光が見えて、気がつけば。
高くそびえる…山だった。
俺の予想していた高くそびえる館ではない。
「あ、あれ…?ここって、妖怪の山とか言ったよな」
幻想郷は今日も晴れているけれど、山のてっぺんまではよく見えない。
それほど、でかい。
「うーん……。どうしたものか」
今更紫に文句を言っても仕方ないし、ここから紅魔館…ねぇ。
以前、橙と迷ってしまった悪夢が蘇る。
しょうがない、ここから行くしかないかぁ。
幻想郷の地形図はイメージできないが、遠いことはなんとなくわかる。
「まだ、朝だからな」
時間はある。
妖怪の山とは逆方向の森へ歩いていこうとする…と、見たことあるような…二人の妖怪が歩いてきた。
「朱鷺子ちゃん、あの人と仲良くしたいの?」
そう言葉を発した妖怪は……脳裏に今でもはっきりと焼きついている。
幻想郷初日で恐怖を植え付けれてくれた妖怪。
「うん、あの人はすごく色々な知識があるから…話してて楽しいの」
そして、片方は、魔法の森とかいうところで出会った妖怪。
どちらも名前が不明である。
「そっかぁ…男の人って幻想郷に少ないから、あまりそういうことわからないなぁ…」
「そうね…人間でしかも男だから、更にわからないわねぇ…」
二人はそれぞれの思いに浸り、俺の前を通り過ぎる瞬間、展開が読めそうな言葉をこぼした。
「人間の男……どこかにいないかな」
「男の人がいてくれれば、色々と聞きたいんだけどなぁ」
眉を潜める。
この場から去ったほうが良いという警告が脳内に再生された。
これは正直に、妖怪の山へ入った方が良さそうだな。
二人に背を向けて妖怪の山へ入ろうとすると、続いて…耳と尻尾をつけた妖怪が降りてきた。
「そこの人間、ここの山に気安く入らない方がいいですよ」
俺と距離を離して着地した妖怪が、そう言った。
「…君は?」
「ふむ…初対面ですか。私は犬走椛と言います。この山の警備隊をしているものです」
「そうか、俺は白鳥神無だ。まぁ…警告ありがとう。だけど、この山には来たことあるし、大丈夫だと思うけど」
というものの、言った事あるのは頂上だけで、山の森林には一歩も入ったことがなかった。
ま、まぁ・・・朝だし、頂上には着くはずだ。
それとも、文にでも頼んで頂上まで乗せてもらおうかなぁ。
見返りに記事にされてしまうけど。
…そういえば、俺ってもう記事にされているんだよ、ね?
「そうですか」
椛は首を横に振った。
「でも、この山の中には多くの妖怪が存在しますから、気をつけたほうがいいですよ」
「…わかった。ところで、文という妖怪を知っているか?」
「あぁ…射命丸文さんのことですか?」
「そうそう、そのことなんだが…そのしゃ、しゃめいま、る?文んとこの新聞に俺の記事が載ったりしていなかったか?」
なんとも不思議な名前である
シャメイマルアヤ
椛は手を強く打った。
「あぁ~!!もしかして、あの記事に書いてあった、男の人間が、白鳥神無さんだったんですね」
「あ、あの記事って…」
嫌な予感しかしない、あいつ、何書いたんだ?
「見てないんですか?一時期は有名だったんですよ。その人間がどこにいるか探し回ったりしてました」
それはマジで有名人だな。
八雲家がこの地から少しばかり離れていてよかった。
「ほぅ、どんな記事なんだよ?」
「その人間の手を握ると、幸運を呼ぶ…といった感じです」
そりゃ、読者にとっちゃとても目につくタイトルだな。
手を握るぐらいで幸運が舞い込んでくるんだったらみんなして握手しにくるよ。
俺だってそうすると思う。
「見つからならなくて良かった…。もうそのブームは終わったんだろ?」
「はい、その人間っていうものが見つからなかったため、ガセとして処理されました」
紫が住んでいるところってやっぱり、誰にも見つからないようにできてるんだな。
「新聞に書かれたことが本当かどうか、確かめさせてもらってもいいですか?」
申し訳なさそうな顔をしながら「えへへ・・・」と言うものの、手はすでに俺の方へ伸びていた。
先ほど、俺を注意していた警備隊としての顔ではなくて、もうすでに個人的な感情で動いているのがわかった。
「いや、てゆうか嘘だか」
「わかっていますよ!ためしです、ためし~!」」
友人になった証みたいに、軽い握手を交わすと、椛は静かに目をつぶる。
「…とっても癒されます…何か、力を持っているんでしょうか?」
なに言ってるんだ…?
