私は昔から色んなものだと思われた。ある国では餅つきをしている兎で、ある国では蟹、またある国では女性の横顔。

私を元に暦が作られたり、お話が作られたりした。
長い年月をかけて進化してきた人という生き物は頭を使い、技術を発達させて沢山のモノや知識を得た。

それでも人は気づかなかった、

月と呼ばれているものが私の顔だと言うことに。

『ママァ!おつきさまだよ。』
制服の子供が叫んだ。
『ほんとだね~。今日はまん丸だね。』
迎えに着た母親は満月を見ながら答えた。

『おつきさまにはうさぎさんがすんでるんだって、せんせいがいってたよ』
子供は母親と繋いでいる手をブンブン振りながらいった。
『そうなんだ!!ママ知らなかったわ。』
子供の方を見ながら母親が答えた。
『でもね~ちがうんだよ~』
子供は母親の顔を見上げながら得意気に言った。
『なにがちがうの?』
母親は不思議そうだ。

『おじいさんなの!!』
母親の知らないことを知っていることが嬉しいのか子供はご機嫌だ。

私は驚いた。

『おじいさん?』
母親にも子供が何を言い出したのかわからない。
『うん、笑ってるおじいさん』
繋いでいる手をさらにブンブン振りながら答えた。


『タロ~だ~』と言いながら、子供は向こうからきた近所の犬の方へかけていった。
母親の方は不思議そうな顔をしながら月を見上げた。


子供にはわかるものなのか―。