若年層の投票率の低下を受け、
「若者はもっと政治に関心をもつべきだ」
こんな声をよく聞きますが、なぜ投票に行く必要があるのでしょうか?
民主主義として権利はあるが、義務はない。
「一国民として投票には当然行くべきだ」というのは、
なんとも理由になっていない理由です。
ここでは、若者が投票に行くべき理由を一つ、簡潔に述べる。
“若者が得をする世の中をつくるため”
語弊がある表現かもしれませんが、「得」は「社会的利益」のことです。
さて、どういうことか説明していきましょう。
下記に示している数字は、
平成21年8月30日に行われた衆議院選挙の投票率と、
平成21年10月1日現在の年代別人口から、
実際に投票された投票数を示しています。
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年代 投票率(%) 人口(万人) 投票数(万票)
20 49.45 1441.5 712.8
30 63.87 1830.6 1169.2
40 72.63 1640.7 1191.6
【合計】20~40代 3073.6万票
50 79.69 1687.3 1344.6
60 84.15 1779.8 1497.7
70 71.06 2062.2 1465.4
【合計】50~70代以上 4307.7万票
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「若年層」といっても解釈が異なると話に一貫性がなくなるため、
事前に定義します。
定義によっては、
自分や同世代の人間の子どもが成人するまでが「青年期」であり、
現代では約40~50歳くらいと考えられています。
ここでは「若年層」のことを、20~40代の「青年期」と指します。
さあ、ここで想像してみましょう。
あなたはいま、政治家のタマゴとして選挙に出馬する人です。
政権公約を掲げるため、2つの方向性で政策を悩んでいます。
(1)子ども手当てや教育への投資、雇用対策 → 20代~40代に支持される
(2)社会保障制度や現役世代の増税 → 50~70代以上に支持される
もちろん、当選するためにはより多くの投票数が必要です。
“当選するため”には、あなたは(1)(2)どちらの政権公約を掲げますか??
合理的に行動すれば、
約1200万票も絶対数の多い(2)を選択して出馬することでしょう。
お分かりになられましたでしょうか。
これが、子ども手当てや教育への投資が先延ばしにされる一つの要因です。
青年期の人たちが社会的利益を得られない構造の一つです。
では、この問題を解消するためにはどうすればいいのでしょうか?
2つの解決策が考えられます。
1つは、青年期の人たちの投票率を上げること。
20代や30代はまだまだ伸び白があるため、
投票に行けば政権公約(2)に対抗できます。
もう一つは、青年期の人たちの投票の価値を1.5倍にすること。
これはどういうことか。
このまま投票率が上らないと仮定した場合、
政治に関心をもつ青年期の人たちの言葉は数の論理に押し潰され、
世の中に反映されないまま歳を重ねてしまいます。
そこで、投票価値を1.5倍にすることで、
3073.6万票 → 1.5倍すると → 4610.4万票
(50~70代以上 4307.7万票)
これでようやく同等の投票価値をもって、政権公約を支持することができます。
ここまでくると出馬をする人たちは青年期の人たちを無視できなくなります。
それでもなお、政権公約(2)が選挙で選ばれるのであれば、
本当に社会が求めているものなので批判するつもりは毛頭もありません。
ただ、本当に社会が求めている政策を実現させるため、
投票の価値は平等にした上で政権公約を闘わせなければ、
国民の真のニーズに応えていない政治になってしまう。
高齢者の中には、
自分たちはいいから、次世代に投資をしてほしいと願っている人もいる。
青年期の中には、
自分たちはいいから、これまで日本を支えてきた偉人たちに
充分な保障を受けて欲しいと願う人もいる。
数の論理ではなく、政策の中身で議論が行われるよう、
是非とも投票価値は等しくしてほしいものである。
投票価値を1.5倍にすることは、非現実的な対応だろう。
青年期が投票に行くほうがはるかに現実的である。
せっかく頂戴した権利である、有効に使わなければもったいない。
若者よ、投票へ行こう。
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参考資料
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投票率について:
http://d.hatena.ne.jp/tt_clown/20110415/1302862713
人口統計について:
総務省統計局統計調査部国勢統計課「国勢調査報告」「人口推計年報」
