そうやって、パピーは僕を褒めてくれた。
素直に嬉しい。
まるでこれを言われたいがために、この会話をしたように見えるが、見間違いだろう。
「……それよりルカ、この子は誰なの?」
と、そこで一人のねっとりと耳に絡みつく女性の声が聞こえた。
「あぁこの子は、パピーっていってね、僕がへっぽこだった頃に出会っ…た…」
まるでロボットの様に、声のする方へ恐る恐る、向くと…。
さり気なく会話に滑り込むように入ってきたのはエルベティエだった。
まさに、スライムだからこそというわけだろか。
どうしてエルベティエがここに…。
「そうか、ここら辺にはウンディーネの泉があったんだ」
もしかしたら、泉の浄化作業をしているのかもしれない。
天使の襲撃を受けた時、エルベティエの同胞が泉に毒を投げてしまったのである。
それから色々あって、反発的だった四天王の一人、エルベティエとも打ち解けた。
というより、アリスの元に使える四天王はとても友好的な魔物が多い。
「ルカ、元気そうで良かったわ……」
「あぁ、うん、心配かけたね、ごめん」
「……とても心配したわ」
じっとりと湿っぽい視線を向けてくるエルベティエに、なんだか寒気がした。
気まづくなって視線をそらす。
「このスライムもルカの知り合いなのか?」
そらした視線の先では、パピーが純粋無垢な瞳で見上げていた。
「あぁ、四天王の一人、エルベティエだよ」
「また四天王なのだ…ルカは顔が広いのだ」
少しだけ怯えている様子。
四天王のうち三人とこの旅で出会ったのなら、もう一人もひょっこり出てきそうだ。
あの狐ならやりかねない。
「……その子は何?」
少しだけ視線が鋭くなったのは気のせいだろう。
きっと。
「僕がまだ駆け出しだった時に出会った子。今は一緒に旅をしてるんだ」
「……そう、私もルカと旅がしたいわ」
でも、ウンディーネの泉を浄化する作業もあるから行けないのとしょんぼりした顔になる。
パピーのことはあまり眼中にないらしい。
「そ、そっか、いつかエルベティエと旅するのもいいかもね」
「……約束」
すごく、外堀を埋められているような気がするのだが…。
そして、今現在、並行して歩いている三人のうち、僕とエルベティエの距離は凄まじく近いのであった。
手を振るたびに、エルベティエの太ももにあたってしまうんじゃないかってぐらい近い…。
「エルベティエ近くない…?」
「……そうかしら」
するとパピーも僕に近づいてきて、もう歩きづらいったら…。
「なんでパピーも!?」
「なんとなく、こうしたかったからだ」
こんなに道は広いのに、僕の左右はぎゅうぎゅうだった。
プランセクト村(ウィンデーネの泉がある村)へ到着すると、虫、植物と商人達が賑やかに行き通っていた。
「ここも、魔物達とうまくやっているいるみたいだね」
「……そう、全てルカのおかげ」
ブルッ。背筋が凍った。
「ここは虫と植物がいっぱいなのだなっ!」
パピーはあまり他では見ない花や虫達に向かっていって。
アルラウネやカイコ娘やスライム娘と一言、二言言葉を交わしたあと
鬼ごっこを始めたようで、僕に手を振ってパピーは走っていった。
「あはは、とても楽しそう」
魔物の種族も人間も関係なく営んでいる。それはとても素晴らしいことだ。
まだ、始まったばかりだけど…。
「エルベティエ、ウィンディーネの泉の浄化作業はまだかかりそうなの?」
「……えぇ、数ヶ月なんてものじゃない、長い年月が必要ね」
「そうか…」
「……自然にできたものなら、浄化も早いのだけれど、強い毒素だから」
「僕もなんとかしたいけど、人間には限界があるからさ。何か協力できることがあったら言ってね」
「……ルカは本当にいい人、でも、スライムの聖地なんて場所。必要なくなるかも」
エルベティエは静かに、優しく笑った。
それが意味するのは、人間や魔物達の協力でスライムの住処が無限に広がっていくということ。
「……ねぇ、ルカ。」
「んっ?」
「……魔物と人間との共存についてねっとり、じっとりと語り合いたいの。一緒に魔王城へ来ない?」
またじっとりと湿っぽい視線を全身に受けてしまう。
「い、いや、僕は今パピーと旅をしているし、ごめんね、遠慮しておくよ」
やんわりと断っておいた。
一緒について行ったら、色々と危険だし、パピーと旅をしているのは事実だしっ!
