成年後見制度利用推進法とほぼ同じ時期に可決・成立された、民法と家事事件手続法の改正は、今年10月13日から施行されます。

その内容を紹介します。
要旨はこんな感じ。

1 本人宛の郵便物を、家裁が認めた場合、最大6ヶ月、成年後見人に転送して、見ることができる。

2 成年被後見人が死亡した時、相続人が相続財産を管理するまでの間に、相続人の意思に反しない場合は、次の行為をすることができる。
(1)相続財産の特定の財産の保存に必要な行為
(2)相続財産の債務の弁済
(3)死体の火葬または埋葬に関する契約の締結、その他相続財産の保存に必要な行為
ただし(3)は家庭裁判所の許可が必要

となっています。

郵便物の転送については、今まで通信の秘密を侵しているおそれがあるという考えもあり、グレーでしたが、この法律で正式に認められました。
※この法律自体が憲法違反ではないかと思いますが、裁判所が判断していないので、今のところOKです。

また保佐人、補助人については規定されていないので、今後も転送不可です。

では、具体的にどのように転送するのでしょうか?

郵便局で転送の手続きする場合、転送先の住所だけを申請します。
このサービスは転居した場合を想定しており、転送先に本人が住んでいる前提になってます。
郵便局は転送先に本人が住んでいるか現地確認する場合があります。
しかも、転送先は成年後見人の家(表札には本人とは違う名前が書いてある)ので、宛先不明で戻ってしまう場合があります。
なので、郵便局の仕組みは使えないことになります。

なので、一般的に成年後見人は、差出人に転送届を出すことをしています。
この転送届なら、本人宛の郵便物を違う人に送ることが可能です。

後見事務に必要な郵便物には、役所の介護保険課、後期高齢者医療課などから来る還付金の通知などが考えられます。

#うちの母親の成年後見人は、老人ホームから来る請求書や領収書は転送届を出していません。母の利用料は口座自動引き落としだからかな。

死後事務については、どうでしょう?

後見人等の仕事は本人を代理することなので、本来は、本人が亡くなったら、相続人に財産を引き継いで、仕事は終わりです。

じゃあ遺体の引き取りやその後の火葬、葬儀、埋葬は誰がやるの?という問題があります。
葬儀は宗派の問題もあるので、自分勝手にはできません。

本人に親族がいればいいのですが、いない場合、探す必要があります。
すぐ見つかればいいですが、いない場合、遺体の引き取り、火葬、埋葬までを、今までは後見人等が善意でやっていました。

しかし今後は、家庭裁判所の許可があれば、火葬と埋葬を成年後見人がやっていい事になり、その費用を本人の財産から使ったり、報酬を請求していいことになります。

注意)火葬と埋葬だけで、葬儀は含まれません。
遺体の引き取りは火葬するために必要な行為ですので、成年後見人ができるのかな?

でも気になる点が…。
「家庭裁判所の許可が必要」って、いちいち許可とらないといけないの?

もし病院で亡くなった場合は、遺体をすぐ移動してくれと言われるそうです。
すごいところだと30分以内にと言われるとか。悲しんでいるヒマはおりませんね。
裁判所の許可もらうので1日待ってくれと言ったら、病院にめっちゃ怒られそうですけど(^_^;)

*追記メモ*
本人の相続人がいるかどうか不明の場合、または相続人に財産の受け取りを拒否された場合は?
→相続財産管理人選任の申し立てをして、その管理人に財産を引き継ぐことが考えられます。(東京家裁本庁後見センターFAQより)

本人が生きている間に、相続人は誰か?どんな葬儀、埋葬を望むか、聞いておいた方がいいですね。なかなか聞けないけど。