次の瞬間、光が視界を埋め尽くした。
「な、ナニ・・・」
「あ、アツキ・・・」
シルフの声が聞こえた。
「な、なんだこれ」
角の生えた馬の背中には、魔王と俺が乗っていた。
「あぶなかったですね」
そう言って、俺の顔を見て笑った。
「ゴーストは闇属性ですから、私のような光属性が聞くんですよ」
そういうと、ユニコーンは角をゴーストに向けた。
「ホーリーブレイク」
静かにそう口に出すと、角から白くて輝くレーザーがゴーストに向けて放たれ・・・。
ゴーストは消滅してしまった。
そう、俺があんだけ頑張っていたのに、このユニコーンは一瞬で・・・。
「さて、そろそろ、降りますか」
「あ、あぁ・・・」
地面にポンッと降りると、魔王は正気に戻っていた。
「あれ、私どうしたんだっけ」
ぼけーんとした顔で魔王は言った。
「・・・まぁいいや、とりあえず、シルフの住処を取り戻したということで」
「あはっ、ありがとう~!アツキ!!」
「これで風の精霊を求めに来る勇者と旅人が増えるはずだね」
いっそう、この町も活気に溢れることだろう。
「風の管理きちんとしなきゃ~」
「頑張って、シルフ」
「うん、本当にありがとう」
にっこり微笑んで、シルフは消えた。
そして、次には階段の上にシルフが登場する。
「よーし、頑張るよぉー」
そう言って、呪文を唱えたり、何かを動かしたりと作業を始める。
これは、俺が召還しているわけではないので、魔力は消費しない。
「・・・まぁ、問題はこっちだな」
白い輝く肌と、頭に生えているツノ。
・・・あいつだな。
「シャルロか?」
「大当たりですよ!お久しぶりですね、あ、ア・・・えっとー・・・」
「・・・お前まだ俺の名前覚えてないの!?」
「ど、どうしても名前だけは覚えられないんですよ…長くて」
「いや、三文字だからな!?」
「アツキ・・・ですよね、思い出しました」
「相変わらずだな」
魔王は真剣な視線をシャルロに送っている。
「シャルロじゃない、どうしたのよ、こんなところで」
「魔王様が抜けているから、助けに来たんですよ・・・」
「ん?魔王とも知り合いなの?」
「あぁ・・・えっと、この子は、私の子分」
「へぇ~、子分・・・こ、ぶ、ん!?」
「属性王の一人」
「属性王?」
「うん、その特定の属性で頂上に立つモノのことよ」
「え、シャルロが?」
「シャルロは光属性の使い手。とても腕が立つのよ」
「あぁ・・・だからゴーストを一瞬で・・・」
闇属性に効果があるのは光属性だ。
だったら、仕方ない。
俺が頑張って倒そうとしたゴーストでも、簡単に・・・呆気なく。
仕方ないはずなのに・・・なんだろう、この感じ。
「シャルロってそんな頂上に立つキャラじゃないんだけどな」
「・・・てゆうか、アツキこそ、なんで知ってるの?」
「これ、俺の昔の友人」
よく背中に乗せてもらって、遊んだもんだ。
「これ言わないで下さい」
「あんた・・・広範囲にわたって友人がいるのね」
まだ少しだけ乾いていない頭を掻いた。
「私の手下、全員アツキの友人とかだったりしたら面白いね」
「面白いねー」
「え?でも、魔王様もアツキのゆうじ・・・うぐぐぐ!!」
必死にシャルロ口を押さえて、次の言葉を防ぐ魔王。
「?どったの」
「いやいやいや、何でもないわ!何でもないからぁ、シャルロは黙りなさい!」
「なんで隠してるんですか」
「うるさいわね、宇宙まで吹っ飛ばすわよ」
「それは勘弁ですね・・・」
汗を垂らして、ほげーん。
「一旦宿へ戻って、次の町へ出発するわよ」
疲れ果てた顔で言う魔王。
「・・・疲れたぁ」
「アツキ、乗りますか?」
「あ、いいの?さんきゅ」
シャルロに乗ると、心地よく揺れながら歩いていた。
あぁ・・・懐かしい。
こんな感じだったな。
「・・・昔みたい・・・だな・・・」
それからすぐに、ガクンッと・・・俺は瞼を閉じてしまった。
「アツキさん・・・寝ちゃったみたいですね」
「結構、力使ったみたいだし・・・仕方ないかな」
「・・・魔王様は、どうしてアツキさんと?」
「色々あるのよ・・・」
「そ、そうですか・・・。まぁ、アツキさんは私たちのような魔物が好きな方ですし、とってもいい方ですからね・・・」
「そんなの、わかってるわよ」
「あはは、そうですねぇ~」
「な、ナニよ・・・」
「いえ、なんでもありません」
そのまま二人はワイワイと雑談して、宿へと戻っていった。