俺の手を握って癒されるって一体どういうことだろう。
「さぁ…俺はただの人間だから、そんなのわからないけど」
「そうですか…でも、すごく…嫌なこととかが、吹っ飛んだ気がします」
ほんわかとした表情で椛が言った。
「自分じゃわからないよ……それに、例え俺に力なんてものあっても、必要ないからいらない」
それ以前に力があること自体驚きだ。
いや、でも考えてみれば、俺がこの幻想郷の地へ飛ばされたのも何か、力が関係していると言っていた。
…なんでもいいけど、ややこしいのはごめんだな。
「そうですか?とっても良いことだと思いますよ」
「そう…だな」
手の平を見つめて俺はそう、言葉を濁らせた。
「…じゃ、入っていいかい」
「えぇ、お礼に案内しましょうか?」
「あ、頼めるかな?」
「全然大丈夫です。警備隊とか言ってますけど、普段は将棋とかで時間潰してますから」
それ言っていいの?
椛が案内してくれるそうなので、着いて行こうと一歩足を踏み出した時、後ろから肩を掴まれた。
「人間という言葉が耳に付くと思ったら…あの時のなんぱ男じゃない」
まるで展開が読めていたというか…椛君が大きな声で人間と言ったせいだな…。
振り向くと、先ほど話し合いをしていた妖怪が、俺の肩を掴んでいた。
「あ、あのぉ…白鳥さん!」
もう片方の妖怪の顔を見てから、少しだけ恐怖が渦巻いた。
「うっ…。君、また俺を襲ったりしないよな…」
もう片方の妖怪はトラウマになっている。
「し、しないよ!!大丈夫、もう人を襲ったりしないから、安心して!!」
そう言って、顔を何度も横に振った。
後ろについている赤っぽい羽根が横にぶんぶん揺れている。
「そ、そう…?」
「はい、それで、少し相談があるの…いいかな?」
俺の瞳を見つめてそう言うが、悪い予感しかしない。
「…そういや、俺二人の名前聞いてなかったな」
そう話を逸らしてみる。
「あっ…そうだね…。私はミスティア・ローレライ。これからよろしくね!?」
顔をずずっと近づける。
「あぁ…よろしくな」
一瞬の出来事に、心臓が飛び上がるかと思った。
うーん、やっぱり恐怖心は消えないからやりにくいなぁ。
「あたしは朱鷺子よ。あなたはなんぱ男でいいんでしょ?」
「よくないよ…。白鳥神無ね」
「あっ、神無って言うんだぁ…いい名前だね」
ミスティアがにっこりと微笑む、顔を傾けてそう言う。
「ははっ、ありがと」
…意外に話せる奴かもしれないなぁという簡単な思いを打ち消す。
「あの、白鳥さん…?どうするんですか?」
後ろから椛が声をかけてきた。
「あっそうだった。山まで案内してくれるんだっけ」
色々と文に言ってやりたいことがあるので、妖怪の山へ登るか。
「じゃあ頼もう…」
後ろから威圧感のような重みを感じた。
「犬走さん、この方には用事がありますので、またの機会に」
朱鷺子がそう言う。
「何?逆ナンパなら断るぞ」
先ほどからナンパ男と連発されていたので、朱鷺子に食って掛かってみた。
「んなわけないでしょ!!あたしがあんたみたいな男にナンパすると思った!?」
言ってやりたい、その気持ちが出会った時の俺の気持ちであると!!
「あ、椛、気にしないでくれ、妖怪の山…」
「うるさーぃ!!、あんたに用事があるって言ったでしょ!?さっさと付いてきなさいよ」
「どーせ、くだらん事だろうが」
その言葉を聞いてカチンときたのか。
「ななななな、あたしがすご~く悩んでいるのに、それをくだらない…!?」
俺達は敵対心を燃やし、二人の間にはピリピリと視線の電撃が走っている。
「よくも言ったわね…。これは意地でもあんたを連れて行くわ」
「どうしてそういう結果に至るのか教えてほしいな」
俺達がにらめっこをしているのをよそに、ミスティアは余計なことをしてくれた。
「…ですので」
「あっ、そうですか、わかりました。それでは、白鳥さん。またの機会に」
意味のわからないセリフを残して、椛は山へ消えていった。
「はっ?!」
残された俺から出た言葉は、そういうものだった。
だって、いや、椛がいなければ、俺は路頭に迷うことになってしまうぞ…!
