栄養素の過不足は化学的ストレスに分類され、うつ病や自律神経失調症の原因となります。
栄養素の過不足が、どうしてうつ病や自律神経失調症の原因になるのか。
うつ病と食事の関係についてお伝えします。
心は食べ物によって作られている
空腹の解消
習慣的に
ストレスの解消
など、「食べる」ということの意味は様々です。
「食べる」ということの意味を改めて考えてみましょう。
私達は日々、食事を通して栄養を摂っています。
脳、血管、内臓、骨、筋肉・・・これらは私達が食べた物からも作られています。
口から食物が入り、歯で噛み砕かれ、胃腸の酵素によって小さく分解された栄養素は、
腸管から吸収され、やがて血液に溶け込みます。
栄養素は血液によって脳内へと運ばれ、そこでエネルギーとして使われます。
実はこのとき、脳だけではなく「心」も食べ物によって作られているのです。
心と脳の繋がり
嬉しい
楽しい
怒り
悲しい
不安
といった感情は、心から出てくるものですが、その心というのは、脳からつくられています。
脳には、約一千億個の神経の細胞が詰まっています。
その細胞は「電気信号」という形で発生し、神経の伝達物質によって、それぞれ他の細胞へと情報交換をしています。
(まるで脳全体が一つのネットワークのようになっているのです。)
その情報が、細胞から細胞へとうまく伝わることにより、私達の「心」が誕生するのです。
細胞への伝達物質の「原料」が不足すると、情報が円滑に伝わらず、うつ病や自律神経失調症の症状である、
イライラ
悲しみ
気持ちが塞ぐ
意欲が低下する
・・・などの様々な症状が現れます。
こうして、うつ病が進んでいくと、やがて日常生活にも支障をきたしてきます。
伝達物質に必要なものは、
アミノ酸
アミン
ペプチド
というものですが、アミンとペプチドはアミノ酸からつくられます。
そして、このアミノ酸を伝達物質に交換するのが酵素であり、
この酵素にはビタミンとミネラルが必要となります。
ストレスと栄養素のつながり
うつ病や自律神経失調症の原因はストレスですが、ストレスをうけると、
ビタミンB群やミネラルなどの必要な栄養素が大量に失われます。
これらの栄養素が不足すると、脳内での神経の伝達物質に必要な酵素に影響を与え、
やがて脳がエネルギー不足になります。
そして脳の興奮が足らなくなり、やる気が失せ、うつ病が発生します。
また、その反動により、脳が興奮して不安障害や自律神経失調症になることもあります。
うつ病に良いとされる栄養素
ビタミンB郡
亜鉛
鉄
マンガン
タンパク質
コラーゲン
ビタミンA
ビタミンC
ビタミンD
ビタミンB群
ビタミンB群が欠乏すると、睡眠障害、つまり不眠症が起こる場合があります。
夜、なかなか寝られなかったり、夢を見たりするなどは、睡眠が浅いことで起こります。
これは、ビタミンB群の不足により、睡眠をコントロールする神経の伝達物質がうまくできていないためです。
寝酒をする人もいますが、実は、アルコールを分解するのにもビタミンB群が使われます。
アルコールを摂取することは、ビタミンB群を不足させてしまい、
睡眠に必要な脳への神経の伝達物質も作られなくなり、睡眠障害が起こるのです。
また、甘い物をよく食べる人も、ビタミンB群を不足させてしまうので注意しましょう。
ビタミンB群は、体内での正常な代謝とエネルギーをつくり出すのに必要な栄養素です。
甘い物の食べすぎや過食、食事の変わりにお菓子を食べてしまう・・・
などにより、ビタミンB群は大量に消費されてしまいます。
ビタミンB群が欠乏してしまうと、
イライラする
疲れやすい
集中力が続かない
などのうつ病、自律神経失調症の症状が出てきます。
結果、「ストレス解消=甘い物を食べる」といった行為は、
逆に精神状態を悪化させてしまうので、うつ病、自律神経失調症にもなりかねません。
ビタミンB群が多く含まれる食物
ビタミンB1・・・穀物の胚芽、豚(ヒレ・モモ)肉、ハム、あおのり、大豆など
ビタミンB2・・・(牛・豚)レバー、卵、大豆、乳製品、葉菜類など
ビタミンB3・・・たらこ、マグロ、かつお、牛レバーなど
ビタミンB5・・・(牛・豚・鶏)レバー、子持ちカレイ、ニジマス、納豆など
ビタミンB6・・・にんにく、ピスタチオ、酒粕、まぐろ、牛レバーなど
ビタミンB12・・・しじみ、赤貝、(味付け・焼き)海苔、すじこ・牛レバーなど
葉酸・・・・・・・・(牛・豚・鶏)レバー、(味付け・焼き)海苔など
ビオチン・・・・・・牛レバー、大豆、卵、サケ、ほうれん草など
亜鉛(ミネラル)
亜鉛には、血糖を下げるために必要な、インスリンの分泌の調整をする働きがあります。
