認知症の男性が徘徊中に電車にはねられて死亡した事故をめぐって、JR東海が遺族に約720万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁は家族に賠償責任はないとする判決を言い渡した。

この男性は当時「要介護4」(上から2番目に重い)の認定を受けていたが、同居していた妻(要介護1)がうたた寝していた隙に男性は外出していた。

JR側は「妻や長男に監督義務があったのに対策を怠った」と主張したのに対して、家族側は「一瞬も目を離さず見守るのは不可能で、監督義務を課すのは家族の負担が過酷になる」と反論していた。

民法714条では、責任能力がない人の賠償責任は監督義務者が負うと定めています。

今回の裁判で、「妻や実の息子だからと言ってそれだけで無条件で監督する義務を負うものではない」、「妻も高齢者で介護が必要な上、長男も離れて暮らしているなどから、男性を監督することが可能な状況ではなかった」と監督義務者に当たらない、よって賠償責任もないと結論付けた。

今回の裁判でもし家族の監督責任を認めちゃうと、徘徊しないように手足を拘束しなきゃいけなくなる訳で、認知症の親を持つ僕としては判決を聞いてホッとしました。
認知症の方を看護する家族がどれだけ大変か、実際なってみないとなかなかわからないと思います。

この男性が要介護4に認定された時、家族は特別養護老人ホームに入所させることも検討しましたが、入所するまで少なくとも2、3年はかかる、入所させるとさらに混乱する心配がある、との判断から自宅で介護することを決め、ショートステイには週6回通っていたそうです。
さらに家族は勝手に外出したことに備えて警察に連絡先を知らせておくとともに名前や連絡先を書いて布を男性の洋服に縫っていました。
やれるべきことはやっていたんですよね。

年を重ねれば、いつなってもおかしくない病気、認知症。
認知症患者は2012年現在462万人。10年後には700万人、高齢者の5人に1人が認知症になると推定されています。

そんな高齢化社会を地域で見守る仕組み(認知症サポーター等)とか、保険や補償制度など社会全体でリスク軽減する仕組みが必要だと思います。