「これで妖怪の山へ入らなくてもいいわね。さぁ…観念しなさい」
これはもう…相談にのったほうが手っ取りはやいのだろうか。
肩を落として、溜息をこぼす。
「仕方ないなぁ…で、相談ってなんだよ?」
「うん、男の人間にしかわからないことなの」
ミスティアが上目遣いでそう言う。
「具体的には?」
「それはあたしから話させてもらうわね!!実言うと…」
朱鷺子は、少しだけ頬を赤らめて説明を始めた。
高くそびえる…山だった。
俺の予想していた高くそびえる館ではない。
「あ、あれ…?ここって、妖怪の山とか言ったよな」
幻想郷は今日も晴れているけれど、山のてっぺんまではよく見えない。
それほど、でかい。
「うーん……。どうしたものか」
今更紫に文句を言っても仕方ないし、ここから紅魔館…ねぇ。
以前、橙と迷ってしまった悪夢が蘇る。
しょうがない、ここから行くしかないかぁ。
幻想郷の地形図はイメージできないが、遠いことはなんとなくわかる。
「まだ、朝だからな」
時間はある。
妖怪の山とは逆方向の森へ歩いていこうとする…と、見たことあるような…二人の妖怪が歩いてきた。
「朱鷺子ちゃん、あの人と仲良くしたいの?」
そう言葉を発した妖怪は……脳裏に今でもはっきりと焼きついている。
幻想郷初日で恐怖を植え付けれてくれた妖怪。
「うん、あの人はすごく色々な知識があるから…話してて楽しいの」
そして、片方は、魔法の森とかいうところで出会った妖怪。
どちらも名前が不明である。
「そっかぁ…男の人って幻想郷に少ないから、あまりそういうことわからないなぁ…」
「そうね…人間でしかも男だから、更にわからないわねぇ…」
二人はそれぞれの思いに浸り、俺の前を通り過ぎる瞬間、展開が読めそうな言葉をこぼした。
「人間の男……どこかにいないかな」
「男の人がいてくれれば、色々と聞きたいんだけどなぁ」
眉を潜める。
この場から去ったほうが良いという警告が脳内に再生された。
これは正直に、妖怪の山へ入った方が良さそうだな。
二人に背を向けて妖怪の山へ入ろうとすると、続いて…耳と尻尾をつけた妖怪が降りてきた。
「そこの人間、ここの山に気安く入らない方がいいですよ」
俺と距離を離して着地した妖怪が、そう言った。
「…君は?」
「ふむ…初対面ですか。私は犬走椛と言います。この山の警備隊をしているものです」
「そうか、俺は白鳥神無だ。まぁ…警告ありがとう。だけど、この山には来たことあるし、大丈夫だと思うけど」
というものの、言った事あるのは頂上だけで、山の森林には一歩も入ったことがなかった。
ま、まぁ・・・朝だし、頂上には着くはずだ。
それとも、文にでも頼んで頂上まで乗せてもらおうかなぁ。
見返りに記事にされてしまうけど。
…そういえば、俺ってもう記事にされているんだよ、ね?
「そうですか」
椛は首を横に振った。
「でも、この山の中には多くの妖怪が存在しますから、気をつけたほうがいいですよ」
「…わかった。ところで、文という妖怪を知っているか?」
「あぁ…射命丸文さんのことですか?」
「そうそう、そのことなんだが…そのしゃ、しゃめいま、る?文んとこの新聞に俺の記事が載ったりしていなかったか?」
なんとも不思議な名前である
シャメイマルアヤ
椛は手を強く打った。
「あぁ~!!もしかして、あの記事に書いてあった、男の人間が、白鳥神無さんだったんですね」
「あ、あの記事って…」
嫌な予感しかしない、あいつ、何書いたんだ?
「見てないんですか?一時期は有名だったんですよ。その人間がどこにいるか探し回ったりしてました」
それはマジで有名人だな。
八雲家がこの地から少しばかり離れていてよかった。
「ほぅ、どんな記事なんだよ?」
「その人間の手を握ると、幸運を呼ぶ…といった感じです」
そりゃ、読者にとっちゃとても目につくタイトルだな。
手を握るぐらいで幸運が舞い込んでくるんだったらみんなして握手しにくるよ。
俺だってそうすると思う。
「見つからならなくて良かった…。もうそのブームは終わったんだろ?」
「はい、その人間っていうものが見つからなかったため、ガセとして処理されました」
紫が住んでいるところってやっぱり、誰にも見つからないようにできてるんだな。
「新聞に書かれたことが本当かどうか、確かめさせてもらってもいいですか?」
申し訳なさそうな顔をしながら「えへへ・・・」と言うものの、手はすでに俺の方へ伸びていた。
先ほど、俺を注意していた警備隊としての顔ではなくて、もうすでに個人的な感情で動いているのがわかった。
「いや、てゆうか嘘だか」
「わかっていますよ!ためしです、ためし~!」」
友人になった証みたいに、軽い握手を交わすと、椛は静かに目をつぶる。
「…とっても癒されます…何か、力を持っているんでしょうか?」
なに言ってるんだ…?
