超長編怪談 【怪物】 8
それでは前回の答え
答え
おつり
それでは本編
【怪物】第八回です
では
「……ポルターガイスト現象の例としては、室内にバシッという正体不明の音が響く、手も触れていないのに家具が動く、皿が宙に舞う、スイッチを入れていない家電製品が作動するといった目に見えない力が働いているかのようなものから、何もない空間から石や水が降ってきたり、火の気のない場所で物が発火したりといった怪現象などが挙げられる……」
私は緊張した。
石降り現象!
そういえば、ポルターガイスト現象を題材にしたドラマだか映画だかで、室内に石が降って来るという場面を見たことがあった。
完全に失念していた。
間崎京子はこれを言っていたのだ。
『ファフロツキーズ』という言葉に振り回されるなと。
自分の間抜けさに腹が立つ。
石の雨が降るという現象には、別のアプローチの方法があったのだ。
「クソッ」
本を投げて立ち上がる。
ポルターガイスト現象の項はあきらかにやっつけ仕事で、情報量としては私でもおぼろげに知っていた程度のことしか載っていなかった。
鞄からアドレス帳を引っ張り出して、目当ての番号を探す。
中学時代の先輩だ。部活が同じだった。
彼女は子どものころに身の回りでポルターガイスト現象としか思えないような不可解な出来事が続いたらしく、やがてそれが収まった後もなにかと話のタネにしていた。
散々同じ話を聞かされたので内心ウンザリしていたものだが、2年ほど経った今では案外忘れてしまっている。
「晩に済みません。しかもいきなりで。ちょっと教えてもらいたいことがあるんですが」
突然の電話にも関わらず彼女は私を懐かしがって、「電話より、今からウチ来る?」と言ってくれた。
「すぐ行きます」と言って電話を切り、廊下から居間の方に向かって「ちょっと出てくる」と大きな声で告げてから家を飛び出した。
生ぬるい空気が夜のしじまを埋めている。
一日、熱エネルギーを吸収したアスファルトがまだ冷めないのだ。
自転車に乗って、住宅街の路地を急ぐ。
街灯がぽつんとある暗い一角に差し掛かった時、コンクリート塀の傍らに設置されている公衆電話が目に入った。
何故か昔から苦手なのだ。
小さいころに「お化けの電話」という怪談が流行ったことがあり、ある9桁の番号に公衆電話から掛けるとお化けの声が受話器から聞こえてくるという、他愛もない噂だったのだが、私は近所の男の子と一緒にこの公衆電話で試したことがあった。
記憶が少し曖昧なのだが、たしかその時はその男の子が「聞こえる」と言って泣き出し、受話器をぶんどった私が耳をつけるとツーツーという音だけしか聞こえなかったにもかかわらず、その子が「だんだん大きくなってきてる」と喚いて電話ボックスから飛び出してしまい、取り残された私も怖くなってきて逃げ出してしまった。
それ以来、この道を通る時には無意識にその電話ボックスから目を逸らしてしまうのだ。
気味は悪かったが、今は何ごともなく通り過ぎて先を急ぐ。
先輩の家には15分ほどで着いた。
玄関先で待っていてくれたので、チャイムを鳴らすこともなく家に上げてもらう。
時計を見ると夜の9時を回っていたので「遅くに済みません」と恐縮すると、母親が現在別居中で、父親は仕事でいつも遅くなるから全然ヘイキ、と笑って話すのだった。
兄弟姉妹もいないのでいつもこの時間は家に一人だという。
先輩の部屋に通されて、クッションをお尻に敷いてからどう話を切り出そうかと思案していると、彼女は苦笑しながら私を非難した。
「同じ学校に入って来たのに、挨拶にも来ないんだから」
ちょっと驚いた。
中学時代の2コ上の先輩だったが、そういえば高校はどこに進学したのか知らなかった。
まさか同じ学校の3年生だったとは。
向こうは何度か学内で私らしき生徒を見かけたらしく、新入生だと知っていたようだった。
しばらく学校についての取りとめもない話をする。
正直、早く本題に入りたかったのだが先輩の話は脱線を繰り返している。
ただひとつ、「校内に一ヶ所だけ狭い範囲に雨が降る場所がある」という奇妙な噂話だけはやけに気になったので、今度確かめてみようと密かに心に決める。
「で、聞きたいことってなに?」
先輩が麦茶を台所から持ってきて、それぞれのコップに注ぐ。
ポルターガイスト現象のことだとストレートに告げた。
