お、おぃシャルロ!?大丈夫か」
割れたガラスから吹き込む風が不気味に俺の髪を揺らしていた。
「は、はぃ・・・」
シャルロは目覚めた。
「私は大丈夫ですが・・あの子が連れて行かれしまいました・・・」
「誰に!?」
「姿は見ていませんが・・・あの魔力、見覚えがあります」
シャルロには外傷が見当たらない。
深い傷等は負ってないらしくすぐに立ち上がった。
「ん・・・これは」
砕けたガラスの破片に、やぶれた布のようなものがついていた。
「アツキ、ちょっとかしてくれないかしら」
言われたとおりに渡すと、魔王は真剣な表情で見つめた。
「微かに・・・あいつの魔力がこびりついているわ」
「あ、あいつ?」
「シャルロ、行くわよ」
俺の質問に返答はなく、シャルロと魔王は急いで出て行こうとする。
「ま、待ってくれ、俺も!」
「あなたには太刀打ちできないほど、強力な相手よ」
「・・・あの子がさらわれてしまったんだ・・・・俺にでも何か、できることがあるはずなんだ」
魔王とシャルロは頷いた。
「わかったわ、シャルロに乗って」
「飛ばしますよ」
あの子の詳細な情報なんて一つもないけれど。
関わってしまったのなら、関わりとおす。
魔王とシャルロは人には到底追いつけない、とても早いスピードで町を駆け抜け・・・。
不気味な雰囲気が漂う館へとたどり着いた。
町から館は近くはない、彼女達が早いのだ。
「・・・・ここは幽霊が出ると噂されている館ですね」
「あいつはここにいるわ、早く炙りださないと」
「はい、わかりました」
そういうと、館の扉をぶっ壊して中に入っていく、その間も俺はシャルロの背中に乗っていた。
「あいつって?」
「属性王の一人です。魔王に反抗するなど・・・否定的な手下なんです」
「そんな奴を手下に?」
「その属性の中で・・・一番強いですからね」
「・・・」
魔王の手下の、複雑な仕組みを知ってしまったのかもしれない。
二人は暗い闇が支配している家の中をナンナク進んだ。
光はシャルロが角で照らしてくれている。
「早くしないと・・・あの子が危ないわ」
「・・・はいっ!」
深い奥、一際大きな扉を二人であけると、そこには・・・。
「あら、早いおで・・・・・・・」
魔王を見た瞬間、目の色が変った。
「魔王様、あたしの実験室に何のようかしら」
とんがり帽子に、魔女のような服装をした女性が立っていた。
その横には、少女がぐったりと倒れている。
「カナミ・・・貴様!!!」
それを見た魔王が大きく叫んだ。
「この強力な魔力を持った少女を材料にして、魔力増加の薬を使っただけよ?そんなカッカしないで」
俺は三人の会話など気にしないで少女の元へ走ったものの。
彼女のまわりに張ってあるシールドによって吹き飛ばされてしまった。
「くそっ・・・こんなの!」
何度もシールドへぶつかるが、びくともしない。
「カナミ・・・あなたは人殺しです」
「人殺し?この子は魔物と人間のハーフよ?恵まれない子だったのよ?」
「えっ・・・」
「カナミ!!!」
「魔物と人間のハーフっていうのは、拒否され、断絶され、とても苦しい人生を送るものなのよ、それを断ち切ってあげたんだから、褒められるべきだわ」
「それでも、生きていればきっといいことだってあるはずだ!!現に俺もハーフだが、とてもいい友人に出会えた」
「アツキ・・・」
「あら、あなたも魔物と人間のハーフなの?・・・・ふふっ、いいことを聞いたわ」
ハッと二人は何かに気付く。
「カナミ!!アツキに何かしたら容赦しないわよ!!」
「あらあら、そんなことはしないわ・・・でも・・・」
「魔王様!!そんなことよりも少女を助けることを優先しましょう!」
「ええっ!」
俺はシールドにぶつかるものの、何も出来ないまま、二人の攻撃を見守るしかなかった。
二人はとても早かった。
魔法少女に近付くのに一秒はかからなかった。
「カナミ、覚悟しろ」
「そんな攻撃」
カナミは魔王の右手を魔王で受け止める。
しかし、その魔法は砕けて、魔王の右手はカナミの頬へねじ込まれた。
「人間の姿なのに・・・こんな巨大な魔力・・!」
「あの子の魔力を奪っていきがっていたようね。それが甘いのよ」
一言言い放った魔王の足には時空が歪んでいた。
「くらいなさいっ!!!」
その足は彼女の全身へ打ち付けられ、穴を開けて吹っ飛んでいってしまった。
「あ、シールドがっ・・!」
シールドが解けて、彼女に近付くものの・・・。
すでに彼女の心臓は小さい鼓動とともに消え入りそうであった。
「そ、そんな・・・まだ、死んでない」
シャルロが近付いて治療魔法をかけるも。
魔王とシャルロの表情はとても辛そうであった。
「・・・これ、死なないよね・・・ねぇ、シャルロ」
「・・・・」
シャルロは何も言わない。
少女を抱きかかえると、少女は小さく反応した。
「っ」
「・・・お兄・・・ちゃん」
「だ、大丈夫、今助けるから!きっと・・・きっと助けてやるから・・・」
「わか・・・るの・・・もう・・・だめだって」
少女は残酷なことを口にする。
こんな幼い子が、そんなことを・・・。