2/27に開催された市民向け成年後見制度研修で寄せられた質疑応答について、ご紹介します。
※口頭で回答されたのをメモして文字に起こしたので、不完全な部分もあるかもしれません。
 もし問題がある場合は連絡をください。

質問1)
認知症の方本人が使うお小遣いの帳簿をつける必要はありますか?


弁護士の回答)
あればベターです。本人は判断能力が低下したために後見人がついている。
金額が多くなければ不要ではないでしょうか。

筆者追記)

ご本人に判断能力がある場合は、社会福祉協議会の「日常生活自立支援事業」の金銭管理サービスを利用することもできます。

当面の生活費を、生活支援員さんが金融機関からおろして持ってきてくれます。


質問2)
障害のある兄弟がグループホームに入所することになりました。
そこで言われたのが今後相続でもめないように後見人をつけることを提案されました。障害者は相続できない、とも言われました。
家族信託などの方法もあると思うのですが、メリット・デメリットを知りたいです。その兄弟は今後生活保護の申請をすることになっています。


弁護士の回答)
障害者が相続できないということはありません。

障害の程度にもよるが、ご自分で手続きができないのであれば専門家に頼むこともあるでしょう。

相続でもめないために後見人を付けるということは私は違うと思う。

今後財産管理や契約などが必要であれば後見人を付けることを検討していただきたい。
家族信託は、文字通り信じて託す仕組みなので、信じて託す人がいるかどうかがポイントになる。
手続きをしてくれる人がいれば安心という考えもある。本人の代わりに動く人、信頼できる人がいるかどうか。
法定後見のデメリットは講義でも説明したが、後見人を選べない、報酬がかかるなど。

任意後見のメリットは契約内容や報酬を自分で決めれるところ。

家族信託は自由にアレンジできるところがメリット。

質問3)
独居の本人に親族がいる場合、その親族に先んじて(親族の了解を得ずに)「任意後見受任者」が死亡届の提出をすることは可能か?


弁護士の回答)
親族と連絡を取りながら手続きをするのが良かろうと思う。

任意後見受任者にも死亡届を出す権利はあります。

質問4)
施設に入所していたり病院に入院したりした場合、本人の状況は後見人経由でしか家族に伝わらないのでしょうか?


弁護士の回答)
伝わります。施設入所するときは、キーパーソンを登録するので、後見人以外にも親族も登録している。親族のほうがメインではないか。
 

筆者追記)
親族間に対立がある場合、後見人がご本人を施設に入れて居場所を親族に連絡しないという話は時々聞きますので、親族に連絡が来ないという場合もあると思います。
 

質問5)
必要な手続き、それにかかる時間や費用について知りたいです。


弁護士の回答)
手続きと費用は講義で説明した通り。

時間は、私の実際の例では、昨年12月頭に相談を受けて、1月初旬に申立てをして1月中旬に審判が出たことがあった。
診断書などの必要な書類が揃っているかにもよる。書類に不備があれば遅くなるし、家庭裁判所の混み具合にもよるが、整っていれば1ヶ月ぐらいで審判は出るだろう。

質問6)
現在、重度精神障害者=長男の面倒を高齢の母親がみています。子供は他に長女と次男がいますが、後見人を準備したほうがいいのか、どのようにたてればいいのか悩みます。


弁護士の回答)
お父様は"以前死亡"なのでしょうか、そう仮定します。
今から後見人を立てても良い。その時は申立人を誰にするか、後見人を誰にするか決めておく。財産があったり、親族間で紛争のある/なしでも変わってくる。

例えば長女さんが後見人になるなら、そのことを他の家族が同意すれば、最終的には家庭裁判所が決めるが、長女さんがなれるかもしれない。
今後見人を立てないのであれば、例えば母親死亡後に後見人を立てると利益相反で長女さんは絶対後見人になれないので、タイミングは注意する必要がある。

質問7)
成年後見人以外の後見人制度は日本にはありますか?


弁護士の回答)
任意後見制度があります。

筆者追記)
法定後見は、家庭裁判所が後見人をつける法定代理人の制度ですが、
本人が委任する制度も含めるなら、任意後見制度民事信託(家族信託)、財産管理委任契約なども、本人の代理として手続きをしてくれる仕組みです。
 

質問8)
弁護士などではなく、NPOなどと契約をして後見人についてもらうことは可能ですか?


弁護士の回答)
大丈夫です。契約というのは任意後見契約のことだと思われる。

法人なども後見人になれます。

筆者追記)
法定後見の場合、NPOなどの法人が後見人になるためには、家庭裁判所に認めてもらう必要があります。
川崎市で法人後見をやっているのは、川崎市あんしんセンター(川崎市社協)、神奈川県社会福祉士会、コスモス成年後見サポートセンター、などがあります。
任意後見の場合は、本人との任意後見契約を公正証書で結べば、誰でもなることができます。(ただし契約が発効するのは、本人の判断能力が低下してから)

質問9)
親の片方が亡くなった時点で、障害をもつ子供には成年後見人をつけなければならないのですか?


弁護士の回答)
つけなければいけないことはないが、さらに将来残った親も亡くなり子供一人になったときに、相続手続きをしてくれる人は必要になるだろう。例えば、おばさんに頼むとか。事案にもよる。
 

筆者追記)
親は亡くなる前に遺言を残すと良いです。

金融機関は亡くなったことを知ると口座を凍結しますが、解除するために、多くの金融機関は、遺産分割協議書または遺言書の提出を求めてきます。

※葬儀のためなら最大150万円まで下すことは可能になりましたが、口座は凍結されたまま。
相続人に知的障害/精神障害などで判断能力が低下している方がいる場合、その方は遺産分割協議はできない(実印を押印することはできない)と考えられるため、遺言書がないと、成年後見制度を利用して代理人を立てる必要があります。
もし遺言書を残していれば、内容が変でなければ、亡くなった方の遺志を尊重して遺言通りに遺産分割をするため、成年後見制度を使わなくて済みます。

質問10)
横浜市の市民後見人は報酬付与申立てができますが、川崎市の市民後見人はボランティアなので報酬付与申立ては絶対禁止になっています。川崎市が後見人に与えられた権利を制限していることは法律的に問題はないのでしょうか?


