まだ掴みきれていない。

「ねえねえ、健太郎くん」

ある日の放課後、みどりが健太郎に声をかけた。

「今日はみんなでこれをやろうと思うんだけど、どう?」

みどりが取り出したのは、一冊の分厚い漫画本だった。

「『異世界転生!まんが王国』...ですか?」

健太郎が表紙を読み上げると、みどりは目を輝かせながら頷いた。

「そう!これ、今すっごく人気なの。主人公が漫画の世界に入り込んじゃうっていう設定なんだけど...」

「へぇ、面白そうですね」

健太郎が興味を示すと、突然ルナが割り込んできた。

「ふふ、単に読むだけじゃないわよ」

「え?」

健太郎が首を傾げると、ルナは意味ありげな笑みを浮かべた。

「私たちは、その世界を実際に体験するの」

「はぁ!?」

健太郎が驚いた表情を見せる中、陽子が満面の笑みで部室に入ってきた。

「よっしゃー!準備はできたよ!」

陽子の手には、大きな段ボール箱が。

「何の準備ですか...?」

健太郎が恐る恐る尋ねると、陽子は箱を開けて中身を取り出し始めた。

「ほら、これ!」

取り出されたのは、様々なコスチュームや小道具だった。

「まさか...」

健太郎の予感は的中した。

「そう!私たちで漫画の世界を再現しちゃうんだよ!」

陽子が興奮気味に説明する。

「え、えぇ...」

健太郎が戸惑いの表情を浮かべていると、みどりが彼の腕を引っ張った。

「ほら、健太郎くんはこの主人公の衣装ね!」

「えっ、僕が主人公!?」

健太郎が慌てふためいていると、ルナが冷ややかな視線を向けてきた。

「当然でしょ。唯一の男子なんだから」

「そ、そうですけど...」

健太郎が言い訳をしようとしても、もう遅かった。陽子とみどりが彼を取り囲み、着替えさせ始めたのだ。

「ちょ、ちょっと待ってください!」

健太郎の悲鳴も空しく、あっという間に彼は主人公そっくりの姿に変身させられてしまった。

「わー!似合ってる!」
「カッコいい!」
「まるで本物!」

女子たちの歓声に、健太郎は顔を真っ赤にしながら立ち尽くすしかなかった。

「さあ、私たちも着替えるわよ!」

ルナの号令で、女子たちも次々とコスチュームに着替えていく。

陽子は勇敢な女戦士に、みどりは可愛らしい魔法使いに、ルナは謎めいた占い師に扮した。

「よーし、これで準備オッケー!」

全員が揃うと、陽子が満足げに宣言した。

「じゃあ、物語をスタートさせましょう!」

陽子の合図で、みどりが朗読を始めた。

「主人公の健太郎は、ある日突然見知らぬ世界に迷い込んでしまった。そこは漫画の世界だった...」

「えっと...ここは一体どこだ?」

健太郎が台詞を言うと、陽子が剣を振りかざしながら登場した。

「おお、異世界から来た勇者よ!我らが世界を救ってくれ!」

「え?僕が?」

健太郎が困惑した表情を浮かべていると、みどりが杖を振りながら駆け寄ってきた。

「勇者様!私が魔法でサポートいたします!」

「あ、ありがとうございます...」

健太郎が照れくさそうに応じていると、ルナがミステリアスな雰囲気で近づいてきた。

「ふむ...お主の運命は波乱に満ちておる。しかし、恐れることはない。我が占いの力で道を照らそう」

「はあ...」

健太郎が呆然としていると、突然陽子が叫んだ。

「魔王の軍勢だ!みんな、戦闘態勢!」

「えっ!?」

