vs.ヴィッセル神戸―主力の離脱が最大の補強 | みつぼしをこえてーglory for the fourth star

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サンフレッチェのことをうだうだと。広島のグアルディオラ(確信)森保一と紫の戦士たちの歩みとともに。




こちらのボールの循環が思うようにいかず、相手のボール循環を自由にしてしまう、という時間が多すぎるぞという2016シーズン。手を変え品を変えながらもその課題が解決する気配がなかなかしてこない。そうこうするうちに負傷者続出、そして、オリンピック人材供与と負のループの匂いがしてきた今日この頃。正念場の神戸戦でした。


果たして、清水航平と宮原和也の軽量級ストッパーが攻守に躍動し、今季長らく悩まされてきた遅攻とブロック守備両方でのギャップが嘘のようになくなった”強い頃のサッカー”に生まれ変わりました。ちょうど、青山の離脱が5‐3‐2でのイケイケサッカーを後押しして浦和を退けたような、劇的な変化でした。


何度目かもう数えきれないけど森保さんちょっとピンチに強すぎる…w





◆試合内容







塩谷離脱に対する回答はストッパー清水航平。ナビスコ準決勝の死闘が懐かしい采配となった。そのころのタイマン抗争相手のレアンドロと再び対決するというのもまた運命のいたずらか。また、浅野の代わりは宮吉。シャドウとしてのポジショニングの感性は浅野以上なのであとはコンビネーションの問題である。


神戸はノエスタでの試合で猛威を振るった田中英雄先生が怪我とのこと。代わりは夏補強即登場のニウトン。大物選手感が何となく漂っているが広島では本領とは行ってなさそうだったのが助かった。また、五輪戦士岩波の代わりには北本が入っている。


試合は4-5-1で定石通りのブロックを組む神戸に対して広島がボール保持する展開。ただ、いつもと違ったのがストッパーの対面の相手をはがす能力と意欲が格段に高かったことだ。特に、左の清水航平は、時には自ら鋭いクサビを入れ、時にはマークを引き付け中央の森崎和幸の花道を用意したりと的確すぎるサポートが光り、神戸の守備ブロックから前線5人を解放していた。解放された状態であればウタカはなんでもできるぞ!と神戸ゴールに迫っていく。

また、前線にボールを渡した後も、カウンターで前残りするSHに先んじてボールを触れる位置をキープしており、連続的な攻撃を可能にしていた。はたから見て余裕のなさそうな状態でも簡単そうに横にはたいてプレスを回避するなど、ベテランの司令塔かよ状態の清水航平さんであった。凄すぎる。



とはいえ、広島はボールとスペースの支配力に見合ったチャンスを作れていたわけではなかった。クサビは入るものの、そのあとの展開で丸谷が精度を欠いていたり、精度を求めるとタッチが多くなってしまって神戸の守備が整ってしまっていたりとうまくいかない。ウイングからこじ開けるお家芸は、橋本和のタイマン守備力とその展開は読んでいるよという徹底したツーマンセル、だけどそこをこじ開ける力があるミキッチとカシッチは凄いね、というところでもターゲットはウタカしかおりませんといういつもの流れになりつつあった。



しかし、カウンターを許さないコンパクトネスを維持できていたことといつもよりストッパーの縦パスが巧いことが停滞感を払しょくしていた。いつもは見られないフェイントからのパスというのが数多く見られており、余裕をもって試合を展開していることを感じさせた。スコアレスではあったけど、多分みんな楽しかったんじゃないかな


神戸は序盤はレアンドロにフィードを当てて軽量級DFラインを脅かそうとしていたものの、その後はほとんど蹴ってくることはなかった。ゴールキックもほぼすべてCBに預けてショートパスで崩しに行っており、宮吉と柴崎の察知力と丸谷の活発なプレスの上下動の活きた守備をみせていた。


すると前半AT、清水航平の鋭いクサビを北本とウタカが競り、そばの柴崎への落としを読んだ北本の動きをウタカが見事に駆け引きで上回って一人抜け出すと、カバーの伊野波、橋本をかわしてGKキムスンギュの逆を突く豪快なシュートで最高の形で前半を締めくくる。



後半、前からくる神戸に対して知ってたと清水航平の絶妙なフィードからチャンスを作ったものの、主導権を握るには至らず。神戸にボールを保持されると、後半開始から投入された松村がサイドからトップ下へと移動する動き出しによって中盤での数的不利状態に苦しむことになる。5‐4‐1崩しの定石である。


我慢の時間帯となった広島だが、球際での受け渡しと思い切りに支えられなんとか決定機を阻止していく。コーナーキックだけはニウトンにことごとくマークを外されどうしようもなかったものの失点に至らないラッキーに助けられつつ、位置は低いながらも積極的なプレスからのいい守備を継続していた。しかし落としを前に出してチームを加速できないマルちゃんであった。


