夜だった。

私は電車に乗っている。

比較的すいた電車で座っている。

その電車は田舎を走っている。さらに田舎へいく電車。

私鉄というよりJR、でも国鉄と言いたい雰囲気。

どこか、昔に行こうとしているんだ。

どこか、違うところに、行こうとしている。

お年寄りがいて、海があるところ。

子供のころ、おばあちゃんの家に行くようなイメージ。


電車の中はとても静か。みんな眠っていたり、うつむいていたり。

とても疲れている。


電車の窓はずっと暗い。ときどき、田んぼの中を車が通る。

車のライトは一本まっすぐの道を照らしている。


電車は駅についた。私は、階段を降りていく。

そこで、私を待ってくれている人がいる。


「ようこそ」と笑顔で迎えてくれる。

私はその人の家に行く。

古い民家、大きな家。蔵があるような家。

家の明かりはオレンジ。オレンジ色の家の中に、

人がいる。

私は安心している。とても深い安堵。

その家の人が、近所の浜辺を歩こうという。

静かな波と松林の浜辺を歩く。

その人と何か話しをする。

空は群青色。


翌日、よく晴れた日。

家の人の友達のお寺に行く。

お寺の人はお坊さんの格好をしていて、ほうきで掃いている。

お寺はとてもきれい。木造の廊下を歩いていると、

木の匂いがとても気持ちがいい。

お寺の石垣、木の匂い。なんだか懐かしい。


この町についてから、どこへいっても懐かしい。

ほっとしている。帰ってこれて、ほっとしている。

はじめてきたのに、何度も来ているところのようで。

ここは、私が帰ってくるところ。


実在しなくても私の心の中にある。

イメージ。

夜をいく電車。田舎に向かっている。そこにはお年寄りと海がある。

温かい家と人がいる。松林と浜辺がある。

友達の家はお寺。

この町に、私は帰る。電車にのって、帰る。