am9:30 お父さんはは入院しているお母さんの病院にやっと着いたよ。朝、電話した時に早朝から陣痛室に移っていたと聞いてびっくりしたけど、初産だし、昨日の主治医の先生の話でも「夕方までに出てこれたらいいね」ということだったので正直、油断していたよ・・・


 そう、お父さんはきみが実はやれる子だということを忘れていたんだ。


 お母さんのおなかの中にまだいた時、なかなか大きくなれなくて、お父さんもお母さんも実はすごく心配していたんだ。出産予定の1週間まえの段階で2000gまで到達していなかった君は、最後の1週間でまさかの300g増とびっくりさせてくれたね。あの時はお母さんはバナナばかり食べていたから、きっと君はバナナが大好物なんだろうなと勝手にお父さんは思っているよ。


 話は戻るけど、夕方に出てくる予定だった君は・・・

 10:05には産声をあげていたよ。

 分娩室に入ってから15分くらいだったかな。先生たちも予想外だったようで慌てていたみたい。あとでこの大学病院で最速記録だってきいたよ。きっときみはお母さんの負担を減らそうと思って一生懸命早く出てきてくれたんだろうけど、それは先生たちをびっくりさせていたよ。

 でも僕らには初めてのこどもだし、早いっていうことは正直どうでもうよくて、お父さんは恥ずかしいけど君の声を聴いた瞬間はきっとひどくて誰にも見せらせない顔だったと思う。涙と鼻水でぐちゃぐちゃだったと。


 そうそう、話が前後しちゃったけど、きみは実は生まれてくる前から病気があることがわかっていたんだ。でもそれは本当に幸運だった。見つかったときはやっぱりお父さんもお母さんも心が痛かったんだけど、乗り越えてからは先生に本当に感謝した。だって、わかっていなかったらきみは生きていくことができなかったかもしれないのだから・・・

 君の病気は「肺動脈閉鎖症」という名前だったよ。お父さんは一応、医療に携わるお仕事をしているんだけど新生児先天性疾患は全然わからなかった。名前の通り、肺に血液を送る血管が詰まっている病気なんだけど、不思議なことにおなかの中にいるうちは全く影響がなく、生まれてきた後、呼吸を始めてから苦しくなってしまう病気だったんだよ。生まれてきたらすぐに処置をして、今後も大きな手術を繰り返さないといけないんだって。

 

 病気のこともあって、お父さんはきみが無事に生まれてきてくれた時はぐちゃぐちゃの顔をしていたんだ。


 きみはすぐに小児科の先生のもとに連れていかれて処置をしてもらったんだよ。ゆっくりきみに会えたのは生まれて3.4時間後だったかな。点滴と胃の中に入ったチューブ、モニターをとるための機器のコードがきみの体にはたくさんついていたけど。顔を見れたとき、お父さんもお母さんもほんとにほっとして、うれしくて、、、いろんな思いが重なって笑顔だった。と思う。NICUの保育ケースに入っていたから触れてあげることはできなかったけど、ものすごくうれしかった。親ばかになるだろうなと想像はしていたけど、この時それは確信に変わったね。


 状態も落ち着いていて、先生は経過は順調ですと言ってくれた。

 

 これからお父さん、お母さんそして僕たちを支えてくれているたくさんの人たちの助けを借りて、きみを大事に育てていこうと思う。

 親としてはまだまだ未熟なぼくたちだけど、きみに出会えてよかった。

 これから一緒に生きていこう。

 しばらは病院での生活だけど、毎日会いに行くよ。でもお父さんはお仕事でいけない日もあるかもしれない。でも、それは許してね。


 また早く君に会いたいと思いながら、今日も休むことにするよ。

 お母さんも入院中だから家に一人

 早く三人での生活が来るといいな。