弁護士の回答)
川崎市の場合は、報酬付与申立てをしないことに了承した人が市民後見人になっているので、問題はないと考える。

質問11)
本人は合理的な判断ができないことを理由に、ご本人に会いにこない、本人の意思を確認しない(民法第858条に従わない)専門職後見人が多いと聞きました。昨年「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」が策定されましたが、今後は改善されるのでしょうか?


弁護士の回答)
よく言われる質問です。私が10人担当しており月2回訪問するとすれば、月20日間も取られてしまうので、月に何度も訪問できる市民後見人や親族後見人が対応できる体制を整えるべきだと思う。弁護士にもプライベートはあり、正月は妻の実家に帰省することもある。2件同時に施設から電話がかかってきてどうしても対応できない場合もある。一人で担当するのではなく、複数で担当するべきとは思う。
後見制度支援信託の話をしたが、最近利用数が増えてきており、親族後見人が増えてきていると感じている。親族後見人なら本人に会いに行く回数も増えるだろう。

筆者追記)
本人に会って意思を確認してほしい案件なら、市民後見人や親族が後見人をすれば良い、という考えなのかな、と思いました。

この弁護士は、「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」が策定されたことを知らないのでは、と思いました。

またこの弁護士は、時間のかかる意思決定支援をするつもりはないんだ・・・、と感じました。
 

質問12)
成年後見開始後、ある程度まとまった金額の支出が見込まれる(施設入所など)選択を考える場合、もし家族の中で支出に対して反対の意向があり家族の総意が得られないなら、成年後見人は拠出を認めないのでしょうか?被後見人の意向がわからず、お金に関わる内容次第では、家族間の調整役も果たすのでしょうか?


弁護士の回答)
家族の総意になっていればベターです。総意が得られないなら、後見人は本人のためを考えて行動するため、多少文句を言われようが、家裁の了解も取るが、了解してもらうよう調整する。本人保護する観点で行動します。

質問13)
事故による高度障害や疾病による意識障害も対象となるのか?


弁護士の回答)
可能です。講義の中で高次脳機能障害の例も説明した。

判断能力が低下している診断書を書いてもらえば通りやすいのではないか。
保険会社の手続きで、本人が脳に損傷を受けて、示談書の有効性に問題がある場合に、後見人を付ける場合もあります。

質問14)
後見制度にかかる費用を抑える方法は?


弁護士の回答)
講義で説明した通り、生活保護や生活保護レベルの条件であれば、後見報酬や鑑定費用を川崎市が出してくれる制度もある。
「成年後見制度利用支援事業 川崎市」で検索してみてください。
また、任意後見では報酬含めて契約で合意するので、法定後見より報酬を抑えることは可能です。

 

質問15)
子供(未成年)が知的障害なのだが、後見制度を利用するタイミングはいつが良いか?


弁護士の回答)
夫死亡というトラブル後に利用を始めると、遺産分けの関係で後見人は第三者になりやすいので注意。
亡くなる前であれば、遺言を書いておくと良い。原則その通りに分けることになる。

質問16)
障害のある娘に母親である私が後見の申立てをしたとして、後見人が気に入らないからといって即時抗告することはできますか?できるとしたらその方法は?


弁護士の回答)
即時抗告は、後見開始とか開始することに対してのみ可能であって、後見人が気にいらないという理由では利用できない。
もしやるとしたら、後見人が付いた後に任務懈怠(けだい)などの理由で解任請求の申立てができる。
「家庭裁判所における成年後見・財産管理の実務」という本に詳しく載っていますので、よかったら読んでみてください。

筆者追記)
この本は、弁護士・司法書士などの専門家向けだと思われるので、素人に勧めるのはちょっと違うのでは?、と思います。

質問17)
親族が身上監護して、専門家が財産管理をする複数後見の説明があったが、最近は複数後見は多いのでしょうか?


弁護士の回答)
多いと思う。私も担当している14件中2件は親族と分掌している。おそらく家庭裁判所も身上監護は親族にやらせてあげたいと思っているのではないか。

質問18)
本人は住んでいるところがゴミ屋敷のようになっていて近所から苦情がきているが、本人はそこに住み続けたいと主張している。後見人や周りは施設に入ってもらいたいと考えているがどうすればよいか?


弁護士の回答)
なんとか本人を説得する。周りの人たちと協力しながら。もちろん本人の権利も配慮しながら、になるが。

質問19)
後見制度支援信託について、専門職後見人が手続きをしたら、親族に引き継ぐするという説明があったが、親族から専門職に対して辞任してほしいと言うのか?その手続きを具体的に教えてほしい。


弁護士の回答)
元々家庭裁判所から、「これは後見信託に適した事案です。後見信託の手続きをしたら、辞任して、親族に後見人を引き継いでください」という指示がある。例えば収入が年金だけなら2ヶ月あれば収支予定を作ることはできるので、分析をして、家裁に結果報告する時に一緒に辞任申立てもする。

質問20)
後見人報酬は財産管理額に応じて家庭裁判所が決めるとあったが、不動産があったら管理額は多くなり報酬は高くなるのか?


弁護士の回答)
管理金額は、流動資産だけです。流動資産とは、動かせるお金、預金などだけです。
また保険請求などで報酬が追加される場合もあります。