(ネタバレというほどのものではないが、多少そういったワードが含まれています。万が一読まれる場合はご注意ください)
「33万部突破」
そんな帯に書かれた情報を、私は鵜呑みにして購入してしまった。
鵜呑み、とは、「33万部=世間の支持=面白い」という図式を想像してしまったということである。
実に短絡的であった。
これを手に入れた後、暫く読まずに半年ほど温めていたが、それほどの価値ある作品ではなかった。
というのも、私はこの手の作品がどうやら嫌いなようだ。
まえがきとあとがきを除くとして、本編の始めから終わりまで嫌悪感を抑えることが出来ないような描写の連続である。
主人公への感情移入などまったく出来るわけがない。
登場するあらゆる人物に共感を抱くことすらない。
善悪の概念を含めて、すべてに反吐が出る。
光差すところに闇はあるものだが、あらゆる人物と物語の背景の裏側には必ずと言って良い程の、真っ暗な闇ばかりを感じる。読めば読むほどに、何時しかその闇しか捉えられなくなる。すべてが真っ黒。これを正当化する是非はまったくない。
ついでに言わせて貰うならば、ミステリーの要素も多少はあるようだ。
しかし、勘の良い方や、記憶力の良い方、発想豊かな方、書物を読み慣れた方…etc、からすると、途中で最期のオチに気づいてしまう、あるいは推測することが十分に可能だ。
私自身は完全な繋がりを推測することは出来なかったが、とある「物」が頻繁に登場することからだいたいの事情はあとがきを読まずとも読めてしまった。かなり残念。
そして何より、私自身もこの物語の影響で気が滅入る思いである。
精神が盛り下がる…非常にマイナス思考になりかねない。
しかし、改めて考えてみると、凄いのも確かだ。
この著者は、人の嫌悪の感情を上手い具合にコントロールすることに長けている。
中継ぎに嫌悪感を和らげ、すぐさま落とし、再び和らげ、落とす。
緩急というのか、その繰り返しであるが、この絶妙さが次へ次へとページを手繰ることを止めさせない。
結局、読み始めてから、あっという間に読了してしまった。
読まずとも良かった書物だが、世の中にはここまで高揚や期待感とは逆の、マイナスのベクトルに向かわせる書があるということを知るきっかけになった。
好きではない。だが、マイナス感情で面白いといった表現があるのなら、まさにプラスではない面白さがあるだろう。
