本日、シリコンバレーのバイオベンチャー2社を見学させてもらった。
Twitterでダメもとで(見学させてくださいと)連絡を取り、
快諾してくださったAさんの会社をまず見学させてもらった。
もともとは違うバイオベンチャーが入っていたという平屋のなかに、
研究室とCEOといったお偉いさんの部屋が廊下を隔てて並んでいた。

どうやらこちらではベンチャーは自社ビルを作るのではなく、
その規模・従業員の数に合わせてオフィスの大きさを
やどかりのように変えていくらしい。
なので、この建物は昔○○が使っていた、ということがよくあるようだ。

その後Aさんの紹介で女性研究者Bさんの勤める会社を見学させてもらった。
小柄だがとてもパワフルな方で、シリコンバレーでの生活が似合うなと感じた。
こちらのベンチャーも同じく平屋で広い実験室と同フロアにCEOの部屋、ボードルームがあった。

AさんBさんの会社とも研究者の6-7割が中国人という構成。
世界の中国シリコンバレーにもあり。か。


さて、以下に2社のバイオベンチャーを見学し、思ったことを書いていく。


◎「シリコンバレーのバイオベンチャーは決して煌びやかで豪華な会社ではない」

私はシリコンバレーのバイオベンチャーに対して
とても煌びやかなイメージを持っていたが、
実際は大学の研究室と似た感じだった。
そして、煌びやかなイメージとは相反し、
バイオベンチャーの実際は日本と同じく厳しいものだった。

IPOをしても、一時的に手元に資金は集まるものの
一攫千金というわけにはいかず、
さらにはIPO後株価が下がっていくことも珍しくない。

そして、バイオベンチャーの場合、
臨床試験に入り、多額の資金が必要になると
その資金を賄うために基礎研究への投資を減らし、
基礎研究者のレイオフが行われてしまう。
とても厳しい世界なのである。


◎「国内の研究解析関連雇用が中国・インドに奪われる」

近年は、化合物の合成や動物実験までアウトソースしているとのことだがら驚きだ。
中国やインドのCRO会社に委託をしているらしい。
上海には、元シリコンバレーで働いた研究者が帰国して作ったCROが存在し、成長著しいらしい。
Aさんは、これにより、直近ではアメリカ国内の合成系・解析系の雇用が少なくなり、
いずれは、国内が解析手法を知らない人間ばかりになってしまうことを危惧していた。

私はこの話を聞き、いずれ、実験のストラテジーを考える
知的ワークも中国やインドに拠点が移ってしまうのではないかと思った。
現在は、労働集約型の解析が主流かもしれないが、
研究の上流を行うインフラが整うのも時間の問題だろう。
その時、欧米や日本の製薬会社はどうなるのだろうか?
日本の研究者の雇用はどうなるのだろうか?

シリコンバレーバイオベンチャーで起きている問題は
日本の大手製薬でも他人ごとではないと思う。
製薬会社だけでなく、我々はこの先いつ自分の仕事がなくなるのか
分からない世界に住んでいる。
私の今の仕事はいずれ中国、インド人の安い労働力によって
とって代わられてしまうのではないか?
(そもそも会社は生き残れるのだろうか?)



◎「ベンチャーにはプロの経営者が必要」

Aさんの会社のCEOは所謂プロの経営者だった。
会社員を経てハーバードMBA、その後いくつかの会社をIPOさせてきた凄腕の経営者。
実際に8年でAさんの勤める会社をIPOにまでもっていった。

日本ではよく、大学教授がベンチャーの社長を兼任している例がある。
そんな片手間で良い経営などできない。
日本でも、優秀な経営者が早期から大学発ベンチャーに入り
経営を行っていく必要があるのではないか?


◎「意思決定の速さは良くも悪くもある」

ベンチャーと大手の大きな違いは意思決定のスピード。
ベンチャーは、ゴーサインも早ければ、ストップサインも早い。
これは、そのPJTが先に進まないと見切ったらすぐにやめることも意味する。
効率的だが、探究心・達成欲の強い研究者にとっては辛いかもしれない。


◎「ポジティブシンキングでいこう」

AさんもBさんも、実は最初のバイオベンチャーでレイオフをされている。
そんな厳しい環境を乗り越えたからか、
「2年先にこの会社が存在しているか分からない」
と言いながらも、現在のお仕事をとても楽しんでいらっしゃった。

いつレイオフされるか分からないのは今後の日本でも同じこと。
そんな状況でも、自分の強みを明確に意識し、
アンテナを高く張りながらも目の前の仕事を楽しみ、精一杯取り組む。
こういう姿勢が今後とても大切になっていくと改めて思った。
Aさんが言っていた「どうにかなる」という言葉。
どうにかなると信じ、困難を乗り越えてキャリアを歩んできたAさんBさんにお会いして、
私もポジティプシンキングを今後とも貫こうと決意した。
なにがあってもきっと「どうにかなる」。
修士論文中間審査会が終わった。