やっと訪れたマイボールでカウンターを受けてしまうと、数的不利からペドロ→レアンドロとはずされ万事休す…と思いきやレアンドロのシュートはポストに当たり事なきを得る。この隙に早いリスタートで神戸のスタートポジションへの戻りの遅れを突いたウタカを見逃さなかったのは、この日再三速い展開を失敗し続けた丸谷。失敗にめげることなくチャレンジし続けたロングボールは抜け出たウタカにぴったり収まり、宮吉の貴重な追加点を演出した。マルちゃんよくやったマルちゃん。



決定機逸の直後の2失点目で折れかけた神戸も、ネルシーニョの活が入り攻勢を継続。レアンドロを下げて石津を投入し、ペドロと渡邉千真の流動的な2トップとなると、広島のサイドのスペースがかなり焦げ臭くなる。そしてダメ押しにロングスローで軽量級イレブンに圧力を加える藤田投入。


森保監督も負けずに対抗。中央の守備が怪しくなるとカズ→青山で整理を図る。なお、あおちゃんがハリキリすぎて中央はかなりカオスになった模様w まあでも、セカンドボールで絶対に競りに行ってくれるし、奪った時の推進力(自ら上がったりダイレクトでパスにしたり)は流石であり、終盤の攻勢につなげることができたので狙い通りか。


セットプレーも皆川で対策し危なげなく、宮吉に代わって入った茶島も負けじと献身性とカウンターで存在感を見せていた。広島は主力離脱をチャンスに躍動する頼もしき二番手たちによって、ついに理想としていた「0-0の時間が長いほど有利」なサッカーを実現し新たな門出を飾った。








◆トピックス―”司令塔”清水航平の面目躍如



攻守の一体感、チャレンジ精神、その大きな要因となったのは、バックラインのパスワークが作る時間的・空間的な余裕とクサビのパスと横パスの使い分けによるペースメイクであり、その立役者となったのが清水航平でした。


元々は森崎和幸と千葉和彦によって行われていた役割で、塩谷は縦の展開に特化した選手、左ストッパーはメンバーが安定せずビルドアップが計算できない、というところから、前線からのプレスで千葉カズコンビが急襲されるとどうしようもなくなってしまっていたところが、今季の不安定性の一つの要因であったと思われます。


それを縦も横もいける清水航平が千葉カズを相手FWの守備から解放して敵陣への侵入を可能にさせ、宮原和也も持ち前の思い切りを出して好パスを連発していました。さらには、自らFWの守備範囲外から持ち込みドンピシャの楔を入れることもできるので、神戸の2列目は清水航平に引き付けられることになります。つまり、いつもはガチガチにガードされているウタカやシャドウの二人へのパスコースが空きやすくなっていました。


また、ボールを運んだあとのセカンド争いとブロック守備での2列目がプレスに出た後の前面へのカバーの確実性といった守備での活躍ももちろん見事であり、後半崩れそうだった広島の守備を辛うじて支えていました。



彼がまさに万能の司令塔であったことが、今回の快勝劇を生んだといえるでしょう。ウイングを本職としながら今季のどのストッパーよりもレベルの高いプレーをやってのけた清水航平さんの戦術理解力と不断の努力に敬意を表しますし、古株の選手の一人として、ぜひとも若い選手たちが手本としてほしい選手になりました。5年位前に清水エスパルスに移籍するだのなんだのいってたのが嘘みたいだ…w 2012年のラッキーボーイぶりも感動しましたが、いぶし銀の万能戦士となった今年の充実ぶりを見ると改めて移籍しなくて良かったですし、広島に残り続けることが正解だと示し続けてくれていることがうれしくて仕方がありません。





◆未来へ



攻守ともに会心の内容で終えることができ、これを続けられるかどうかで今季の結果が決まりそうになっています。ただ、この試合もかなり薄氷の勝利であり、大きく2つの課題が残っています。

一つ目。ボールを持つ時間を長くすることによって実現できた攻守一体感が試合展開の安定の大きな要因となりましたが、その優れたビルドアップによってウイングの仕掛けやシャドウへの落としまでは容易に行けたものの、フィニッシュの一つ手前での崩しがやはりウタカのスペシャリティ以外に全く決定打がありませんでした。ま、ウタカのミラクルが出たのは縦パスの精度とスピードがばっちりだったからだし、宮原と清水が走って走りぬくカウンターは大きな収穫ではあります。

もう一つ。ボールを持たれ、SBやボランチを押し上げられサイド深くまで運ばれてしまう場面やセットプレーが増えてしまう場合には結構な割合で競り負けシュートを打たれてしまっていました。特にCKは心臓が何度も止まりかけたのですが、サイズの仕様上覚悟しないといけない場面でしょうか…クロスに関してはタクトさんが、ロングボールに対しては千葉ちゃんがイニシアチブをとれており、脅威はほとんどなかったあたりは流石でしたが。


より決定力や試合ののらりくらりに長じているガンバを相手に、この軽量級サッカーでどこまでやれるのか。正直言うと怖いのですが、ボールを動かして対抗できれば面白い試合になるんじゃないでしょうか。




では。