健太郎が驚いて振り返ると、そこには...段ボールで作られた怪物の人形が。

「くらえ!勇者の剣!」

陽子が勢いよく人形に突進する。

「私も!アイスストーム!」

みどりが青いリボンを振り回しながら、魔法を唱える。

「よし、占いの力で弱点を探るぞ!」

ルナが水晶玉に見立てたガラス玉を覗き込む。

「あの...僕は...」

健太郎が何をすればいいのか分からず立ち尽くしていると、みどりが彼の背中を押した。

「ほら、健太郎くんも必殺技を使って!」

「え?えっと...光の剣...かな?」

健太郎が恥ずかしそうに剣を振ると、女子たちから歓声が上がった。

「やったー!魔王軍を撃退したぞ!」

陽子が勝利のポーズを取ると、みどりとルナも喜びの声を上げた。

「さすが勇者様!」
「お主の力、まさに伝説通りじゃ」

健太郎は照れくさそうに頭を掻きながら、「いや、みんなのおかげです...」と呟いた。

「よーし、じゃあ次のシーンいくよー!」

陽子の掛け声で、部室の雰囲気が一変する。みどりが再び朗読を始めた。

「勇者たちは魔王の城へと向かった。そこには想像を絶する試練が待っていた...」

「おや?これは迷宮かな?」

ルナが不思議そうな顔で辺りを見回す。部室の机や椅子が迷路のように配置されている。

「う、うわっ!」

健太郎が椅子につまずいて転びそうになると、陽子が素早く彼を支えた。

「大丈夫?気をつけてね。ここは魔王の仕掛けた罠だらけだから」

「は、はい...」

健太郎が頷くと、みどりが杖を振りかざした。

「私の魔法で安全な道を探りましょう!エクスプローラ・ビーム!」

みどりが目を閉じ、何かを感じ取るような仕草をする。

「あっち!あの本棚の向こうに秘密の通路があります!」

「よし、行くぞ!」

陽子が先頭に立ち、みんなで本棚の後ろに回り込む。そこには意外にも...

「わっ!プリンだ!」

本棚の陰に隠されていたのは、大きなプリンだった。

「おや、これは魔王からの おもてなし かな?」ルナが不思議そうに首を傾げる。

「いやいや、これみどりが隠し持ってたやつでしょ」陽子が笑いながら突っ込む。

「えへへ、バレちゃった♪」みどりが舌を出して照れる。

「せっかくだから、休憩がてら食べちゃおう!」

陽子の提案に、全員が賛成。健太郎も緊張が解けたように笑顔を見せた。

「いただきまーす!」

みんなで声を合わせてプリンを頬張る。甘くてなめらかな味に、一同「おいしい~!」と歓声を上げた。

「ふぅ...やっぱり冒険の合間のおやつは最高だね」陽子が満足そうに言う。

「そうそう。現実世界に戻っても、こういう楽しみは大切にしなきゃね」ルナが珍しく優しい口調で言った。

「えっと...」健太郎が恥ずかしそうに口を開く。「僕、こういうの初めてで戸惑ってばかりだけど...すごく楽しいです」

「えへへ、よかった♪」みどりが嬉しそうに笑う。

「そうそう、楽しむのが一番大事!」陽子が健太郎の肩を叩く。

「さーて、お腹も満たしたことだし、冒険の続きといきますか!」

陽子の掛け声で、全員が立ち上がる。

「次は魔王との対決よ!」ルナが意気込む。

「頑張ろう、勇者様!」みどりが健太郎を励ます。

「はい!」健太郎も自信に満ちた表情で頷いた。

そして物語は佳境へ。部室は魔王の城となり、椅子や机で即席の玉座が作られた。そこに鎮座しているのは...

