おもむろに紅魔館を飛び出して、長く続く舗道されていない道を走っていた。
むしゃくしゃしていて、考えたくなかった。
「うわっっ!?」
俯き加減で走っていたせいだろうか、俺は何かに落ちるような感覚。
目の前は真っ暗。
「・・・落とし穴・・・」
頭上には青く澄んだ空を見えた。
「・・・こんなことするのは、あいつらか!」
「へーん、どうだい!あたいの罠に引っかかる気分は!!」
腰に手をあてて、勝ち誇った顔をするチルノが立っていた。
「・・・」
俺みたいな状況になっても、チルノは笑顔でいられるだろうか。
そんな疑問が沸いて来て、笑顔でいるチルノが羨ましくなったのだ。
「・・・つまらない反応!!しょーもない人間だわぁ」
そう言って、俺のもとへ手を差し出した。
「えっ?」
「ほら、あたいが手を貸してやるってんだから、さっさと上がってきなさいよ」
俺はすぐに手を掴んで、落とし穴から這い上がってきた。
彼女の手はとても冷たかったけど、妙に温かい春の空気を浴びた俺にとって、心地よい冷たさだった。
「あ、ありがとう・・・」
「落としたのあたいなのに、礼を言うなんておかしな人間だわ」
俺をバカにしたように言うチルノ。
それでも無反応なのに飽きたのか、チルノは近くの湖に足をつけて座ってしまった。
「今日はあついわぁ~・・・やっぱり湖が一番」
そういって、チルノは青空を見上げる。
「神無、何かあったのか?」
見上げたまま、チルノは聞いてくる。
「俺・・・君に名前言った事あったっけ?」
「あんたの噂はあたいでも耳にしてるし・・・」
「そうか」
俺は湖に足をつけないものの、近くに座った。
「で、何かあったのか?以前はいい反応してくれたのに」
ブスッとした顔でチルノは言う。
自分のボケを突っ込んで欲しかったのだろうか。
それとも、オーバーリアクションでもしてほしかったのか。
何がともあれ、今の俺にはそんな気力はなかった。
悩み苦しむという言葉が本当に似合っている。
自分が歩んできた人生の中で、一番の難関・・・。
「つめたっ!」
突然の感触に驚いてしまう。
「熱でもあるの?ボーとしちゃってさ」
チルノは俺のでこに、その冷たい手を当てていた。
「ないよ。ただ・・・ちょっと悩んでることがあるんだ」
「ふふん、そこまで言われたら、あたいが相談にのるしかないね!!」
「まだ、何も言ってないけど・・・」
そういいながらも、俺は内心ホッとしていた。
いつも通り接してくれるのが、とても嬉しかったのだ。
「細かいことは気にしない!!さぁ、どっからでもかかってきなしぁい!!」
かっこよく決めたチルノであったが、最後、噛んでしまったのが誰が聞いていてもわかった。
多分、文章で見ても誰もが「噛んだ」ってわかる。
思わないボケに俺はつい笑ってしまう。
「い、今のはわざと・・!わぁーざぁーと!!」
「嘘つけ」
「ははは」と笑う俺を見て、チルノは誇らしげに頷く。
「いつも通りに戻ったねぇ!あたいの策略にはまったってこと」
それが本当かどうかもわからなかったが。
「やられたな・・・」
悪い気はしなかった。
「チルノ・・・あのさ」
「ん?」
チルノは俺の詳しい事情を知らない。
だからこそ、この相談を出来るんだ。
少し抜けているところがあると思っていたけど、思わぬところは鋭いのかもしれない。
「チルノはさ・・・自分の家族が異国の地へ旅立つ時、一緒に行くか?」
「あたい、家族いないからよくわかんない」
「じゃあ、友人でも親友でもいい・・・。その地にはいっぱい大切な友達がいるのに、チルノは異国の地へ親友と出向くことができるか?」
チルノは黙って俺を見つめる。
「あたいには難しくてわかんない」
そう、抜けているところをさらけ出したチルノ。
