日本のオーガニック農地面積はたった0.1%。
海外と比べ100倍の差があるのはなぜなのか?

IFOAM(国際有機農業運動連盟)によると、
2003年に主要国の耕地面積に占める有機栽培面積の割合は、
オーストラリア11.3%、スイス9.7%、イタリア7.9%、イギリス4%、
アメリカ0.5%。それに対し日本はわずか0.1%だったことが明らかになりました。

オリンピック開催地である日本は、世界の農薬規制の基準値に満たないとされ、
海外選手や関係者へ提供する食品の品質の安全性が問題になっているようです。
日本有機栽培面積わずか0.1パーセント・・・。

ほかの国と比較すると最大100倍以上の開きがあるのです。

私も自分自身が健康でありたいという気持はもちろん、
オーガニック市場を少しでも拡大させたいという気持ちで、
普段からオーガニック食材を積極的に農家から直接購入するようにしていますし、
外食に行くときもなるべくオーガニック食材を使ったお店に行くようにしています。

私の周りでも、そうした人は少しずつ増えてきたように見えます。

にもかかわらず、日本はいまだ農薬大国。
オーガニック先進国と比較して約100倍も差が開いているのはなぜなのでしょうか。

農薬大国と呼ばれる日本は農薬規制にとても甘い印象です。
なかでも、この国は世界で常に農薬使用トップ3以内を維持していることで有名です。

日本はほかのヨーロッパ諸国と比べてオーガニックマーケットや
オーガニック農地の割合が非常に少ないといえるでしょう。

市場だとUSA270億ドル、日本は10億ドル、ドイツはその10倍です。

けれども、私は日本にも今後、可能性があると思っています。

最近耳にしましたが、ビオセボンなどのオーガニック専門店(スーパー)の展開が
日本でも検討されています。

ただし、大きな拡大を目指すには
政府が有機農家を支援するなどの協力が不可欠になります。

オーガニック農地が大きいとはいえない米国と比べても市場に約27倍の開きがあります。
ちなみに、他の諸国ではオーガニックマーケットの拡大に成功した国もあります。
日本が他国から学べる施策は何があるのか?

他国の事例ですが、まず、ブラジルでは生態系農業を伸ばす施策があります。
オーガニック食材の消費量を増やすため、例えば給食などでオーガニック食材の消費が推奨されています。

デンマークでも、政府が国をあげてオーガニック促進計画を実施していました。
病院などの公共機関でオーガニック野菜や食材を提供することによって、
治療を受けている患者さんが健康になる、といった事例もあります。

先月のデータではコペンハーゲンにおける学校給食の88%がオーガニックであることが明らかになりました。
これも政府の補助金によってなされた実績だといえます。

オーガニック農地や消費量が多く、
オーガニック先進国として成功している国々の事例を見ると、
やはりその多くが国をあげて何らかの政策をとっている、ということが言えます。

オーガニック市場の拡大に至った国々の大きな理由の一つとして「政府の取り組み」がキーになっているということです。

では、日本はどうでしょうか?
オーガニック農業の拡大を行うばかりか、逆の方策に向かって進んでいます。

農薬を使用する慣行栽培にほとんどの補助金が回ってしまっている現状があります。

国は農業コミュニティーと消費者の健康を守ることが重要だと考えます。

確実に言えることは、国をあげて政策を行わなければまずオーガニックの大幅な拡大は厳しい、ということです。

国の政策に大きな違いがありますが、では消費者の行動の違いはどうでしょう?

