認知症や障害によって判断能力が不十分な人の財産を本人に代わって管理する「成年後見制度」
成年後見制度を使う側から見たデメリットについて、思い付くまま並べてみた。

僕は母親の成年後見を司法書士さんに頼んでいる普通の一般人ですので、これを読んでる専門家の皆さん、誤解している部分があったら指摘してくださいませ。

成年後見は本人の判断能力の度合いにより「後見」「保佐」「補助」に分類されますが、これから説明するデメリットは、既に判断能力が全くない、あるいはほとんどできない「法定後見」の「後見」の場合です。

◆デメリットその1
成年後見制度を利用して援助される人(本人と呼ぶ)は、会社役員(取締役など)、公務員などの職業や、弁護士、医師などの資格を失うことになっています。
成年後見を利用するってことはすでに判断能力がほとんどない人なので、そういう人が弁護士や医師であり続ける方が怖いですけどね(^_^;)

 

追記
2019.6.7に、国家公務員法、弁護士法、医師法など187の法律から、成年後見に関する欠格条項を一括削除する法律「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」が可決・成立したことを受けて、法律は改正されておりますので、「成年被後見人、被保佐人」というだけで公務員、弁護士、医師などを辞めされられることはなくなりました。


◆デメリットその2
成年後見を開始すると、本人は印鑑登録できなくなります。不動産の売買や車の売買、遺産分割などで印鑑証明が必要になった場合は、成年後見人の印鑑証明書を使って代替します。
すでに登録されている印鑑登録については、成年後見が開始すると法務局から市町村役場に連絡がいき、抹消されます。
当たり前ですが、判断能力がほとんどない人に、重要な取引をさせてはいけないってことですね。

追記
総務省は、「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」が成立したことを受けて、「印鑑登録証明事務処理要領」を見直し、令和2年(2020年)1月24日に「印鑑登録証明事務における成年被後見人の欠格条項の見直し」を各市町村に通知を出しています。

これにより、成年後見人と成年被後見人が一緒に窓口に行って印鑑登録申請をすれば、申請を受け付けることになりました。

◆デメリットその3
成年後見人は本人が死ぬまで基本同じ人です。気にいらないからといっても途中で交代させることは簡単にはできません。(横領など不法なことをされた場合は、裁判所の許可をもらえば交代させることができます)
成年後見人の候補者は申立時に指名できるので、信頼できる親族、または信頼できる弁護士、司法書士、社会福祉士、行政書士などを選びましょう。
ただし親族を希望しても、財産が多い場合や親族間で意見が合わない場合は、親族ではなく第三者が後見人に選ばれる場合があります。

◆デメリットその4
成年後見人になった人は、裁判所に対して最低年に1回、財産状況、収支状況を報告しなければなりません。
お金の使い道や財産の取引などを正確に記録しておかなければならず、その手間がかかります。
本人のための買い物だったり、何気なく行なっていたちょっとした支払いだったり、財産の処分についても、後で裁判所から説明を求められても説明できるようにレシートや領収書など資料を残しておかなければいけないので、その事務作業がめんどくさいです。

◆デメリットその5
本人の財産は本人のためにしか使えなくなります。
成年後見人がつく前は本人に代わって子供がお金を下ろすことができたりして、本人の許可なく子供のためにお金を使うことができました。(犯罪行為ですけど罪に問われない)
成年後見が開始した後は、財産を何に使ったのか裁判所がチェックしますので不当な使用はバレますし、親族と言えども業務上横領罪になります。
また本人の財産からお金を借りることもできなくなります。

◆デメリットその6
親族以外の第三者(弁護士や司法書士など)が成年後見人につくと、親族は本人名義の口座からお金を下ろすことができなくなります。

成年後見人がつく前は本人に代わって親族がお金を下ろしていたことができても、第三者が成年後見人になると、通帳とカードは成年後見人に渡さなければならず、親族は本人名義の口座からお金を下ろすことができなくなります。

親族が成年後見人になっても、本人の流動資産(預貯金など)が高額(東京家裁では500万円以上、東京以外では1000万円以上)ある場合だと、後見監督人がつくか、後見制度支援信託/預金の利用を勧められます。

後見信託/預金を使うと、今までの口座には必要十分な金額(100万円~500万円の間)しか残さないので、住宅の改築など大金を下ろしたい時には、用途を家庭裁判所に報告して、許可をもらう(指示書を発行してもらう)必要があります。

◆デメリットその7
親族以外の第三者が後見人をしていると、成年後見人に通帳を渡しているため、親族は預貯金がいくら残っているのかわかりません。

成年後見人に預貯金の残高を問い合わせても教えてもらえないことがあります。
成年後見人は家庭裁判所に報告する義務はありますが、親族に答える義務はないからです。どうしても教えてもらえないときは、家庭裁判所に閲覧謄写の申請をすることができますが、許可を出すのは家庭裁判所なので、許可が下りない場合もあります。

◆デメリットその8
相続税を節約することができなくなります。
節税するには、生前贈与などの方法がありますが、成年後見人は本人のために財産管理しなければなりませんので、親族や相続人に「贈与」することはできなくなります。
(ただしお年玉やお香典は認められることがあります)
また、遺産分割を考えるときには、本人の配偶者が亡くなった一次相続だけでなく、親二人とも亡くなった二次相続まで考えて相続税を考えます。

そうした場合、一次相続の時は親の相続分を少なくして子供の相続分を多くすればいいのですが、成年後見の開始後は、後見人は遺産でもらえる分も含めて財産を守る必要がありますので、親本人の取り分が法定相続分より少なくなる遺産分割には同意しません。

◆デメリットその9
遺産分割、不動産の売買などの目的で成年後見制度を利用し、その目的が終わったあとも、成年後見は基本本人が亡くなるまで続きます。目的が終わったからといって成年後見をやめることはできません。
もし本人が日常の金銭管理や介護の必要性など周囲の人に相談しながらできると主張しても、一度成年後見人がつくと成年後見人の判断が優先されます。
認知症の人は判断能力は不足していても意思は持っています。嫌なことはハッキリ嫌と言います。

できる限り本人の意思を尊重してくれる後見人を指定したいですね。

◆デメリットその10
専門職が成年後見人や後見監督人についた場合は、本人の財産から報酬が支払われます。報酬額は、本人の財産がどれだけ持っているかに比例して増減します。
(東京家裁の場合、基本報酬月2万円で、管理する財産が1000万~5000万で月3~4万円、5000万以上の場合月5~6万円)
安く済ませるには専門職に頼まず、信頼できる親族が無償で成年後見人をやるのがいいでしょうね。