認知症や知的障害などで、物事を理解し判断能力が不十分な人を支援する成年後見制度、今年成立した利用促進法の中でも「市民後見人」を育成することが必要だとなっています。

どんな場合、市民後見人がつくのでしょうか?

法定後見の場合、後見人になる人は、裁判所が選任します。

一般的に、候補者になる親族がいる人は、親族が成年後見人に選ばれます。
ただし、候補者が本人より年齢が上だと、成年後見人になれないことがあります。
また、候補者の親族が遠方に住んでいると十分な身上監護ができないとみなされ、親族がなれないことがあります。
親族同士争いがある人は、親族は選ばれず、第三者である弁護士などの専門職がなります。
遺産相続がある人は、利益相反になるため相続人になる親族は選ばれません。
相続に伴う不動産の登記があると、司法書士がなることがあります。
預貯金など金銭の財産がたくさんある人は、専門職がなるか、後見制度支援信託を利用した後、親族が成年後見人になります。
知的障害者等の場合は、親族または社会福祉士や精神保健福祉士などがなった方が身上保護になるのでいいでしょう。
信頼できる士業の知り合いがいる人は、その人に頼むかもしれません。

市民後見人は、上記条件以外、すなわち、
身寄りのない(親族がいない、または離れて暮らしている)、
低所得の高齢者で、
日常的な生活支援が中心で、
特別な専門性が必要ない事案
になるかと思います。

先日私が勉強会に参加した町田市では、昭和30年から昭和40年代に建設された団地に入居した人達が高齢者になり、独り暮らしになり、自分が元気なうちは困っている人を助けよう、自分が困った時は助けてもらおうという、共助の精神から、市民後見人に立候補する人が多いと聞きます。

社会貢献の意識の高い一般の市民が、ボランティア的な活動で、後見活動しようという動きです。
市民後見人は、地域に根付いたサポートができるところが強みになるのでしょう。

最近は、成年後見人の横領事件が時々ニュースになります。
弁護士や司法書士による横領事件がよくニュースになりますが、実際は件数で見れば、横領事件の9割は親族後見人によるものです。
(専門職後見人は事件になる前に辞任している場合が多いと言う人もいます。事実、最近急激に成年後見人の辞任・解任件数が増えています。解任されると二度と後見人になれませんが、辞任すればまたなれます)

市民後見人にも高い倫理観が必要ですが、裁判所が選んでも大丈夫だろうと思われなくてはいけません。
裁判所から信頼されるためには、市町村が実施している成年後見人の研修を修了していることはもちろん必要ですが、さらに市民後見人団体が定期的に不正がないかチェックして、安心を担保することが必要かもしれません。
(例えば、司法書士が所属しているリーガルサポートでは、半年に1度、預貯金の通帳や後見業務のチェックをしているそうです)

また、市民後見人団体の中には、任意後見だけしかやっていない、任意後見人の指名を目指す団体もあります。

成年後見人を裁判所が選任する法定後見と違い、任意後見は本人が成年後見人を選びます。
「遠くの親戚より近くの他人」と言いますが、高齢者の中には近所に住んでいる信頼できる人を後見人に指名することがあるのでしょう。

日本では、終戦後生まれた第1次ベビーブーム世代が65歳以上の高齢者になり、高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)は26.7%で、4人に1人は高齢者という「超高齢社会」になっています。
今度ますます高齢者の割合が増えていくと言われています。

市民後見人になりたい、または市民後見人をつけたいという人が、ますます増えていくと思います。