「……そう、残念。残念だわ」
とはいうものの、残念そうな表情が見えない。
エルベティエの心の内は変わらず読めない。
アルマエルマみたいに表情が豊かであったり、グランベリアみたいに表裏がないのならまだしも…。
「……ルカ、もう日が暮れてきたわ」
見ると、太陽は仕事を終えようとしていた。
「え、もうそんな時間なのか!」
一ヶ月寝込んでいただけあって、体内時計が狂っているのかもしれない。
後、グランベリアとアルマエルマと話しすぎてしまった。
「……今日は泊まっていく?」
「う、うん」
「……じゃあ、私と一緒に…」
「い、いや、そこらへんで野宿するから大丈夫だよっ!!エルベティエに迷惑かけるわけにはいかないからなぁっ!!」
エルベティエから視線をそらして、大きく無理を通すように言う。
頬には冷や汗がだらだらと垂れているが、なんとか誤魔化せただろうか…。
「……そう、わかったわ」
エルベティエは頷いてくれたので、僕のいろんな意味での危機は過ぎ去った。
「……私の体内で寝ればキモチイイのに」
エルベティエが耳を澄ましていなければ聞こえないような声で、そんな爆弾発言をしたのを。
僕は聞こえなかったことにした。
「それよりパピー達は一体どこへ行ったんだ…?」
「……さっきはあっちの方へ向かったはず、ドラゴンパピーだけじゃなくて、アルラウネやスライム娘もいたから、大丈夫だとは思うけど」
この土地に詳しい魔物がいるってことは確かに心強い要素かもしれないが、あの子達だって子供だ。
興味本位で遠くに行ってしまっているかもしれない。
「夜が来る前に探しに行こう。そうじゃないと僕達でも探すことができなくなる」
エルベティエにも伝わったのか、彼女も頷いてくれた。
オレンジ色の光が世界を照らし始めて、空は夕暮れ色。
そんな光すら遮ってしまう、高く生える木々の間を僕は駆け抜けていた。
だめだ、人間の目ではもう暗すぎて探すことができないだろう。
植物達のせいで、早くも暗闇に包まれ始めている周辺。
土から突然何かが形を作り始めて、僕の心臓は飛び出そうになるぐらいギョッとなる。
そして、青いスライムになった。
「え、エルベティエか…。驚かせないでくれよ」
「……ごめんなさい。でも、ドラゴンパピー達の足取りが掴めたの」
「本当に!?あの子達はどこに!?」
暗闇の中でなんとかエルベティエの形をとらえて、食いつく。
「……どうやらあの子達はヤマタイ村に向かってしまったみたい」
「や、ヤマタイ村か、ここからそんな距離もないし、行かないと」
「……待って、もう日が沈みかけてる。どうやら私の同胞もいるみたいだし」
「パピーやスライム娘を置いて夜を越させるなんて、できるわけないじゃないか」
エルベティエは静かに目を瞑って頷いた。
「……ルカならどうせそう言うと思ったわ。でも、ヤマタイ村へ向かう途中で必ず夜が来ちゃう」
「くっ…ミイラ取りがミイラって言いたいんだね」
「……だから私はここにいるのよ。あとは行動に移すのみでしょ?」
と、暗闇の中から僕の体を支えるようにエルベティエ二体目が現れる。
「……行くわよ」
「エルベティエっ!!」
僕は改めて、四天王と出会って良かったと思った。
最初はとても近寄り難かったエルベティエの存在がここまで大きくなろうとは。
エルベティエ達はとても素早く移動をしている、まるで地面との間に水を発生させて地面を滑っているかのように。
「もうすぐヤマタイ村へ着くわ」
という言葉と同時にヤマタイ村らしきものが見えてきた、あたりは夜とはいかないものの、薄暗くなりつつある。
街の中のように街灯がないここらへんはすぐに暗闇に包まれ始めてしまう。
「ん、あれは…?」
狐の耳と尻尾を生やした人物が道路を塞ぐように立っていた。
「おぉ、来たようじゃな」
近づいてみると、暗闇に中の形からはっきりとわかるものがあった。
そこにいたのは四天王の一人、たまも。
まるで僕たちが来るのをわかっていたかのような台詞を言う。
「……たまも、どうしたのかしら?」
たまもの前で下ろしてもらうと、エルベティエ二体目は本体へ戻っていった。
どういう原理、なのかな?