先輩は目を丸くして、「ピュウ」と口笛を吹く。
「あれ? あなたにはあんまり話してなかったっけ?」
いや、聞きました。
耳にタコができるくらい聞かされました。
先輩が小学校4年生くらいのころ、家の中でおかしなことが立て続いて起こったそうだ。
例えば食器が棚から勝手に飛び出し地面に落ちて割れたり、窓のカーテンが風もないのにまくれ上がったり、部屋のどこからともなく何かがはじけるような音が断続的に響いたり、ある時など家族の目の前で花瓶に挿していた花がフワフワと宙に浮き始め、いきなり凄い勢いで天井に叩きつけられたこともあったらしい。
それが数日置きに何週間も続き、ある時パタリと止んだかと思うとまたしばらくして急に起こり始める。
困惑した両親はついに有名な祈祷師を紹介してもらい、家のお払いをしてもらった。
その後、物が動いたりといったことはなくなり、何かがはじけるような物音や屋根裏を誰かが這っているような音は時々あったそうだが、やがてそれも起こらなくなった。
今お邪魔しているこの家でのことだ。
思わず部屋の天井の辺りを見上げたが、特になにも感じる所はなかった。
「聞きたいのは、石が降ってきたことがあったかどうかです」
「石? 家の中に?」
「家の外でもいいですけど」
先輩は記憶を辿るような視線の動きを見せた後、「なかったと思う」と言った。
「じゃあ石じゃなくてもいいですけど、家の中になかったはずのものがどこからと もなく現われたりしたことは?」
「……お皿とか果物とか色々飛んだり落ちたりしてたけど、全部家にあったものだからなあ。
ないモノが出てくるって、なんか凄いね。サイババみたい」
先輩は面白がって、最近テレビで見たというサティア・サイ・ババのアポート(物品引き寄せ)について喋りだす。
「こんなしてさ、手のひらぐるぐる振ってから、出しちゃうのよ」
テーブルの上にあった鋏を手に持ってその様子を実演してみせてくれる。
私は少しがっかりした。
「そんなにポルターガイストとかに興味あるの? あたしも最近は全然だけど、むかし気になって色々調べたから、そっち系の本があるよ。読みたいなら貸すけど」
「是非」と言うと、先輩は「ちょい待ち」と部屋の本棚をゴソゴソと探し回って何冊かの本を出してきてくれた。
いずれもオカルト系の雑誌の類だ。
それぞれポルターガイスト現象に関する所に付箋がついている。
礼を言って、おいとまをしようとした時、先輩が私の顔をまじまじと見つめてきた。
「あなた、ちょっと変わったね」
先輩こそ剣道部で後輩をしごいていたころからしたら、随分肉がついてしまってるじゃないですか。
そんなことを婉曲に言ってみたが、先輩は自分のことはまったく耳に入らない様子でブツブツと口の中で呟いている。
「変わったというか、変わっている、途中、みたいな」
その瞬間、背筋に誰かの視線を感じた気がして振り返りそうになる。
「あ、ごめん。気にした? まあ、また今度ゆっくり話そ」
なんだろう。今の感じ。
その嫌悪感を、私は"知っている"。そんな気がした。
玄関を出て、家の前で見送ってくれる先輩に最後に一言だけ問いかける。
「最近、怖い夢を見ませんでしたか」
先輩は顔を強張らせたかと思うと、柔和な笑みでそれをすぐに包み隠す。
「そう言えば今朝がた見たけど。変な夢だったな。ありえない夢」
オヤスミ。
と手を振って先輩は家の中へ消えていった。
誰もいない、たった一人の家に。
私は自転車に乗っかると全速力で漕ぎ出した。
家に帰り着くのが遅くなるにつれて母親の小言の量が比例して増えるのだ。
星を、空に見ながら夜の道を急いだ。
今回はここまで
ではクイズ
2人の正直者と1人のうそつき者がいます。正直者は聞かれたことに対して正しいことのみを答え、うそつきの人はうそしか答えません。今、この三人に10円玉を5枚わたし、3人のあいだで分配させて、10円玉を左右の手に、それぞれ1個づつにぎりしめてもらいました。すると当然、この中の1人だけは10円しか持っていないことになります。
質問を二回だけして、10円を一枚しか持っていない人を当てるにはどうすればいいだろうか
では
超長編怪談 【怪物】 7
はい、こんにちは 久しぶりの金曜日の大谷です
それでは前回の答え
三に棒二本で五
三 → 五
それでは本編