「我こそは魔王なり!よくぞここまで来たな、勇者よ!」

驚いたことに、魔王を演じているのは顧問の先生だった。どこからともなく現れ、赤いマントを羽織っている。

「せ、先生!?」健太郎が驚きの声を上げる。

「ふっふっふ...今日は職員会議をサボって参加させていただいたぞ!」

先生が得意げに言うと、女子たちから歓声が上がった。

「さすが岩田先生!ノリノリです!」陽子が喜ぶ。

「よーし、我が魔王軍の精鋭たちよ!勇者を倒すのだ!」

先生の号令一下、段ボールで作られた大量の魔物が現れた。

「来るぞ、みんな!」陽子が剣を構える。

「魔法で援護します!」みどりが杖を振りかざす。

「占いの力で敵の動きを読むわ!」ルナがガラス玉を覗き込む。

「えっと...僕は...」健太郎が戸惑っていると、先生が声をかけた。

「勇者よ、お主の真の力を見せてみよ!」

その言葉に、健太郎は決意の表情を浮かべた。

「よし...行きます!必殺、光の剣・フルパワー!」

健太郎が勢いよく剣を振り下ろすと、部室中が明るく輝いたかのような錯覚を起こした。

「ぐわーっ!」先生が演技で倒れる。「まさか、勇者の力がここまでとは...」

「やりました!魔王を倒しました!」陽子が喜びの声を上げる。

「勇者様、素晴らしい!」みどりが健太郎に抱きつく。

「見事な戦いぶりじゃった」ルナも珍しく笑顔を見せる。

「いやぁ...みんなのおかげです」健太郎が照れくさそうに言う。

「よーし、これで物語もハッピーエンド!」

陽子の宣言で、全員が拍手。

「いや~、楽しかった!」先生が立ち上がりながら言う。「こんな面白い部活だとは知らなかったよ。また参加させてもらうね」

「ぜひぜひ!」女子たちが口々に言う。

「健太郎くんも、どうだった?」みどりが尋ねる。

「はい!最初は戸惑いましたけど、本当に楽しかったです。まるで本当に冒険してるみたいでした」

健太郎の言葉に、全員が満足そうに頷いた。

「よーし、じゃあ今日の活動はこれでおしまい!」

陽子の掛け声で、みんなで片付けを始める。コスチュームを脱ぎ、小道具を片付け、机や椅子を元の位置に戻す。

「あ、そうだ」陽子が何かを思い出したように言った。「来週は文化祭の出し物を決めなきゃいけないんだった」

「えっ、もうそんな時期なんですか?」健太郎が驚く。

「そうなのよ」ルナが説明する。「うちの学校、文化祭が結構早いの」

「何にしようかね~」みどりが首をかしげる。

「それじゃあ、みんな考えてきてね。来週の部活で決めましょう!」

陽子の提案に全員が頷いた。

「はーい!」

「了解です」

「分かったわ」

「はい、頑張ります!」

それぞれの返事と共に、今日の漫画研究会の活動は幕を閉じた。

健太郎は帰り道、今日の出来事を思い返していた。入部した時は戸惑いばかりだったが、今では楽しさを感じられるようになっている。

(不思議な部活だけど、みんないい人たちだな...)