「うむ、この村へ迷い込んだ魔物が二人おってな、とりあえず保護したのじゃが…」
「ほ、本当かたまも!?」
「……たまも、それはスライム娘とドラゴンパピーなのかしら?」
脳みそがヒートしている僕とは違って、エルベティエは冷静に今の状況を掴み取ろうとしている。
そのエルベティエの姿に、僕も少しだけ冷静になれた。
「そうじゃ、近くの山に入ったまま帰ってこないから心配してウチ達が見に行ったのじゃが」
「そ、それで?」
とりあえずドラゴンパピー達がたまもに保護されたということだけでもホッと安堵することであった。
「ルカ、安心するのはまだ早いのじゃ。どうやらドラゴンパピーの方は何かしらの病にかかっているようじゃ」
「や、病だって…?」
今までそんな素振りすら見せなかったはず、いや、我慢していたのか?
でも、彼女の体調なら顔を見ればすぐにわかるはず。
あの子は隠すことなんてとっても下手なんだ。つらいことがあればすぐに表情に出てしまう。
「どこからか、菌を持ってきてしまったのか…?」
「怪しいのはプランセクト村じゃが、その話は後にするとしよう、今はドラゴンパピーの傍にいてやってほしいのじゃ」
僕が頷くと、パピーが寝かされている病室へ急いだ。
この村唯一の病室の一室に、パピーが顔を真っ赤に上気させて寝かされていた。
その体を包み込むようにスライム娘が隣で寝ていた。
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次回、事態の急変。
素直に嬉しい。
まるでこれを言われたいがために、この会話をしたように見えるが、見間違いだろう。
「……それよりルカ、この子は誰なの?」
と、そこで一人のねっとりと耳に絡みつく女性の声が聞こえた。
「あぁこの子は、パピーっていってね、僕がへっぽこだった頃に出会っ…た…」
まるでロボットの様に、声のする方へ恐る恐る、向くと…。
さり気なく会話に滑り込むように入ってきたのはエルベティエだった。
まさに、スライムだからこそというわけだろか。
どうしてエルベティエがここに…。
「そうか、ここら辺にはウンディーネの泉があったんだ」
もしかしたら、泉の浄化作業をしているのかもしれない。
天使の襲撃を受けた時、エルベティエの同胞が泉に毒を投げてしまったのである。
それから色々あって、反発的だった四天王の一人、エルベティエとも打ち解けた。
というより、アリスの元に使える四天王はとても友好的な魔物が多い。
「ルカ、元気そうで良かったわ……」
「あぁ、うん、心配かけたね、ごめん」
「……とても心配したわ」
じっとりと湿っぽい視線を向けてくるエルベティエに、なんだか寒気がした。
気まづくなって視線をそらす。
「このスライムもルカの知り合いなのか?」
そらした視線の先では、パピーが純粋無垢な瞳で見上げていた。
「あぁ、四天王の一人、エルベティエだよ」
「また四天王なのだ…ルカは顔が広いのだ」
少しだけ怯えている様子。
四天王のうち三人とこの旅で出会ったのなら、もう一人もひょっこり出てきそうだ。
あの狐ならやりかねない。
「……その子は何?」
少しだけ視線が鋭くなったのは気のせいだろう。
きっと。
「僕がまだ駆け出しだった時に出会った子。今は一緒に旅をしてるんだ」
「……そう、私もルカと旅がしたいわ」
でも、ウンディーネの泉を浄化する作業もあるから行けないのとしょんぼりした顔になる。
パピーのことはあまり眼中にないらしい。
「そ、そっか、いつかエルベティエと旅するのもいいかもね」
「……約束」
すごく、外堀を埋められているような気がするのだが…。
そして、今現在、並行して歩いている三人のうち、僕とエルベティエの距離は凄まじく近いのであった。
手を振るたびに、エルベティエの太ももにあたってしまうんじゃないかってぐらい近い…。
