浮かんでは消え
また浮かんでは消え
暗闇の中
見えない声がする
暗闇の中
君の弱々しい声がする
暗闇の中
またこの夏が過ぎてゆく
暗闇の中
君の夏もまた過ぎてゆく
暗闇の中
真っ赤な花が咲いていた
血に染められた花
浮かんでは拡散し
拡散してはその色を濃くする
暗闇の中
君はただ眠りにつきたいだけ
暗闇の中を浮遊し
真っ赤に染まったその海
地のはてに漂着する
暗闇の中
軍人さんの遺影を眺め
飾り奉られたヒロヒトを眺め
またこの夏が過ぎてゆく
君は
実の姉妹だと思い育ったその姉の遺影を手にする
君は
後ろ指を指されながらも
君のその故郷は遠い異国となってゆく
暗闇の中
軍人さんの遺影を眺めながら
飾り奉られたヒロヒトを眺めながら
この暑い夏がまた終演を告げる
山は削られ禿げ上がり
川は塞き止められ渇れはて
浮かんでは消え
また浮かんでは消え
子供たちの笑い声がこだまし
虫の鳴き声が最後の力を振り絞る
この暑い夏がまた終演を告げる

