記事の長さ:バレンタインバレンタイン

 

 

----------チョコがけハート---オッドアイ猫---チョコがけハート----------

 

 

 
 
 初めてです。角田光代さんの作品を幾つか読んできましたが、初めてです、誰も物理的に逃げ出そうとしなかったのは。
 今まで私が読んできた角田さんの作品は、「逃げ出したい気持ちになって行動を起こしても、現実からは逃げ切れない」といったものでした。
 が、この作品は、逃げ出したい気持ちになっても、誰も逃亡はしなかった。
 かと言って、全ての現実にきちんと向き合っていくことが良いことというわけではない。
 知らないほうがいいこと、知る必要のないこと、回避すべきこと、知りたくても知れないようにできていること――そういうことを受け入れていくことは、「現実逃避」とは違うんだと思いました。
 
 
 ストーリーが、惹き込まれる感じでした。まだどういう物語か分からない、という段階で、ただ7人の主人公の平凡で冴えないありふれた日常が描いてあるだけでも、次へ次へとページを読み進めたくなる感じ。
 あっと驚くような展開、みたいなものはないんだけども。型にはまった「起承転結」みたいなものとも違うんだけども。
 7人のひとりひとりが、現実と向き合いつつ、向き合わなくていいものから回避しつつ、着実に前へ進んでいく。
 「(今までしたことのない)何かを始めるって、今まで存在しなかった世界をひとつ作っちゃうくらい、すごいことだ」という言葉があり、それがとても印象に残りました。
 
 
 
 
 
 
 ここからは、ガチなネタバレになります(笑)
 
 
 
 
 
 7人の主人公に共通しているのが、父親がどこの誰か分からない、精子バンクから提供を受けて生まれてきたこと。
 しかもきちんとした病院じゃなくて。
 遺伝子を買うんです。才能や収入や容姿など、いいものを持っている人の精子は高値が付く。
 それで、自分の子供のためにより良いものを選んだ親の子供たちのお話なんです。
 生まれる前に持っていたものよりも、生まれてきた後に得たもののほうが大事。
 どんなに素晴らしい遺伝子を与えても、それは幸せの保証にはならない。
 生まれてきた後に親はどう愛するか、子は遺伝子関係なしにどう生きていくか。
 父親からしたら、自分の遺伝子を受け継いでいない子供を、しかも自分よりより優れた遺伝子を与えられて生まれてきた子供と、どうやって向き合っていくか。
 なかなか深いテーマでした。
 自分に置き換えるのは難しい内容だけど、前向きな気持ちになれる作品でした!
 
 
 
 
 
 

 

 

 

 

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