「エルベティエ近くない…?」
「……そうかしら」
するとパピーも僕に近づいてきて、もう歩きづらいったら…。
「なんでパピーも!?」
「なんとなく、こうしたかったからだ」
こんなに道は広いのに、僕の左右はぎゅうぎゅうだった。
プランセクト村(ウィンデーネの泉がある村)へ到着すると、虫、植物と商人達が賑やかに行き通っていた。
「ここも、魔物達とうまくやっているいるみたいだね」
「……そう、全てルカのおかげ」
ブルッ。背筋が凍った。
「ここは虫と植物がいっぱいなのだなっ!」
パピーはあまり他では見ない花や虫達に向かっていって。
アルラウネやカイコ娘やスライム娘と一言、二言言葉を交わしたあと
鬼ごっこを始めたようで、僕に手を振ってパピーは走っていった。
「あはは、とても楽しそう」
魔物の種族も人間も関係なく営んでいる。それはとても素晴らしいことだ。
まだ、始まったばかりだけど…。
「エルベティエ、ウィンディーネの泉の浄化作業はまだかかりそうなの?」
「……えぇ、数ヶ月なんてものじゃない、長い年月が必要ね」
「そうか…」
「……自然にできたものなら、浄化も早いのだけれど、強い毒素だから」
「僕もなんとかしたいけど、人間には限界があるからさ。何か協力できることがあったら言ってね」
「……ルカは本当にいい人、でも、スライムの聖地なんて場所。必要なくなるかも」
エルベティエは静かに、優しく笑った。
それが意味するのは、人間や魔物達の協力でスライムの住処が無限に広がっていくということ。
「……ねぇ、ルカ。」
「んっ?」
「……魔物と人間との共存についてねっとり、じっとりと語り合いたいの。一緒に魔王城へ来ない?」
またじっとりと湿っぽい視線を全身に受けてしまう。
「い、いや、僕は今パピーと旅をしているし、ごめんね、遠慮しておくよ」
やんわりと断っておいた。
一緒について行ったら、色々と危険だし、パピーと旅をしているのは事実だしっ!
「……そう、残念。残念だわ」
とはいうものの、残念そうな表情が見えない。
エルベティエの心の内は変わらず読めない。
アルマエルマみたいに表情が豊かであったり、グランベリアみたいに表裏がないのならまだしも…。
「……ルカ、もう日が暮れてきたわ」
見ると、太陽は仕事を終えようとしていた。
「え、もうそんな時間なのか!」
一ヶ月寝込んでいただけあって、体内時計が狂っているのかもしれない。
後、グランベリアとアルマエルマと話しすぎてしまった。
「……今日は泊まっていく?」
「う、うん」
「……じゃあ、私と一緒に…」
「い、いや、そこらへんで野宿するから大丈夫だよっ!!エルベティエに迷惑かけるわけにはいかないからなぁっ!!」
エルベティエから視線をそらして、大きく無理を通すように言う。
頬には冷や汗がだらだらと垂れているが、なんとか誤魔化せただろうか…。
「……そう、わかったわ」
エルベティエは頷いてくれたので、僕のいろんな意味での危機は過ぎ去った。
「……私の体内で寝ればキモチイイのに」
エルベティエが耳を澄ましていなければ聞こえないような声で、そんな爆弾発言をしたのを。
僕は聞こえなかったことにした。
「それよりパピー達は一体どこへ行ったんだ…?」
「……さっきはあっちの方へ向かったはず、ドラゴンパピーだけじゃなくて、アルラウネやスライム娘もいたから、大丈夫だとは思うけど」
この土地に詳しい魔物がいるってことは確かに心強い要素かもしれないが、あの子達だって子供だ。
興味本位で遠くに行ってしまっているかもしれない。
「夜が来る前に探しに行こう。そうじゃないと僕達でも探すことができなくなる」
エルベティエにも伝わったのか、彼女も頷いてくれた。
オレンジ色の光が世界を照らし始めて、空は夕暮れ色。
そんな光すら遮ってしまう、高く生える木々の間を僕は駆け抜けていた。