そう思いながら、健太郎は明日からの学校生活に、そして来週の部活に、少し期待を膨らませていた。

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「文化祭、決行‼」



「よーし、今日は文化祭の出し物を決めるぞー!」

次の週の部活動。陽子の元気な声で会議が始まった。

「みんな、アイデア持ってきた?」

「はーい!」みどりが手を挙げる。「私はコスプレカフェはどうかなって」

「おお、いいね!」陽子が目を輝かせる。

「でも、毎年どこかのクラスでやってるから、ちょっと平凡かも」ルナが冷静に指摘する。

「そっか...」みどりが少しがっかりする。

「健太郎くんは?何かアイデアある?」陽子が尋ねる。

「えっと...」健太郎が恥ずかしそうに口を開く。「漫画の世界を再現した謎解きアトラクションとか...どうでしょう?」

「おお!」陽子が驚いた表情を見せる。「それ、面白そう!」

「うんうん、いいアイデアね」ルナも珍しく同意する。

「わぁ、楽しそう!」みどりが目を輝かせる。

「じゃあ、満場一致で決定!」陽子が宣言する。「漫画世界謎解きアトラクション、略して『まん謎』でいこう!」

「まん謎...」健太郎が小声で呟く。「略し過ぎでは...」

「よーし、じゃあ早速準備に取り掛かろう!」

陽子の掛け声で、全員が動き出す。

「まずはどんな漫画の世界にするか決めないとね」ルナが言う。

「そうだね。みんなで人気の作品を出し合おう!」陽子が提案する。

こうして、部員たちは次々と好きな漫画のタイトルを挙げていった。

「『魔法少女まじか☆マキダ』!」みどりが真っ先に言う。

「『進撃の魚人』とか?」健太郎が控えめに提案する。

「『海賊王』は外せないわね」ルナが付け加える。

「『悪鬼の刃』も人気だよね」陽子も意見を出す。

話し合いの結果、最終的に4つの作品をテーマにすることに決まった。

「よし、これで舞台は決まったね」陽子が満足げに言う。「次は謎解きの内容を考えなきゃ」

「各作品の世界観に合わせた謎を作るのはどう?」ルナが提案する。

「いいね!」みどりが賛同する。「例えば『まじか☆マキダ』なら、魔法少女の契約に関する謎とか...」

「『進撃の魚人』だったら、壁の秘密を解き明かす感じかな」健太郎が続ける。

「『海賊王』は宝の在り処を探す謎解きで」ルナが付け加える。

「『悪鬼の刃』は悪鬼隊の試験みたいな感じにしよう!」陽子が興奮気味に言う。

こうして、アイデアが次々と出されていく。

「あ、そうだ」みどりが突然思いついたように言う。「来場者にはコスプレしてもらうのはどう?」

「おお!それいいね!」陽子が目を輝かせる。「謎解きしながらコスプレで楽しめるなんて最高じゃん!」

「でも、全員分の衣装を用意するのは大変そうだな...」健太郎が心配そうに言う。

「大丈夫よ」ルナが自信ありげに答える。「私たちの腕を過小評価しないで。この1ヶ月でなんとかするわ」

「そうそう!」みどりが続ける。「私たち、コスプレ衣装作りのエキスパートなんだから!」

「え?そうだったんですか?」健太郎が驚く。

「ふふふ...」陽子が不敵な笑みを浮かべる。「漫研の秘密の技術、見せてあげるよ」

こうして、『まん謎』の準備が本格的に始まった。

毎日の放課後、部員たちは熱心に作業に取り組んだ。謎解きの内容を考え、小道具を作り、衣装を縫い上げる。健太郎も、最初は戸惑いがちだったが、次第にみんなのペースに慣れていった。

「ねえねえ、健太郎くん」ある日、みどりが声をかけてきた。「この衣装、着てみてよ」

「えっ、僕が?」

健太郎が驚いた表情を見せると、ルナが冷ややかに言った。

「当然でしょ。男子の体型を確認しないと、来場者用の衣装のサイズが分からないわ」

「そ、そうですよね...」

健太郎は観念したように衣装を受け取り、更衣室に向かった。数分後、彼が戻ってくると...