日本ではオーガニックスーパーやマルシェで野菜を買う人もいるようですが、
多くの方はオーガニックの意味すら知らない場合も多く、
オーガニック=ヘルシー風な食品全般という、誤った理解が広まっているようにすら思います。

他国でオーガニックが広がっていった国の特徴を見ると、二つのことがわかります。

一つ目は食品にからんだスキャンダルが絶えなかった、ということ。

これは偽装問題や食品における事件などです。

20年前にイギリスでの狂牛病の発生で、食への不信が高まりました。
この問題が一般市民に広がったことで、食に関する教育が大きく前進しました。

この事件がきっかけとなり、政府はオーガニックが体に良く、農業にも良く、
社会全体にとっていいのだということを国民に教えるようになったのです。

二つ目は医師がより良い食事、野菜や果物を食べること、
なかでもオーガニック食品を奨励していることです。

患者さんの多くは健康な体を取り戻したいと願っています。

彼らに医者たちはオーガニック食品を食べることによって健康になれるということを伝えています。

日本ではそういう指導をする医療機関は少ないように感じます。

野菜などを「バランスよく食べたほうがいい」という人はいますが
オーガニック食品を勧める方にはほぼ出会いません。

なぜ日本にそういうことを教える人がいないのか??

私たちの国では、良いものを食べて、健康を害することを予防する、
日常生活でできることを専門家たちが国民に伝え、健康になれる人を増やせるよう活動しています。

とはいえ、どのような食べ物がどのような影響を及ぼすかなど、食品が体にいいということを示す研究はまだ遅れています。
医者は食に関して深い知識があるわけではありません。

しかし、近年では、オーガニック食品は単に農薬の含有が少ないということだけではなく、
抗酸化作用、オメガ脂肪酸など、いい成分が多いことが様々な研究の中で明らかになっています。

国民がオーガニック食品を食べて健康になったら患者が減ってしまう可能性があると思うのですが
ヨーロッパにおいて、医療機関で働く人々は、市民を健康にすることがミッションですから
問題になりません。

消費者がオーガニックを選択するのはどんな時か?

3つの重要な視点があります。

一つ目は健康面です。

一般の消費者であっても健康でありたいと考える方は多いでしょう。
あと、出産が一つのきっかけになるケースも多いようですね。
小さなお子さんを持つ方は食事に対してとても敏感になる傾向にあります。

もうひとつは味です。

食の文化が発展する地域では、消費者がどのような食べ物がおいしいのかについてよく知っています。
ヨーロッパや日本がそれにあたりますね。

スーパーにおいてある、見かけが均一でプラスティックのようなトマトではなく
自然のエネルギーを受けて育った、よりよい土から生まれたトマトは、
私たちが忘れていたような味を思い起こさせてくれるはずです。

三つめは信頼です。

体に取り込むものは、信頼できるものであることが必要とされています。
食べているものが有害でないかどうか。そうしたことについて、一般の消費者も知りたいはずです。

では、健康や環境面に対して興味がなく、意識の高くない消費者についてはどうか?

そういった関心のない方でも、「味が美味しいから」という理由で選ぶ可能性はあるかもしれません。

ちなみに、日本など所得の高い国では意外に、食費にかけている部分が少ない。

50年前は40-50%を食費に使っていたのに、いまは10%以下になってしまいました。

彼らは高級な電化製品とかファッションなどにお金を使っています。

でも、月に一万円くらい多くオーガニック食品に払っても、じゅうぶんなメリットがあると思います。

日本では農薬の問題が顕著になってきています。
ネオニコチノイドの規制が日本ではさらに緩和されましたが、ヨーロッパでは規制がかかっています。

両社の違いはなんでしょう?

基本的に農薬の問題は、どこの国でも同じです。
農業に必要とされる量、農業者の健康、そして環境への影響へのバランスで議論されてきました。

農薬や新しい化学肥料の歴史を見てはっきりとわかることがあります。
何か新しい農薬・化学肥料等が出てきたとき、各業者はそれらを積極的に使います。

しかし、ほとんどの場合、人体や環境への影響は不確かです。

そして、
数年使用するうちに、何人もの科学者や専門家たちが危険性を指摘しはじめます。

このようなことは過去を見ても何度もあったことです。

ネオニコチノイドもそうです。

「非常にいい農薬」として業界に登場したものの、何年かすると、
さまざまな生態系へのリスクがあることがわかりました。
そして、欧米では規制がかかりはじめました。

害虫のコントロールは、農薬に頼らずにできることです。
でも生態系への影響のコントロールは難しいんです。

花粉媒介者であるミツバチなどは農業においてとても重要な役割を果たしています。
農薬によって彼らが居なくなると、まったく違う環境になってしまうんです。

長年これについては議論が繰り返されています。
農家から見ても、ネオニコチノイドなしでも農業が可能なことはすでに示されています。

農業者にとってオーガニックへシフトするのは難しいとききます。
特に日本ではすでに出来上がっている農業システムの問題もあり、なかなか有機農業の従事者が増えていかない。