だめだ、人間の目ではもう暗すぎて探すことができないだろう。
植物達のせいで、早くも暗闇に包まれ始めている周辺。
土から突然何かが形を作り始めて、僕の心臓は飛び出そうになるぐらいギョッとなる。
そして、青いスライムになった。
「え、エルベティエか…。驚かせないでくれよ」
「……ごめんなさい。でも、ドラゴンパピー達の足取りが掴めたの」
「本当に!?あの子達はどこに!?」
暗闇の中でなんとかエルベティエの形をとらえて、食いつく。
「……どうやらあの子達はヤマタイ村に向かってしまったみたい」
「や、ヤマタイ村か、ここからそんな距離もないし、行かないと」
「……待って、もう日が沈みかけてる。どうやら私の同胞もいるみたいだし」
「パピーやスライム娘を置いて夜を越させるなんて、できるわけないじゃないか」
エルベティエは静かに目を瞑って頷いた。
「……ルカならどうせそう言うと思ったわ。でも、ヤマタイ村へ向かう途中で必ず夜が来ちゃう」
「くっ…ミイラ取りがミイラって言いたいんだね」
「……だから私はここにいるのよ。あとは行動に移すのみでしょ?」
と、暗闇の中から僕の体を支えるようにエルベティエ二体目が現れる。
「……行くわよ」
「エルベティエっ!!」
僕は改めて、四天王と出会って良かったと思った。
最初はとても近寄り難かったエルベティエの存在がここまで大きくなろうとは。
エルベティエ達はとても素早く移動をしている、まるで地面との間に水を発生させて地面を滑っているかのように。
「もうすぐヤマタイ村へ着くわ」
という言葉と同時にヤマタイ村らしきものが見えてきた、あたりは夜とはいかないものの、薄暗くなりつつある。
街の中のように街灯がないここらへんはすぐに暗闇に包まれ始めてしまう。
「ん、あれは…?」
狐の耳と尻尾を生やした人物が道路を塞ぐように立っていた。
「おぉ、来たようじゃな」
近づいてみると、暗闇に中の形からはっきりとわかるものがあった。
そこにいたのは四天王の一人、たまも。
まるで僕たちが来るのをわかっていたかのような台詞を言う。
「……たまも、どうしたのかしら?」
たまもの前で下ろしてもらうと、エルベティエ二体目は本体へ戻っていった。
どういう原理、なのかな?
「うむ、この村へ迷い込んだ魔物が二人おってな、とりあえず保護したのじゃが…」
「ほ、本当かたまも!?」
「……たまも、それはスライム娘とドラゴンパピーなのかしら?」
脳みそがヒートしている僕とは違って、エルベティエは冷静に今の状況を掴み取ろうとしている。
そのエルベティエの姿に、僕も少しだけ冷静になれた。
「そうじゃ、近くの山に入ったまま帰ってこないから心配してウチ達が見に行ったのじゃが」
「そ、それで?」
とりあえずドラゴンパピー達がたまもに保護されたということだけでもホッと安堵することであった。
「ルカ、安心するのはまだ早いのじゃ。どうやらドラゴンパピーの方は何かしらの病にかかっているようじゃ」
「や、病だって…?」
今までそんな素振りすら見せなかったはず、いや、我慢していたのか?
でも、彼女の体調なら顔を見ればすぐにわかるはず。
あの子は隠すことなんてとっても下手なんだ。つらいことがあればすぐに表情に出てしまう。
「どこからか、菌を持ってきてしまったのか…?」
「怪しいのはプランセクト村じゃが、その話は後にするとしよう、今はドラゴンパピーの傍にいてやってほしいのじゃ」
僕が頷くと、パピーが寝かされている病室へ急いだ。
この村唯一の病室の一室に、パピーが顔を真っ赤に上気させて寝かされていた。
その体を包み込むようにスライム娘が隣で寝ていた。
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次回、事態の急変。