【怪物】第七回です
それでは
スフィンクスはテュポンとエキドナの娘とする説もあるが、エキドナが我が子オルトロスとの間に作った娘であるとする説の方が一般的なようだ。
私は本を閉じ、背中を反らせて図書館の高い天井を見上げた。
そこから導き出される共通点は、こうだ。
『6体の怪物はすべて、エキドナから生まれた』
これが答えだろう、間崎京子。
紙をめくる乾いた音が周囲から響いている。
深いもやがかかっていた頭が、ほんの少しだけクリアになった気がする。
「共通点を探してみてね」とあの時あいつは言った。
そしてその謎掛けの答えからあの女のメッセージが浮かび上がってくる。
氷細工のような顔の口元がイメージの中で滑らかに動き、私をそれを読み取る。
『エキドナを探せ』
溜息をついた。なんて回りくどいんだ。
あの女に次会った時にはなんとかして殴ってみよう、と思った。
その時、静かだった館内にちょっとした騒ぎが起こった。
立ち上がって駆け寄ると、私がさっきまで本を漁ってた書棚から、大量の本が落下して床にぶちまけられている。
近くにいたらしいパーマ頭のおばさんが狼狽して、自分じゃない、としきりに訴えている。
係りの人間が飛んで来て、本を拾い始めた。
その人の「いい加減にしてくださいよ」という、誰にぶつけていいのか分からないようなうんざりした声を、私は確かに耳にした。
図書館からの帰り道、私はクレープを買い食いしながら商店街の路地に佇んでいた。
夕焼けがレンガの舗装道を染めて、様々なかたちの影を映し出してる。
道行く人の横顔はどこか落ち着かないように見える。
みんな心の奥深い場所で、説明しがたい不安感を抱いているようだった。
そう思った私の目の前を女の子たちの笑い声が通り過ぎる。
息を吐いて、最後の一口を齧る。
どの人の表情も、私の心の投影なのかも知れない。
ロールシャハテストだ。
笑い顔以外に、すれ違うの人の気持ちを理解できる機会なんてまずないんだから。
結局あの図書館の本の落下の原因はわからないままだった。
こんなことが、昨日の水曜日から今日にかけて、街の至る所で起きているらしい。
私は起こっていることより、この一連の出来事の向かう先のことが気に懸かっていた。
いったいどういうカタルシスを迎えるのか。
そう考えながら目を閉じると、何かをせずにはいられない気持ちになるのだった。
『エキドナを探せ』
その言葉に、糸口を見出せそうな気がする。
さっきからそのことばかり考えている。
クレープの包みをクズ籠に放る。
私にこのヒントを投げ掛けた間崎京子は、街中で起こっている怪異を怪物に例えた。
そしてその怪物たちを生み落とすのは蝮の女エキドナだ。
これがいったい何の隠喩なのか定かではない。
定かではないが、私はこう考えている。
少なくとも間崎京子は、一見バラバラに発生しているように見える怪奇現象が単一の根っこを持っていると思っている。
それも、ナントカ現象だとかナントカ効果だとかといった包括的ななにかではなく、信じがたいことにそれはたった一つの"人格"と言えるような存在に収束されているような気がするのだ。
ハ。
こんなこと、誰かに話せるようなものではない。
家に帰り着き、玄関の前に立った時から気づいていたが、やはりその夜の晩御飯はカレーだった。
さりげなく聞いてみたが、「そういえば、どこでやってのかしらね」と母親が首を傾げる。
明かりとラジオをつけて、部屋の真ん中。
とりあえず昨日ファフロツキーズの項だけ読んで投げていた『世界の怪奇現象ファイル』を通して読んでみることにした。
そして黙々と頁をめくる。
どこかで聞いたことがあるような怪奇現象ばかりが列挙されているが、情報の量と質にはかなり偏りがあり、ファフロツキーズの項のような詳細な解説はあまりなかった。
それは『ポルターガイスト現象』の項だった
今回はここまで
ではクイズ
同じ物を一個買うと60円になり
二個買うと20円になるものは何
ではまた
なんとなく
気温も下がり個人的には過ごしやすい日々が。
最近、中古絵安くデジタル一眼レフを買ったので大阪へ行って来ましたが
雨がひどく撮影どころではなかったのでとんぼ返り。
明日もう一度大阪でも生きますか・・・
冬といえば ましろぼたんの「淡雪」ですかねぇ・・・
あれ、俺だけぁ・・・
それでは。