「わあ!似合ってる!」みどりが目を輝かせる。

「本当に...」ルナも珍しく感心した様子。

健太郎は『進撃の魚人』の水質調査兵団の衣装を身に纏っていた。緑色のマントが彼の背中でなびいている。

「えへへ...恥ずかしいです」健太郎が赤面しながら言う。

「いやいや、カッコいいよ!」陽子が親指を立てる。「これなら来場者も喜ぶはず!」

その言葉に、健太郎は少し自信がついたような表情を見せた。

日々の準備は続く。時には意見が対立することもあったが、みんなで話し合いながら解決していった。

「やっぱり、この謎は難しすぎると思うの」みどりが首をかしげる。

「でも、簡単すぎても面白くないわよ」ルナが反論する。

「うーん、じゃあどうしよう...」陽子が悩む。

そんな時、意外にも健太郎が解決策を提案した。

「あの...難易度の異なる2種類の謎を用意するのはどうでしょうか?来場者に選んでもらえば...」

「おお!それいいね!」陽子が目を輝かせる。

「さすが健太郎くん!」みどりが喜ぶ。

「なるほど、それなら問題ないわね」ルナも納得した様子。

こうして、一つ一つ問題を解決しながら、準備は着々と進んでいった。

そして...ついに文化祭当日を迎えた。

「よーし、みんな準備はいいかな?」

陽子が元気よく声をかける。部室は『まん謎』の受付となっており、そこに4人が集まっていた。

「はい!」みどりが勢いよく返事をする。彼女は『魔法少女まじか☆マキダ』の鹿目まどかのコスプレをしていた。

「準備オッケーよ」ルナが落ち着いた様子で答える。彼女は『海賊王』のニコー・ロービンに扮していた。

「は、はい...」健太郎が少し緊張した様子で応じる。彼は『進撃の魚人』のエレンのイエガー(エレンの家がー!)のコスプレだ。

「よーし!」陽子が拳を突き上げる。彼女は『悪鬼の刃』の竈門無次郎の格好をしていた。「じゃあ、開店するよ!」

扉が開くと同時に、大勢の生徒たちが押し寄せてきた。

「わあ!すごい人だ...」健太郎が驚く。

「ふふ、うちの『まん謎』の人気がわかったでしょ?」ルナが誇らしげに言う。

「さあ、みんなで頑張ろう!」陽子が声をかける。

こうして、『まん謎』のアトラクションが始まった。来場者たちは好みのコスプレを選び、4つの世界を巡りながら謎を解いていく。

「わあ!この衣装、可愛い!」
「おお、まるで本当に水質調査兵団になった気分だ!」
「この謎、なかなか難しいね。でも面白い!」

来場者たちの楽しそうな声が、部室中に響き渡る。

健太郎は最初こそ緊張していたが、次第に慣れてきた。彼は『進撃の魚人』エリアの案内役を務めていた。

「ここでは、壁の秘密を解き明かす謎に挑戦していただきます」健太郎が説明する。「難易度は2種類ありますが、どちらにされますか?」

「うーん、難しい方で挑戦してみようかな」

「はい、わかりました。それではこちらの謎解きシートをどうぞ」

健太郎が丁寧に対応する姿を見て、陽子は満足げに頷いた。

「健太郎くん、すっかり慣れたみたいだね」

「はい」健太郎が照れくさそうに答える。「みんなが楽しそうだと、こっちも楽しくなってきて...」

その言葉に、陽子は嬉しそうに笑った。

一方、みどりは『魔法少女まじか☆マキダ』エリアで奮闘していた。

「キュゥりもんとの契約の謎を解いて、魔法少女になってください!」みどりが元気よく案内する。「でも、気をつけてくださいね。魔法少女には色々な願いが...」

ルナは『海賊王』エリアで、クールに対応していた。

「ここでは海賊王の財宝を探す謎解きよ。頭と勘を働かせて、秘宝の在り処を見つけ出してね」

陽子は『悪鬼の刃』エリアで、熱血指導していた。

「さあ、君も悪鬼隊の隊士になるんだ!この試験を乗り越えて、立派な剣士になろう!」

時間が経つにつれ、『まん謎』の評判は学校中に広まっていった。

「漫研のやつ、めっちゃ面白いらしいよ!」
「次は『まん謎』に行こうぜ!」

そんな声が、廊下で聞こえるようになった。

昼過ぎ、一時的に来場者が減った時間帯に、部員たちは休憩を取ることにした。

「ふぅ...疲れたけど楽しいね」陽子がペットボトルの水を飲みながら言う。

「うん!みんな喜んでくれてるみたい」みどりが嬉しそうに答える。

「予想以上の盛況ね」ルナも満足げだ。

「本当に...すごいですね」健太郎も感動したように言う。

「これも、みんなで頑張って準備したからだよ」陽子が誇らしげに言う。「特に健太郎くん、最初は戸惑ってたけど、今じゃ完全に漫研の一員だね!」

「えへへ...ありがとうございます」健太郎が照れながら答える。

「そうそう」みどりが続ける。「健太郎くんが来てくれて、漫研がもっと楽しくなったよ」

「私も...その通りだと思うわ」ルナも珍しく優しい口調で言った。

健太郎は、仲間たちの言葉に胸が熱くなるのを感じた。

「みんな...ありがとうございます。僕も、この部活に入ってよかったです」

陽子が健太郎の肩を叩く。「よーし、じゃあ午後も頑張ろう!」

「おー!」

全員で声を合わせ、午後の部に備えた。

文化祭が終わる頃には、『まん謎』は学校中で話題になっていた。漫画研究会の評判は一気に上がり、翌週には入部希望者が殺到した。

「わあ、すごい人数...」健太郎が驚く。

「ふふ、これで漫研の未来も安泰ね」ルナが満足げに言う。

「うん!もっともっと楽しい部活にしていこうね!」みどりが目を輝かせる。

「そうだね」陽子が頷く。「でも、どんなに部員が増えても、私たち創設メンバーの絆は特別だからね!」

健太郎は仲間たちの顔を見回し、心からの笑顔を浮かべた。

「はい!これからもよろしくお願いします!」

こうして、漫画研究会の新たな章が始まった。

 

彼らの高校生活は、まだまだ波乱と笑いに満ちた日々が続くのだった。