中間発表に向けての準備で一番苦労したことが、
「人へ臨床応用するときのストラテジー」
を考えることだった。

自分は、ある生命現象に興味を持ち、
それを解明することに喜びを感じている。

新しい発見をすることが楽しいのである。


もちろん、
「人への臨床応用を念頭において」研究することは
非常に重要なことであると思う。
臨床へのストラテジーがないと、
せっかく生まれた有益なシーズも
医薬品等の形として世に出ることがないまま終わってしまう
可能性があるからである。


国からグラントをもらうにしても
いかに人の健康に役立つか、ということを強調しないと審査は通らない。


しかし、私は、すべての研究者が、
「臨床応用を念頭において」研究すべきとは思わない。


ある生命現象に心から興味を持ち、
「この生命現象を解明するんだ」と
情熱を持って実験に没頭することがとても大切だと思っている。

結果的に人に役立つシーズが見つかりました、
でいいと思う。


というのも、
最近読んだダニエルピンク氏の本から、
内から湧き上がるモチベーション3.0は
研究者においてもとても大事だと思ったからである。
モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか/ダニエル・ピンク

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現在、
アカデミックにおいては、
グラントをとらないといけない⇒人に役立つ研究をしないといけない
となってきていて、
製薬会社においては、
売上を伸ばさないといけない⇒新薬を開発しないといけない
となっている。


なんだかいつの間にか、
○○しなければならない、となっていやしないか?

研究室全体のことを考えたり、
全社的戦略を考える立場の人は、当然上記のことを
日々考えるべきであるが、
果たして実際に研究に従事している研究者にまで、
その圧力をかけるべきなのか、
答えはノーであると思う。


ダニエルピンク氏がその著書で、
報酬や罰によりモチベーションをあがようとすると、
かえって効率が落ちると述べている。


研究者が、「○○しなければならない」
と、一瞬でも思わないような環境整備が必要ではないのか。




ビジネスに興味があり、
かつサイエンスのバックグラウンドを持つ人たちの
プラットフォームみたいなのは作れないだろうか?

例えば、
元製薬会社のマーケターとか、
博士号持った戦略コンサルとか。

研究者は彼ら自身の実験に没頭し、
科学に精通したビジネスパーソンがそのシーズを
製品として世に出す。
このサイクルがうまく回るにはどうしたらいいだろう。

ちらほらとまわりでもiPadを持っている人が増えてきた。

欲しい!

が、しかし、金がないので、しばらくお金貯めてからにする。



で、iPadが浸透したら世の中どうなるか、ということを、

基礎医学を専攻する理系学生らしく製薬業界に及ぼす影響として考えて見る。


一つの影響として、MRは必要なくなる、ということが考えられる。

これは電子カルテシステムの浸透が前提であるが。


というのも、

医師はiPadの電子カルテを見ながら患者の診察を進めていく。

iPadには患者の過去カルテ、MRI・レントゲン写真、投薬状況、

その他様々な情報が入っている。

そして、今回の診察結果を入力し、症状からある疾病と推測する。


そこで、iPad画面上に症状に最も適した医療用医薬品が

紹介される。しかも、詳細な情報つきで。

医師は自分から最新医薬品をチェックする必要は無い。

iPadを通して製薬会社から自動的に情報が配信されるのである。


そうなると、もはやMRの役割とはどうなるのだろうか?

これまでMRは医師のいる病院へ行き、自社製品を説明し、

医師のご機嫌をとって購入してもらう、という役目を担っていた。

つまり、「自社医薬品の説明」が業務である。


彼らの主業務である「情報提供」はまさしくiPadが得意とすることである。


製薬会社の観点から考えると、

i疾病や症状の検索ワードと自社の製品を連結させ、

インターネットを通して医師のiPad上に自社製品の詳細説明(広告)を配信する。

MRが必要なくなるため、人件費の大幅なCutが見込まれる。

MRは他の部署に移るか転職して新しいキャリアを歩むことになるだろう。

医薬品関連情報を扱うインターネットメディアへの就職口はありそうである。


知り合いの医師によると、

新しい医薬品の購入先を選ぶとき、いくつかの選択肢があるときは

MRの人間性で選んでいたと言う。

つまり、似たり寄ったりの製品ならいい子の方を買うのである。

医師はiPadから情報を入手することにより、先入観を取り除いて、

製品を比べるようになるだろう。

これは患者にとってもよい結果をもたらすかもしれない。


*注意:あくまで個人的見解です。