俺の手を握って癒されるって一体どういうことだろう。
「さぁ…俺はただの人間だから、そんなのわからないけど」
「そうですか…でも、すごく…嫌なこととかが、吹っ飛んだ気がします」
ほんわかとした表情で椛が言った。
「自分じゃわからないよ……それに、例え俺に力なんてものあっても、必要ないからいらない」
それ以前に力があること自体驚きだ。
いや、でも考えてみれば、俺がこの幻想郷の地へ飛ばされたのも何か、力が関係していると言っていた。
…なんでもいいけど、ややこしいのはごめんだな。
「そうですか?とっても良いことだと思いますよ」
「そう…だな」
手の平を見つめて俺はそう、言葉を濁らせた。
「…じゃ、入っていいかい」
「えぇ、お礼に案内しましょうか?」
「あ、頼めるかな?」
「全然大丈夫です。警備隊とか言ってますけど、普段は将棋とかで時間潰してますから」
それ言っていいの?
椛が案内してくれるそうなので、着いて行こうと一歩足を踏み出した時、後ろから肩を掴まれた。
「人間という言葉が耳に付くと思ったら…あの時のなんぱ男じゃない」
まるで展開が読めていたというか…椛君が大きな声で人間と言ったせいだな…。
振り向くと、先ほど話し合いをしていた妖怪が、俺の肩を掴んでいた。
「あ、あのぉ…白鳥さん!」
もう片方の妖怪の顔を見てから、少しだけ恐怖が渦巻いた。
「うっ…。君、また俺を襲ったりしないよな…」
もう片方の妖怪はトラウマになっている。
「し、しないよ!!大丈夫、もう人を襲ったりしないから、安心して!!」
そう言って、顔を何度も横に振った。
後ろについている赤っぽい羽根が横にぶんぶん揺れている。
「そ、そう…?」
「はい、それで、少し相談があるの…いいかな?」
俺の瞳を見つめてそう言うが、悪い予感しかしない。
「…そういや、俺二人の名前聞いてなかったな」
そう話を逸らしてみる。
「あっ…そうだね…。私はミスティア・ローレライ。これからよろしくね!?」
顔をずずっと近づける。
「あぁ…よろしくな」
一瞬の出来事に、心臓が飛び上がるかと思った。
うーん、やっぱり恐怖心は消えないからやりにくいなぁ。
「あたしは朱鷺子よ。あなたはなんぱ男でいいんでしょ?」
「よくないよ…。白鳥神無ね」
「あっ、神無って言うんだぁ…いい名前だね」
ミスティアがにっこりと微笑む、顔を傾けてそう言う。
「ははっ、ありがと」
…意外に話せる奴かもしれないなぁという簡単な思いを打ち消す。
「あの、白鳥さん…?どうするんですか?」
後ろから椛が声をかけてきた。
「あっそうだった。山まで案内してくれるんだっけ」
色々と文に言ってやりたいことがあるので、妖怪の山へ登るか。
「じゃあ頼もう…」
後ろから威圧感のような重みを感じた。
「犬走さん、この方には用事がありますので、またの機会に」
朱鷺子がそう言う。
「何?逆ナンパなら断るぞ」
先ほどからナンパ男と連発されていたので、朱鷺子に食って掛かってみた。
「んなわけないでしょ!!あたしがあんたみたいな男にナンパすると思った!?」
言ってやりたい、その気持ちが出会った時の俺の気持ちであると!!
「あ、椛、気にしないでくれ、妖怪の山…」
「うるさーぃ!!、あんたに用事があるって言ったでしょ!?さっさと付いてきなさいよ」
「どーせ、くだらん事だろうが」
その言葉を聞いてカチンときたのか。
「ななななな、あたしがすご~く悩んでいるのに、それをくだらない…!?」
俺達は敵対心を燃やし、二人の間にはピリピリと視線の電撃が走っている。
「よくも言ったわね…。これは意地でもあんたを連れて行くわ」
「どうしてそういう結果に至るのか教えてほしいな」
俺達がにらめっこをしているのをよそに、ミスティアは余計なことをしてくれた。
「…ですので」
「あっ、そうですか、わかりました。それでは、白鳥さん。またの機会に」
意味のわからないセリフを残して、椛は山へ消えていった。
「はっ?!」
残された俺から出た言葉は、そういうものだった。
だって、いや、椛がいなければ、俺は路頭に迷うことになってしまうぞ…!
「これで妖怪の山へ入らなくてもいいわね。さぁ…観念しなさい」
これはもう…相談にのったほうが手っ取りはやいのだろうか。
肩を落として、溜息をこぼす。
「仕方ないなぁ…で、相談ってなんだよ?」
「うん、男の人間にしかわからないことなの」
ミスティアが上目遣いでそう言う。
「具体的には?」
「それはあたしから話させてもらうわね!!実言うと…」
朱鷺子は、少しだけ頬を赤らめて説明を始めた。