給食の食事計画において、給与栄養目標量を設定する際、対象となる集団の食事摂取量をアセスメントする必要があります。
アセスメントすることによって、「給食を提供している集団は、どんな栄養素が足りていないのか?または、どんな栄養素が過剰なのか?」などの、対象集団の栄養摂取状況を把握します。
栄養素の摂取不足の評価では、摂取量の分布から、推定平均摂取量を下回る人の割合を算出するという方法で評価します。

ここで重要なのは、集団の評価の指標に推奨量を用いない!ことです。
なぜなら、「推奨量(RDA)」は、集団の場合は不足が生じていると推定される対象者がほとんどいない、言い換えれば、ほとんどの人(97~98%)は、足りているという値であり、この値の付近かそれ以 上を摂取していれば不足のリスクはほとんどないものと考えられます。理論的には「推定平均必要量+標準偏差の2倍」として算出されます。

簡単に言うと、推奨量を付近を、とっていれば、まず大丈夫と判断できる数値ですね。
ところが、これを集団の食事摂取量の評価に当てはめて考えることはできません。

たとえば、ある女子大生(20~21歳・女性)100人の集団に食事調査を行い、鉄の摂取量について、評価しました。
食事摂取基準2015年版の推定平均必要量は、8.5mg、推奨量10.5mg,耐容上限量40mgです。
調査対象100人の個々の摂取量は、当然バラバラで、
多い人で20mg,
少ない人で3.5mgでしたが、
平均すると、推奨量の10,5mgになりました。

平均すれば推奨量と同じ、10.5mgとれているのだから、調査対象者の97~98%が、足りていると評価して良いのでしょうか?

そう評価してはダメですよね!!


集団の摂取量の平均値/推奨量=100%であっても、推定平均必要量を下回る人が存在 します。
これでは、摂取不足の者の割合を把握することができているとは言えませんよね。
したがって、集団の摂取不足のアセスメントには、集団の摂取量の平均値/推奨量は用いるこ とができないのです。

一方、食事計画における、給与栄養目標量の設定には推奨量を用います。

例にあげた、鉄の給与栄養目標量を、1日3食給食で提供する場合は、
推奨量付近の10.5mgを含む食事を計画して、食べさせれば、ほとんどの人は足りますよね。
昼食のみ提供する場合は、10.5mg➗3=3.5mg を含む食事を提供することになります。
ただし、昼食のみ提供する場合は、朝や夕食も同じくらい取っていると想定していますから、
朝・夕食で不足する場合は、昼食の給与栄養目標量をもっと高めにしなければならないということになります。

ちょっと難しいけれど、集団の食事摂取量の評価に、推奨量を用いない意味を理解しておきましょう!