「ははっ」
でも、チルノらしいと思った。
「でも・・・・たくさん、選択するものがあるのなら、あたいの信じる道へ進むと思う」
チルノはかっこいいセリフを残して、俺は気付く。
何やってんだろ・・・人に判断なんて任せても仕方が無い。
これはチルノの問題ではなくて、俺の問題なんだ。
俺が信じて出した結論が、きっと俺の道なんだ。
「あっ、神無」
背後から声を掛けられて振り向くと。
そこにはミスティアが立っていた。
「どうしたの浮かない顔して?」
「ううん、なんでもない」
俺は立ち上がって、紅魔館への道を遠い目で見る。
「チルノちゃん、神無と何話してたの?」
「恋愛相談受けてた」
「ええええっ!?かかか神無!一体、誰のことを相談してたの!?」
すごいスピードで(ビュンッていう音が聞こえるほど)俺の方向へ向き直るミスティア。
「嘘嘘!そのチルノのいやらしい笑みを見ろ!」
指差したチルノの顔は普通の表情に戻ったものの、目は素晴らしいほど泳いでいた。
「もぉ~、びっくりしたぁ!・・・心臓止まるかと思ったよぉ」
「そんなオーバーな・・・」
「じゃ、ミスティアちゃん、遊びにいこー」
「うん、今日はどこいくの?」
「あっちの森林で面白いモノみっけたんだぁ・・・」
そう言って、二人は俺が行こうとする道の反対方向へと歩いて行く。
「あっ、神無!またねー」「神無、また」
「あぁ、さような・・・」
俺は元気良く振っていた手を見つめる
さようなら・・・。
なんで、俺はさようならなんて言ったのだろうか。
もう会えないことがわかっているから・・・だろうか。
だとしたら、俺が信じる道というのは・・・。
「・・・そっか」
俺も紅魔館へ戻るとするか。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「あ、お兄ちゃん!!」
紅魔館へ戻り、案内してもらった寝室へ向かっていると杏に出会った。
「お兄ちゃん・・・」
とことこと走ってきて、俺をマジマジと見る。
「どう・・・するの?」
先ほどとは違い、杏の瞳には期待と不安が入り混じっていた。
「俺は・・・」
「神無ぁぁぁぁぁ!!」
突然、後ろから強い衝撃が加わった。
その衝撃に何とか耐えながら振り向くと・・・。
「え、あ、フラン」
「ねーねー!フランと一緒に遊ぼうよ!」
フランは、今の状況を理解しているのか、していないのかわからないけど。
とっても、嬉しそうな顔をしていた。
「・・・そうだね、一緒に遊ぼうか」
何かが吹っ切れたように、俺は笑顔になった。
「うんっ!!」
手を繋いで、外に出ようとすると、レミリアがそれを止めた。
「ちょっとフラン!あんたは吸血鬼なんだから、こんな昼間に外出たら、焼け死んじゃうわよ」
「え?でも・・・痛くもかゆくもないけど?」
すでに開けてしまった扉から零れ落ちる日光にあたっているフラン。
「ええっ!?どどど、どうしてよ!?あたしは肌が荒れちゃうっていうのにぃぃ・・・」
むむっと嫉妬するレミリア。
「お姉ちゃんが弱いからじゃない?」
くすっと姉を笑う。
「な、何を・・・!?妹の分際で許さないわ」
「きゃはは」と笑って姉妹の追いかけっこが始まった。
姉と妹が同等のレベルだなんて・・・。
俺が遊び相手になるまでもなく、館の主人が遊び相手になった。
本当に大丈夫かこの館の主。
「あ、神無~、ちょと、書庫の整理手伝ってもらえないかしら?」
入ったことの無い扉から出てきたパチュリーが、俺を呼んだ。
「あぁ・・・いいよ。力仕事は男の役割だし」
「ありがたいわ~」
すると、外へと向かう扉が開いて、咲夜に引きずられた美鈴が入ってきた。