やはり政府の力が重要になります。

オーガニック先進国は政策としてオーガニック農地の拡大をビジョンに掲げ、
実行に向けて実践していることが見受けられます。
一部、大手企業が出資するなどしてそのような事業に投資したりするケースもありますが、
そうした割合よりも圧倒的に国の影響力が大きいです。

今後、オーガニックが日本で拡大するために重要になる要素は?

(1)科学者たちがオーガニックの有効性を証明すること。

自然界で作物が育つためにミツバチなどの花粉媒介者が重要な役割を果たしています。
また、海外では肥料で水が汚染されていたということが発覚し、厳しい規制ができたことがありました。
日本でも科学者の研究が蓄積され、
「オーガニックが環境・健康面ともにより良い影響を及ぼし優れたシステムだ」という発表がされることが大事です。

(2)有機農業従事者の利益を増やすこと。

農業は利益率の還元が少ない産業だといえます。
しかし、政府や企業によるサポートがあれば拡大は可能でしょう。

農家も農薬の危険性については知っています。
その証拠に多くの農家が、自分たちが食べる野菜だけ別にしています。
農薬のかかったほうの野菜を消費者向けに出荷しているのです。

農家も農薬の危険性について理解しているので、サポートさえ得られれば、
オーガニックにしたい人は多いと思いますし、オーガニックの生産は十分に伸びていくと思います。

(3)市民が正しい情報を入手し、オーガニックを選択する。
そして政府や企業に必要性を伝える行動を。

消費者自身が様々な情報収集を行い、オーガニックの食べ物がよいものであると知ることが大切です。
そしてそれを消費者自らが政府や企業に伝えるのです。

オーガニックで、私たちが得られるメリットは食だけではない、

ということです。

家族、自然や土とのつながり、自分の食べものがどこから来るのか。
そうしたことは、私たちに大きな気づきを与えてくれるに違いありません。

自然、とくに食べ物を通じて満足感や幸せが得られる。
これは、科学的にも証明されていることです。

食べ物や植物について自分で調べてみたり、オーガニック農園を訪ねてみて、
どんな風に作られているか見てみるといいです。

オーガニックの可能性は?

オーガニックの未来はすごく明るい。
50、100年以内に必然的に全て有機農家になるのでは。

もっと多くの科学や医者が、オーガニックのほうが健康や環境にいいと伝えるようになるでしょう。
気候変動の真っただ中にいる現在、生態系農業が干ばつや洪水などに対応できる解決策としてオーガニックが挙げられています。

農家の所得が限られている発展途上国にとっても経済的発展を支える大きな可能性を秘めています。
すでにデンマークやブラジルでもそのような傾向が見え始めています。
工業型農業にも投資していますが、オーガニックにも投資しています。

未来に残された無限の可能性を信じて
一つでもふたつでも行動を起こすことが私たちに求められている。

日本でオーガニックが広まらないのは国の政策の問題もあれど、私たち消費者の意識が低いことが問題です。
しかし一人一人の消費者の力だけではどうにもならない問題もあるのだということです。

国全体でオーガニック農業を拡大させ、農薬に頼らない食品の消費量を増やすこと。
農薬大国日本という悲惨な立ち位置を早く抜け出すためには、
同時に政府や国の機関や大手企業からの理解と協力が必要不可欠であるということ。

2016年以降、少しずつオーガニック事業に注目する人や企業が増えてきたように思います。

今後の5年、10年、20年を、あなたはどのような世界で生きていきたいですか?

今の現状へ嘆くのではなく、未来に残された無限の可能性を信じて
一つでもふたつでも行動を起こすことが私たちに求められているのです。


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