「美鈴、君はどうする?」
「私は、白鳥さんのバッグを持って人間の里へ向かいます…」
「…ありがとうな」
「白鳥さん、行きますよ」
グッと手の平を強く握る寅丸。
「あぁ、頼む」
「ご無事で!!」
美鈴は速度を上げて森の中を走っていく。
俺達は空へ舞い上がり、ナズーリンを追う。
黒い気を撒き散らしているナズーリンを発見すると、寅丸は更に加速した。
「ナズーリン!!止まって下さい!!主人の命令です!!」
寅丸は必死に叫ぶものの、ナズーリンのスピードは収まることはなかった。
「ナズーリン、俺は無事だ、だから止まってくれ…!」
俺も必死にナズーリンに叫ぶ。
人間へ復讐しても、君に何の為になんかはならないんだ!!
だから、頼むよ!!
「このスピードを続ければ、すぐに人間の里へ着いてしまいます!!」
寅丸にも焦りが出てきている。
ナズーリン。
俺のせいで その姿になってしまったのなら。
俺が、全力で止めるしかない。
「寅丸!!ナズーリンより前へ出てくれ!!」
「わ、わかりました」
説明している時間がないのを把握した寅丸は、ナズーリンより一歩手前に出る。
しかし、保つのが苦しいのが目で見てわかった。
寅丸のつらい・・・顔。
「そのまま、俺をナズーリンの元へ投げてくれ」
「な、正気ですか!?そんなことしたら、白鳥さんが…」
「俺は、全力でナズーリンを止めたいんだ。頼む…。」
力強い眼差しをナズーリンへむける。
「…わかりました」
ためらいながらも、寅丸は指示通りナズーリンの元へ俺を投げた。
すぐに、加速しているナズーリンと衝突する。
「くっ、ぐはっ、熱い……!!!」
ナズーリンを覆っている黒い気はとても熱かった。
しかし、俺には
誰にも癒すことのできない 深い痛みを知っている。
「ナズーリン…止まってくれ…」
必死に叫ぶ。
記憶にまだ残っている、遠ざかってゆく背景。
人間の里はもう近いぞ・・・!!
後ろを振り向くと、妹紅が立っていた。
片手には、とても大きい炎をまとっている。
「白鳥さん!!早くしないと、白鳥さんまで…!!」
焦りながら、寅丸が言う。
妹紅は人間の里を守ろうと、ナズーリンを止めようとしているんだ。
だけど、あんなでかい炎を喰らったら…。
「…」
俺は黒い気の熱さや痛みにも耐えて、深い闇に眠っているナズーリンの両手を握ろうとする。
「くっ…」
「…白…鳥…」
両手をしっかりと握る。
「熱いさ、痛いし苦しい。だけど、これがナズーリンが抱えているものなら…俺は全力で受け止める!!!!」
「俺は、君の大切な友人だから!!」
ナズーリンは泣いていた。
とても深い闇。
誰にも気付かれることなく、静かに泣きつづけていたのだ。
これが、ナズーリン、君の 本心だ。
表に出さない、君の…。
「白…鳥…!!」
黒い気が少しずつ消えていき、本来のナズーリンの声が耳へ届いた。
「なっ、白鳥!!」
真っ暗闇が少しずつ晴れてきて、妹紅はやっと、俺がいたことを確認できたらしい。
振り向くと、すぐ後ろには、どでかい炎が視界をおさめていた。
「くっ、もうあたしじゃ止められない!!避けてくれぇぇぇぇぇ!!!」
黒い闇はもう消えていて、妹紅の声がしっかり耳に届いた。
「白…鳥、死んじゃう……!」
大粒の涙を瞳に溜め込み、目の前の恐怖に微かに震えた。
「大丈夫さ…」
強くナズーリンを抱きしめる。
ナズーリンだけは、…守ってやりたい…!!
