青年が拾った猫が、ネコマタたっだことを現した朝。

ネコマタは青年にくっつき、ごろごろと頬を擦り付けたりしていた。

「そんなにくっつかなくても、離れたりしないよ?」

「うにゃー、だって、二年もこうすることを我慢してたんですよぉ…」

とても嬉しそうに呟く。

「そういえばさ、ちょっと気になることがあるんだけど」

「なんですか?」

青年の顔を覗き込みながら、ネコマタは聞いた。

「二年前、君はどうしてあんな所で倒れていたの?」

くっついてたネコマタが一旦離れた。

「そうですね、ご主人様は気になりますよね」

青年の方は見ずに、窓の外を眺めるネコマタは、とても悲しそうな表情を浮かべた。

「私は、ある町の野良猫でした…。、
その日暮らしで、死ぬか死なないのか境目に立っているような生活…。
そんなある日、ある人間が私に声を掛けてきました。

「かわいそうだ、独りぼっちで寒いだろう?私の元へ来なさい」

「冷め切った人生だった私には、それがとても温かく思え、疑いもしないで着いて行きました。
しかし、そこには私と同じような猫達がトラックへ乗せられていたのです…。そこで気付きました
「殺されてしまう」と…。
とても怖かったです、震えが止まりませんでした、何か手段はないかと…

すると、トラックが山道を走っている中、鍵がもろかったせいか私のカゴが開いたのです。」

言い終えると、恐怖を抱えている表情を浮かべるネコマタに。
青年は心配そうに見つめた。

「一目散に逃げました、ここがどこだかわからないけど、あの場からは逃げたかったから…。」


「そこで、嵐に直面して…」

「そうです…だから、ご主人様が私を拾ってくれたのは運命なんです…!」


ぎゅっと更に強く抱きしめる。

もうあんな思いはしたくないと訴えているように。

「でも、僕も、あの人間のように君を殺してしまうかもしれない。そう思わなかったの?」

「はい、ですが、私はあの時の、一瞬の記憶を忘れていません」

ネコマタは胸に手を置き、目を瞑る。

「雨も、風にも打たれていないことに気付いた私は、瞼をゆっくりと開けました。…そこには…」


瞑っていた瞳をネコマタは開ける。

「瞳にいっぱいの涙を溜めたご主人様の姿がありました…」



シナリオライターpaundo2の日記



とても愛おしそうな瞳。

「えっ、み、見てたの?」


青年は不甲斐ない姿を見せてしまったことに、焦り始める。

「ほんの一瞬です、それからの記憶はありません」






「しかし、それだけで私はわかりました。私のために泣いてくれているのだ…と」

「優しい気持ちでいっぱいになりました」

うるっとした瞳で青年を見つめるネコマタ。


「でも、それから二年も猫のままだったんだね」

「はい、頑張っているご主人様を驚かしてはいけないと思いまして…」

「そっか、ありがとうね、そこまで気遣ってくれて」

「はいっ!これからは私も、仕事お手伝いします!」

「ほ、本当に?」

「私のために頑張ってくれたんですから、今度は私が頑張るばんです」

両手でガッツポーズをとり、やる気を見せようとするネコマタ。

「無理しないでね」


「はい」

「でも、君だけが頑張るんじゃなく、一緒に頑張っていこ?」

「は、はい…!」

ぎゅ~と青年を抱きしめるネコマタは、

もう隠し事も何もない、晴れ晴れとした表情をしていた。
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end