「ひぇ~・・・ねね、寝てたわけじゃなくてですね!!その・・・侵入者との戦いをイメージトレーニングしていたというか・・」
「もうあなたの言い訳は聞き飽きたわ。こっち来なさい、一日説教よ」
「ふぇ~~、か、神無・・・助けてよぉ~」
「・・・頑張れ」
俺がどうしても、咲夜さんに俺が殺されます。
「そんなぁぁ~・・・いやぁぁぁぁ!」
グッドラックポーズを取ると同時に、美鈴はどこかの扉へ消えていった。
それにしても、扉がやたら多いな・・・。
「いつも通りの光景だわ」
「そ、そうなんだ・・・」
そういえば、俺が侵入してきた時も、居眠りしていたっけな。
「じゃあ、私について来て」
「うぃ~、って、こここんなでかい図書館があったのか」
「うん、そうよ。ここで魔法の研究とかやってるの」
「あぁ・・・だから魔理沙が盗んでったりするんだな・・」
「そうね」
しかも、魔法の研究だなんて、さすが魔法使いだな。
それを盗む魔理沙も魔法使いってことか。
「じゃあ、そこの本と、そっちの本をこっちへ持ってって」
「い、意外に分厚いな」
「頑張ってね。力仕事は男の役割でしょ?」
「あぁ、まぁ、頑張る」
しぶしぶ、分厚い本を両手に持って、指示された棚へ運ぶ。
「・・・」
そんな姿を見ていた。
一人の少女。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
紅魔館の住人達とのやり取りは時間の経過を忘れさせ、俺は今、寝室にいる。
一人ぼっちの寝室は、紅魔館のような賑やかなところとは隔離されているように思えた。
「・・・どうしたんだろ、本当」
ベッドに座りながら、地面を見つめる。
今日は色んな妖怪と接した。
いつにもまして、多い妖怪と・・・。
静かな空間は、思想を無駄に巡らせてくれる。
「・・・なんとなく、わかってんだよな、俺」
そう言って、俺は眠れそうにない精神のまま、ベッドへ横たわった。
むしゃくしゃしていて、考えたくなかった。
「うわっっ!?」
俯き加減で走っていたせいだろうか、俺は何かに落ちるような感覚。
目の前は真っ暗。
「・・・落とし穴・・・」
頭上には青く澄んだ空を見えた。
「・・・こんなことするのは、あいつらか!」
「へーん、どうだい!あたいの罠に引っかかる気分は!!」
腰に手をあてて、勝ち誇った顔をするチルノが立っていた。
「・・・」
俺みたいな状況になっても、チルノは笑顔でいられるだろうか。
そんな疑問が沸いて来て、笑顔でいるチルノが羨ましくなったのだ。
「・・・つまらない反応!!しょーもない人間だわぁ」
そう言って、俺のもとへ手を差し出した。
「えっ?」
「ほら、あたいが手を貸してやるってんだから、さっさと上がってきなさいよ」
俺はすぐに手を掴んで、落とし穴から這い上がってきた。
彼女の手はとても冷たかったけど、妙に温かい春の空気を浴びた俺にとって、心地よい冷たさだった。
「あ、ありがとう・・・」
「落としたのあたいなのに、礼を言うなんておかしな人間だわ」
俺をバカにしたように言うチルノ。
それでも無反応なのに飽きたのか、チルノは近くの湖に足をつけて座ってしまった。
「今日はあついわぁ~・・・やっぱり湖が一番」
そういって、チルノは青空を見上げる。
「神無、何かあったのか?」
見上げたまま、チルノは聞いてくる。
「俺・・・君に名前言った事あったっけ?」
「あんたの噂はあたいでも耳にしてるし・・・」
「そうか」
俺は湖に足をつけないものの、近くに座った。
「で、何かあったのか?以前はいい反応してくれたのに」
ブスッとした顔でチルノは言う。
自分のボケを突っ込んで欲しかったのだろうか。
それとも、オーバーリアクションでもしてほしかったのか。