「白、鳥……」
俺は何も言わないまま、炎に飲み込まれていった。
目の前がぼやけてくる。
あぁ、俺は死ぬんだ。
最後に熱さや痛みは感じなかった。
これでいいんだよな。
ナズーリンを救えて…良かった。
もう、後悔なんてものないはずなのに。
あの場所に戻りたいと願っている。
また藍と話をしたい。
橙と、遊ぶ約束だってしている。
紫と馬鹿話をして。
あの場所で、ずっと笑っていたかった。
あの場所で…ずっと、ずっと…。
戻りたい…。
戻りたいよ…。
やっと掴んだ幸せを、取り戻したい…。
深い闇の中 泣いている俺の名前を 呼ぶ声が聞こえた気がした。
「…しらとり…!……しらとり!」
「私は、白鳥さんのバッグを持って人間の里へ向かいます…」
「…ありがとうな」
「白鳥さん、行きますよ」
グッと手の平を強く握る寅丸。
「あぁ、頼む」
「ご無事で!!」
美鈴は速度を上げて森の中を走っていく。
俺達は空へ舞い上がり、ナズーリンを追う。
黒い気を撒き散らしているナズーリンを発見すると、寅丸は更に加速した。
「ナズーリン!!止まって下さい!!主人の命令です!!」
寅丸は必死に叫ぶものの、ナズーリンのスピードは収まることはなかった。
「ナズーリン、俺は無事だ、だから止まってくれ…!」
俺も必死にナズーリンに叫ぶ。
人間へ復讐しても、君に何の為になんかはならないんだ!!
だから、頼むよ!!
「このスピードを続ければ、すぐに人間の里へ着いてしまいます!!」
寅丸にも焦りが出てきている。
ナズーリン。
俺のせいで その姿になってしまったのなら。
俺が、全力で止めるしかない。
「寅丸!!ナズーリンより前へ出てくれ!!」
「わ、わかりました」
説明している時間がないのを把握した寅丸は、ナズーリンより一歩手前に出る。
しかし、保つのが苦しいのが目で見てわかった。
寅丸のつらい・・・顔。
「そのまま、俺をナズーリンの元へ投げてくれ」
「な、正気ですか!?そんなことしたら、白鳥さんが…」
「俺は、全力でナズーリンを止めたいんだ。頼む…。」
力強い眼差しをナズーリンへむける。
「…わかりました」
ためらいながらも、寅丸は指示通りナズーリンの元へ俺を投げた。
すぐに、加速しているナズーリンと衝突する。
「くっ、ぐはっ、熱い……!!!」
ナズーリンを覆っている黒い気はとても熱かった。
しかし、俺には
誰にも癒すことのできない 深い痛みを知っている。
「ナズーリン…止まってくれ…」
必死に叫ぶ。
記憶にまだ残っている、遠ざかってゆく背景。
人間の里はもう近いぞ・・・!!
後ろを振り向くと、妹紅が立っていた。
片手には、とても大きい炎をまとっている。
「白鳥さん!!早くしないと、白鳥さんまで…!!」
焦りながら、寅丸が言う。
妹紅は人間の里を守ろうと、ナズーリンを止めようとしているんだ。
だけど、あんなでかい炎を喰らったら…。
「…」
俺は黒い気の熱さや痛みにも耐えて、深い闇に眠っているナズーリンの両手を握ろうとする。
「くっ…」
「…白…鳥…」
両手をしっかりと握る。
「熱いさ、痛いし苦しい。だけど、これがナズーリンが抱えているものなら…俺は全力で受け止める!!!!」
「俺は、君の大切な友人だから!!」
ナズーリンは泣いていた。
とても深い闇。
誰にも気付かれることなく、静かに泣きつづけていたのだ。
これが、ナズーリン、君の 本心だ。
表に出さない、君の…。
「白…鳥…!!」
黒い気が少しずつ消えていき、本来のナズーリンの声が耳へ届いた。
「なっ、白鳥!!」
真っ暗闇が少しずつ晴れてきて、妹紅はやっと、俺がいたことを確認できたらしい。
振り向くと、すぐ後ろには、どでかい炎が視界をおさめていた。
「くっ、もうあたしじゃ止められない!!避けてくれぇぇぇぇぇ!!!」
黒い闇はもう消えていて、妹紅の声がしっかり耳に届いた。
「白…鳥、死んじゃう……!」
大粒の涙を瞳に溜め込み、目の前の恐怖に微かに震えた。
「大丈夫さ…」
強くナズーリンを抱きしめる。
ナズーリンだけは、…守ってやりたい…!!
「白、鳥……」
俺は何も言わないまま、炎に飲み込まれていった。
目の前がぼやけてくる。
あぁ、俺は死ぬんだ。
最後に熱さや痛みは感じなかった。
これでいいんだよな。
ナズーリンを救えて…良かった。
もう、後悔なんてものないはずなのに。
あの場所に戻りたいと願っている。
また藍と話をしたい。
橙と、遊ぶ約束だってしている。
紫と馬鹿話をして。
あの場所で、ずっと笑っていたかった。
あの場所で…ずっと、ずっと…。
戻りたい…。
戻りたいよ…。
やっと掴んだ幸せを、取り戻したい…。
深い闇の中 泣いている俺の名前を 呼ぶ声が聞こえた気がした。
「…しらとり…!……しらとり!」