落ちている金を拾うようなものだとまで言いましたが、その通り何とか含み損解消して気分が良いです。99.9%の自信が持てる状況というのは数年に一度ですが、今回はそれでした。また来週値下がりして含み損になる可能性は十分にありますが、長い目で見れば全然大丈夫だと断言します。
気分が良いのでお金の話をしたいと思います。
このような、年金の繰り上げ受給を勧める無責任な動画が巷には溢れています。
「ダマされるな」と言って騙すこの動画の投稿者は騙している自覚はないのかもしれませんが、たくさんの人がこれを真に受けて繰り上げしてくれれば、政府は年金支給総額を削減できて年金財政は大いに助かることになります。
身バレが怖いので詳しくは書けませんが私はかつて年金の仕事をしており、窓口業務という現場仕事から自治体への通知や霞が関とのやり取りという年金制度を周知監督する立場までかなり詳しく年金に関わったという自負があります。
まず多くの国民が誤解しているのは、制度としての公的年金の目的は支払った掛け金より多くの年金受給を勝ち取ることではなく、長生きしてしまうリスクに備えるためのものだということです。
人は自分がいつ死ぬのかを知ることはできません。20歳時点ではもちろん、60歳時点ですらほとんどの人間は自分がいつ死ぬのかを正確に推測することはできません。しかし実際には70歳で死んだり100歳で死んだりします。60歳以後100歳まで40年生きてしまうリスクに備えて40年分の生活費を蓄えておくことは無理がありますし、皆が実際にそうやって貯めこんだら経済が回らなくなります。ですので公的年金は早死にする人から長生きする人に所得を移転し、長生きするリスクを平準化するシステムなのです。
これとは逆に生命保険は早死にするリスクに備えるものなので、長生きすると損をするのですが、長生きして損をした人は生命保険を掛けたのが無駄だったとは言わないはずです。
年金は損をしない仕組みだというアピールを政府はしているわけですが、それはあくまでも年金保険料を支払う国民を納得させるためのものであって、制度としての公的年金制度の核心は、長生きしてしまう人の生活費を国家として捻出するためのものだということは間違いありません。
そのうえで、リンクを貼った無責任な動画が勧める年金の繰り上げが、総体として受給者にとってマイナスになることを証明します。
60歳時点の平均余命は男性で24年(84歳)、女性で29年(89歳)です。信じられないことに、大前提であるこの事実にこの動画は触れていません。
平均余命まで生きると仮定して計算します。65歳の本来受給で受け取る年金額を100とすると、受け取る年金総額は男性で1900(100×19年)、女性で2400(100×24年)です。一方60歳で繰り上げしたときの年金額は24%減額ですから、受け取る年金総額は男性で1824(76×24年)、女性で2204(76×29年)になります。男性で76のマイナス、女性で196のマイナスになります。繰り上げ受給したら年金財政を助けることになるのは間違いありません。
しかも年金が本来対象としている、長生きするリスクはその先にあるのです。
高齢になり稼ぐ能力を喪失し蓄えも少なくなった状態でのお金の価値はとても大きく、高齢者施設への入所を考えたときにその差は決定的なものになります。
この動画ではインフレするから繰り上げしたほうが良いと受け取れるような意味不明な内容になっていますが、もちろんインフレに強いのが年金なので、繰り上げして年金が減額されていたらインフレのダメージが大きくなるのはまともな人なら理解できると思います。
繰り上げ受給が絶対に損だというつもりはありません。例えば病気を抱えている人なんかは繰り上げも大いにありだと思いますし、夫婦であれば余命の差を利用して勤続年数次第で夫繰り上げ妻繰り下げなどもあり得ると思っています。なんにせよ自分の人生ですから自分で考えて判断できないと話になりません。
突っ込みどころ満載の動画ですが、多くの人が騙されて損をするならそれも全然かまわないと私は思っています。正義感に駆られてこの動画を許せないなどと言うつもりは毛頭ありません。アホが損をするのは世の摂理で、むしろ私はをそれをいいことに株の世界で儲けてきた訳です。
世の中は嘘で溢れています。
窓口でブチ切れた会社経営者が、「知らんかったら損するっちゅうことか!!!」と喚いていたことがありました。ええ年して何を当たり前のこと言ってんねんとはさすがに言いませんでしたが、アホはどこにでもいます。アホには気の毒ですが、知らん奴が損をするのが世の中です。それはこれからも変わることはありません。