何がともあれ、今の俺にはそんな気力はなかった。
悩み苦しむという言葉が本当に似合っている。
自分が歩んできた人生の中で、一番の難関・・・。
「つめたっ!」
突然の感触に驚いてしまう。
「熱でもあるの?ボーとしちゃってさ」
チルノは俺のでこに、その冷たい手を当てていた。
「ないよ。ただ・・・ちょっと悩んでることがあるんだ」
「ふふん、そこまで言われたら、あたいが相談にのるしかないね!!」
「まだ、何も言ってないけど・・・」
そういいながらも、俺は内心ホッとしていた。
いつも通り接してくれるのが、とても嬉しかったのだ。
「細かいことは気にしない!!さぁ、どっからでもかかってきなしぁい!!」
かっこよく決めたチルノであったが、最後、噛んでしまったのが誰が聞いていてもわかった。
多分、文章で見ても誰もが「噛んだ」ってわかる。
思わないボケに俺はつい笑ってしまう。
「い、今のはわざと・・!わぁーざぁーと!!」
「嘘つけ」
「ははは」と笑う俺を見て、チルノは誇らしげに頷く。
「いつも通りに戻ったねぇ!あたいの策略にはまったってこと」
それが本当かどうかもわからなかったが。
「やられたな・・・」
悪い気はしなかった。
「チルノ・・・あのさ」
「ん?」
チルノは俺の詳しい事情を知らない。
だからこそ、この相談を出来るんだ。
少し抜けているところがあると思っていたけど、思わぬところは鋭いのかもしれない。
「チルノはさ・・・自分の家族が異国の地へ旅立つ時、一緒に行くか?」
「あたい、家族いないからよくわかんない」
「じゃあ、友人でも親友でもいい・・・。その地にはいっぱい大切な友達がいるのに、チルノは異国の地へ親友と出向くことができるか?」
チルノは黙って俺を見つめる。
「あたいには難しくてわかんない」
そう、抜けているところをさらけ出したチルノ。
「ははっ」
でも、チルノらしいと思った。
「でも・・・・たくさん、選択するものがあるのなら、あたいの信じる道へ進むと思う」
チルノはかっこいいセリフを残して、俺は気付く。
何やってんだろ・・・人に判断なんて任せても仕方が無い。
これはチルノの問題ではなくて、俺の問題なんだ。
俺が信じて出した結論が、きっと俺の道なんだ。
「あっ、神無」
背後から声を掛けられて振り向くと。
そこにはミスティアが立っていた。
「どうしたの浮かない顔して?」
「ううん、なんでもない」
俺は立ち上がって、紅魔館への道を遠い目で見る。
「チルノちゃん、神無と何話してたの?」
「恋愛相談受けてた」
「ええええっ!?かかか神無!一体、誰のことを相談してたの!?」
すごいスピードで(ビュンッていう音が聞こえるほど)俺の方向へ向き直るミスティア。
「嘘嘘!そのチルノのいやらしい笑みを見ろ!」
指差したチルノの顔は普通の表情に戻ったものの、目は素晴らしいほど泳いでいた。
「もぉ~、びっくりしたぁ!・・・心臓止まるかと思ったよぉ」
「そんなオーバーな・・・」
「じゃ、ミスティアちゃん、遊びにいこー」
「うん、今日はどこいくの?」
「あっちの森林で面白いモノみっけたんだぁ・・・」
そう言って、二人は俺が行こうとする道の反対方向へと歩いて行く。
「あっ、神無!またねー」「神無、また」
「あぁ、さような・・・」
俺は元気良く振っていた手を見つめる
さようなら・・・。
なんで、俺はさようならなんて言ったのだろうか。
もう会えないことがわかっているから・・・だろうか。
だとしたら、俺が信じる道というのは・・・。
「・・・そっか」
俺も紅魔館へ戻るとするか。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「あ、お兄ちゃん!!」