この他、亜鉛は成長ホルモンにも関わっているため、
成長期に亜鉛が不足していると身長が思うように伸びなかったりします。
女性ホルモンとの関係も深く、亜鉛が欠乏すると、意欲や性欲の低下が起きます。
これもうつ病の時に起こる症状です。
また、亜鉛はアルコールを分解するのにも必要な栄養素です。
その他、亜鉛が欠乏すると、
皮膚がカサカサになる
傷が治りにくい
(免疫力の低下のため)風邪をひきやすい
味覚障害
嗅覚障害
食欲不振
イライラ
疲労
無感動
健忘症
うつ病の症状
などがあります。
したがって、うつ病で「食べ物の味がわからない」という方は、亜鉛が不足している可能性もあります。
亜鉛が多く含まれる食物
魚介類では、
カキ
魚
カニ
ツブ貝
肉類では、
レバー(豚・鶏)
ハム
鶏肉
その他、
ミルク
ナッツ類(アーモンド・へーゼルナッツ・クルミ)
などがあります。
鉄(ミネラル)
鉄は、体内で赤血球をつくることを最大の役割としています。
赤血球とは、血液の主成分で、体の毛細管を通って各組織へ酸素を運び、二酸化炭素を運び出す働きをしています。
また、赤血球の数が減ると貧血状態になり、多すぎると、血液の流れが悪くなって血管が詰まりやすくなります。
その他、鉄が足りなくなるとコラーゲンのつくられる量が減るため、
体の節々が痛くなったり、シミができやすくなったり、肌、髪、爪などにも影響が出てきます。
鉄を含む食品として、ほうれん草やプルーンといった植物性の食品がありますが、
これらは『非ヘム鉄』といって、体に吸収されにくい物質です。
一方、動物性タンパク質に含まれている『ヘム鉄』は、『非ヘム鉄』に比べはるかに吸収されやすい物質です。
鉄が多く含まれる食物
あおのり
ひじき
きくらげ
煮干し
アサリの佃煮
干えび
豚肉レバー
などがあります。
マンガン(ミネラル)
マンガンは、記憶に関わる伝達物質や、多くの酵素と関わりがあります。
例えば、血糖のコントロールに関わる酵素、エネルギー代謝に関わる酵素などで、
マンガンが不足すると、高血糖や糖尿病にもなりやすいのです。
マンガンが多く含まれる食物
ピーマン
アーモンド
ほうれん草
ぶどう
大根の葉
などがあります。
タンパク質
タンパク質は、脳への伝達物質に重要な栄養素の一つでもあり、
皮膚や骨、血管、内臓、筋肉、酵素やホルモン、免疫に関わる抗体に必要な栄養素でもあります。
タンパク質には『動物性』と『植物性』があります。
どちらか片方のタンパク質を摂っていても、体内でうまく利用されていないので、
両方のタンパク質をバランスよく摂る必要があります。
コラーゲン
コラーゲンは、体の骨組みを形づくる栄養素です。
コラーゲンは、骨・軟骨・腱・皮膚・血管・歯など、体のいたるところに含まれており、
美肌の形成や、ヤケドなどの傷の治りを早めたりします。
背骨の椎間板はコラーゲンなので、椎間板ヘルニアやぎっくり腰を防ぎ、腰痛を減らす役割もします。
血管の壁もコラーゲンによってつくられるため、不足するとアザができやすくなったり、
歯茎から出血しやすくなったりします。
コラーゲンが多く含まれる食物
鶏肉(皮・手羽先・軟骨)
フカヒレ
うなぎ
牛すじ
豚足
なまこ
などがあります。
ビタミンA
ビタミンAは、視覚機能に関する重要な働きを担っており、これが欠乏すると『夜盲症(とり目)』になります。
他にも、目や口腔、消化器などの粘膜と関わりがあり、症状として、角膜の乾燥や皮膚のカサカサ感があります。
ビタミンAが多く含まれる食物
うなぎ
レバー(牛・豚・鶏)
牛乳
などがあります。
ビタミンC
ビタミンCには、働きや作用が数多くあります。例えば、
風邪やインフルエンザなどの、ウィルスの感染症を防ぐ
貧血だけでなく、鉄と一緒に摂取することで血行がよくなる
血行がよくなると体温も上がるので、冷え性にも効果がある
さらにビタミンEも一緒に摂取すると、より寒さに強くなる
高血圧の人は、血中のビタミンC濃度の低い人が多いため、
ビタミンCを十分に摂取することにより、血圧が次第に下がってくる
血圧低下だけではなく、血管につくられる血栓を防ぎ、それを溶かし、血液の流れをよくする
骨を丈夫にする
シミを防ぎソバカスを緩和する
利尿作用
便に対する緩下作用
血糖を減らす作用
高脂血症の予防や改善
ストレスの減少
などがあります。
ビタミンCが欠乏して起こる病気といえば、有名なのが『壊血病』です。
ビタミンCが多く含まれる食物
(焼き・味付け)のり
(赤・黄)ピーマン
ゆず
パセリ
芽キャベツ
レモン
などがあります。
ビタミンD
ビタミンDは、骨の形成に必要不可欠な栄養素で、これが欠乏すると、
幼児期には『くる病』、青年期には『骨軟化症』になることがあります。
