「だから・・・ね・・・」

少女は最後の力を振り絞り、俺に抱きついた。

ちゅっ


女の子は俺に口づけをした。

「・・・・あっ」

「こ、これは・・・」


すると、少女の姿はきえていった。

「え、なに・・・これ・・・」

何かが流れ込んでくるような気がした。


先ほど手に感じていたぬくもりはすでに消えてなくなっていた。

「どういうこと・・・」

振り向いて二人に問う。

「これは・・・生命の同化よ」

「生命の・・・同化?」

「あの子は最後の魔力を振り絞って、あなたに生命を注ぎ込んだの・・・」


「生命・・・」

「本気で信じている相手にしかできないわ、多分、あなたに何か見覚えでもあったのでしょうね」

「お、俺は覚えなんて・・・」

「でも、儚く死んでしまうよりずっといいわ・・・彼女はあなたの中で生きつづけるの」

「そ・・・か」

両手の平を見ると、俺は大粒の涙を流していた。

こんな幼い少女になんてことさせてしまったのだろう・・・。

「生命の同化は対象者の力となり、精神となるのよ」

「そうか・・・・」

大粒の涙を溜め込んだ瞳で、吹っ飛んでいった穴を見る。

「・・・・」


「帰りましょう・・・ここにいても仕方ないです」

「そう・・・ね」

シャルロは背中に乗れるようにかがんでくれた。

「ありがとう・・・」

放心状態で目に涙を溜めている俺は、シャルロの背中で揺れていた。


――――ねぇお兄ちゃん、私はナミっていうの、よろしくね。

「あっ…」

聞こえる、あの子の声が・・・。

そうか、あの子はナミというのか。

――――私は死んでないよ。だから、泣かないでお兄ちゃん。

――――ずっとずっと、お兄ちゃんの中で生きるの

「…そっか、そうだよな」

俺は一人の生命を受け入れたんだ。

この人生、俺だけのものじゃない。

彼女もいるんだ・・・。

「ありがとう・・・ナミ」


静かに呟いて、宿屋へと家路についた。