紅魔館へ戻り、案内してもらった寝室へ向かっていると杏に出会った。
「お兄ちゃん・・・」
とことこと走ってきて、俺をマジマジと見る。
「どう・・・するの?」
先ほどとは違い、杏の瞳には期待と不安が入り混じっていた。
「俺は・・・」
「神無ぁぁぁぁぁ!!」
突然、後ろから強い衝撃が加わった。
その衝撃に何とか耐えながら振り向くと・・・。
「え、あ、フラン」
「ねーねー!フランと一緒に遊ぼうよ!」
フランは、今の状況を理解しているのか、していないのかわからないけど。
とっても、嬉しそうな顔をしていた。
「・・・そうだね、一緒に遊ぼうか」
何かが吹っ切れたように、俺は笑顔になった。
「うんっ!!」
手を繋いで、外に出ようとすると、レミリアがそれを止めた。
「ちょっとフラン!あんたは吸血鬼なんだから、こんな昼間に外出たら、焼け死んじゃうわよ」
「え?でも・・・痛くもかゆくもないけど?」
すでに開けてしまった扉から零れ落ちる日光にあたっているフラン。
「ええっ!?どどど、どうしてよ!?あたしは肌が荒れちゃうっていうのにぃぃ・・・」
むむっと嫉妬するレミリア。
「お姉ちゃんが弱いからじゃない?」
くすっと姉を笑う。
「な、何を・・・!?妹の分際で許さないわ」
「きゃはは」と笑って姉妹の追いかけっこが始まった。
姉と妹が同等のレベルだなんて・・・。
俺が遊び相手になるまでもなく、館の主人が遊び相手になった。
本当に大丈夫かこの館の主。
「あ、神無~、ちょと、書庫の整理手伝ってもらえないかしら?」
入ったことの無い扉から出てきたパチュリーが、俺を呼んだ。
「あぁ・・・いいよ。力仕事は男の役割だし」
「ありがたいわ~」
すると、外へと向かう扉が開いて、咲夜に引きずられた美鈴が入ってきた。
「ひぇ~・・・ねね、寝てたわけじゃなくてですね!!その・・・侵入者との戦いをイメージトレーニングしていたというか・・」
「もうあなたの言い訳は聞き飽きたわ。こっち来なさい、一日説教よ」
「ふぇ~~、か、神無・・・助けてよぉ~」
「・・・頑張れ」
俺がどうしても、咲夜さんに俺が殺されます。
「そんなぁぁ~・・・いやぁぁぁぁ!」
グッドラックポーズを取ると同時に、美鈴はどこかの扉へ消えていった。
それにしても、扉がやたら多いな・・・。
「いつも通りの光景だわ」
「そ、そうなんだ・・・」
そういえば、俺が侵入してきた時も、居眠りしていたっけな。
「じゃあ、私について来て」
「うぃ~、って、こここんなでかい図書館があったのか」
「うん、そうよ。ここで魔法の研究とかやってるの」
「あぁ・・・だから魔理沙が盗んでったりするんだな・・」
「そうね」
しかも、魔法の研究だなんて、さすが魔法使いだな。
それを盗む魔理沙も魔法使いってことか。
「じゃあ、そこの本と、そっちの本をこっちへ持ってって」
「い、意外に分厚いな」
「頑張ってね。力仕事は男の役割でしょ?」
「あぁ、まぁ、頑張る」
しぶしぶ、分厚い本を両手に持って、指示された棚へ運ぶ。
「・・・」
そんな姿を見ていた。
一人の少女。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
紅魔館の住人達とのやり取りは時間の経過を忘れさせ、俺は今、寝室にいる。
一人ぼっちの寝室は、紅魔館のような賑やかなところとは隔離されているように思えた。
「・・・どうしたんだろ、本当」
ベッドに座りながら、地面を見つめる。
今日は色んな妖怪と接した。
いつにもまして、多い妖怪と・・・。
静かな空間は、思想を無駄に巡らせてくれる。
「・・・なんとなく、わかってんだよな、俺」
そう言って、俺は眠れそうにない精神のまま、ベッドへ横たわった。