また、骨の形成には日光の紫外線が必要となります。
これは、太陽光線が皮膚の脂に作用することによってつくられるからです。
ビタミンDが多く含まれる食物
乾燥きくらげ
あんこうの肝
しらす干し
いわしの干したもの
などがあります。
栄養素の組み合わせ
栄養素を組み合わせることにより、相乗効果で機能をアップさせることができます。
ビタミンB12+葉酸
ビタミンB12には、葉酸を活性化させる働きがあり、体の中では血液をつくる役割をします。
カルシウム+マグネシウム
カルシウムが体内で働くには、マグネシウムが必要不可欠です。
ビタミンC+ビタミンE
ビタミンEには、細胞が錆びないような老化防止の作用があり、ビタミンCは、働き終えたビタミンEをリセットさせ、再び細胞を錆びさせないよう、リサイクルさせる働きをします。
食べる順番
食事をする時の食べる順によって、体への吸収が変わります。
例えば、食べ始めるときは、
こんにゃく
海草
キノコ
野菜などの緑黄色野菜
根野菜
といった「食物繊維」が多いものから食べると、血糖の上昇を抑えます。
うつ病と血糖値
ジャンクフードと低血糖症の関係
現代社会において、ジャンクフード(ファーストフード・砂糖を使った甘い物など)、
インスタント食品や加工食品など、栄養素が不足しがちな食物であったり、
栄養が偏った食生活というのは、うつ病など、数々の症状を起こさせる原因となります。
例えば、ジャンクフードはカロリーが高いのですが、ビタミンやミネラルといった微量栄養素が少なく、
砂糖や精製デンプンが大量に含まれているため、食べると血糖値の上昇が異常に早くなります。
また、砂糖やデンプンの摂取量が多いほど、
膵臓から血糖値を下げるインスリンというホルモンが一度に多く放出されます。
そして、脳に使われているブドウ糖が血液から減少し、低血糖症が発生しやすくなります。
そのため、脳はエネルギー不足となり、不安に襲われやすくなります。
当然、うつ病や自律神経失調症の方は食べない飲まないようにしてください。
うつ病と低血糖症
「低血糖症」というのは、「血糖値が低い」というより、
むしろ「血糖値の変化が保てなくなる」といった状態になります。
ではなぜ、低血糖症が自律神経失調症やうつ病の症状と関係しているのでしょうか?
例えば、何かを食べると血糖値は上がります。
この時、血糖値の上がり方は「何を食べたか」によって著しく変化します。
砂糖は「ブドウ糖」と「果糖」という二糖類(二つの分子がくっついている)で、
体の中に入ると分解吸収されるのが早く、摂取量が多いと高血糖にもなります。
(とくに精製された砂糖は、ビタミンBやカルシウムをも消耗させます。)
高血糖になると、膵臓からインスリンという血糖値を低下させるホルモンが出て血糖値を下げますが、
そのインスリンが過剰分泌されると、血糖値は低くなり過ぎ、低血糖になります。
大量の糖の処理を繰り返し強いられると、その膵臓は過敏になり、低血糖症が発生します。
低血糖症になると、血糖値を上げるため、
副腎という臓器からアドレナリンとノルアドレナリンというホルモンを分泌します。
アドレナリンは、別名『攻撃ホルモン』と呼ばれ、
脳の中の大脳辺縁系を刺激し、怒りや敵意、暴力といった攻撃的な感情を起こします。
そして低血糖によりノルアドレナリンの濃度が急上昇すると、理性的な判断ができなくなり、
発作的な感情として、不安、恐怖、自殺観念、強迫観念などを起こします。
これもうつ病や自律神経失調症の方の症状に当てはまります。
こうした低血糖症により、自律神経が乱れ、その結果、心と体に様々な症状が出てきます。例えば、
集中力がない
イライラする
不安がある
動悸
眠気
(手や足などの)体の痺れ
頭痛
筋肉のこわばり
などです。
甘い物をとると気分が落ち着くのは、それにより血糖値が一気に上がるからです。
ただ、その一気に上がり過ぎた血糖値を下げるために、体からインスリンを大量に放出し、
血糖値を下げ、そして今度はその下がり過ぎた血糖値を上げるためにホルモンが働き出す・・・
こういった状態を繰り返すと、そのうち血糖値の調整がうまくいかなくなるので、
糖質の多い食品は控えたほうがいいでしょう。
栄養素と健康
以上、今まで述べたように、私達が毎日食べている食物には、空腹のためだけではなく、
病気の予防
病気を促進させる
心の形成
うつ病
自律神経失調症
にも非常に影響しております。
栄養素をバランスよく摂取することにより、今ある症状の改善や、健やかな生活を手に入れることができます。
未来の自分のために、今一度、食生活を見直すというのも、考えてみてはいかがでしょうか。