翌日、俺達は山奥にあるという村へ向かっていた。

「村ねー」

宿泊先のおっちゃんが言っていた、被害が出ているという場所である。

暴れていたリザードマンを退治してくれたという理由で、無料で宿泊させてくれたのはいいのだが。

退治したの俺達じゃないからなんか罪悪感がある。

「魔物が頻繁に出没ーだって」

「・・・また魔物が頻繁に?もっと詳しい情報が欲しいものだな」

「それは、勇者さんが村人達に事情聴取ーっていうお決まりのパターンへ導くためじゃない?」

「た・・・たしかにっ・・・」

魔王の言っていることが正論すぎて、両手が震えてしまった。

お前、本当に魔王だよな・・・。

「もしかして、魔王って部屋に勇者が魔王を倒す漫画とか小説とか棚にいっぱい置いてある感じですか」

「あったりまえ」

「へ、へぇ~・・・」

こいつの家とか部屋とかって、相当でかいんだろーな・・・

「・・・」

じゃあ何で、精霊を強い奴からぶっ倒したんだよ・・・。



「敵を研究するのも、魔王の役目なの」


フフンッと誇ったように胸を張る。


「ねぇ、アツキ」

「んー?」

「昨日、実体がなければ普通に戦えるって言ってたよね」

「あー、んなこと言ったような」


「実体があった時、どうするの?」

「うーん~、自分でもよくわかんね・・・。その場によるかもな」

でも、やっぱり戦いは好きじゃない・・・。

「じゃあさ、どうして、被害が出てるところへわざわざ向かうの?」

「勇者として、民の役に立ちたいから!!」

グットラックポーズをした。

「ふーんっ・・・」

じとーっと俺の目を見る。

「ま、まぁ・・・気にしないで、被害の出てる村に行こうぞ」

オーッと天に拳を張り上げて、俺達は村へ向かった。

「引っかかるところがある・・・」

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被害が出ているという村へ訪れると、村は荒れに荒れていた。

「ど、どうしたんだ・・・これ・・・」

思ったより村はボロボロになっていた。

「・・・と、とりあえず村人に事情聴取でも、でもぉ・・・」

村はすっからかんになっている。

みんな、家に逃げてしまっているみたいだ。

「・・・家にずかずか入り込むのもなんだかなぁ・・・」

とぼとぼと、枯れた村を歩いていると一人の老人が出てきた。

「た、旅の方ですか・・・!」

背の低い男性。

「も、もしかして、ありがちな村長的なパターンですかぁぁ!」

「えぇ、そうですよ・・・」

そして、ありがちな、俺は勇者です。

「そ、それより・・・どうか、この村を救ってくれないでしょうか!!」

「あぁ、それより、あまり情報がないですけど・・・」

「あぁ、そうでした・・・!」

といって、老人はゆっくりとこの村の現状と、経緯を話し始めた。

この村には昔より、畑の作物を山の魔物達と分かちあうという風習があったらしく、魔物達と仲良く暮らしていたらしい。

しかし、この風習はいつしか消えてなくなってしまい・・・。

山の魔物達は怒り、村を襲って作物から何までもを奪い取って返ってしまうらしい。


「・・・じゃあ、この村が作物を分かち合う会を開けばいいのでは?」

「それが・・・何もかも奪われてしまって、村にはもう何も残っていないんです・・・。それにより、村に住んでいた人達も減っていってしまったんです」

「そうですか・・・」

俺と魔王は目で合図して、とりあえず、家を出て山の方面へ足を運んだ。

「・・・魔王、俺には少しばかり気になる点があるんだ」

「うん・・・私も」

二人で目を合図したのもそのせいだろうか。

「まぁ・・・」

俺達は何となく理解して、山へと足を踏み入れた。

「・・・おっ、スライム発見」

ニコーとした顔で、俺達を見つけたスライムが近付いてきた。

「なぁ、スライム、ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ」

「あ、アツキっ!」

「えっ?」

スライムに夢中になっていたのか、周りを魔物達に囲まれてしまった。

「・・・やべっ」

「どーしよーアツキ」

「精霊の力を使ってもいいんだが・・・、魔物達の反感を買ってしまうんだよな」

俺達は穏便に話し合いで決着をつけようとしているのに、そこで力を使ってしまうのはアウトだ。

「このまま、大人しく捕まった方がいいかな」

じりじりと近寄ってくる魔物達に、俺は収めている剣を投げ捨てて、両手を挙げて降参ポーズ

「やめだ、俺は戦う気なんてない」

剣をモンスターの元に投げると、そのまま奪われてしまい。

俺はてっきり、このまま山の主とかそういうのに連れて行ってくれるとか。話をしてくれと思っていたのに・・・。

無言で、しかも武器を持っていない俺に武器を持って近付いてくる。

「な、なんでよ・・・」

涙ながらに訴えるも、俺は呆気なく捕まってしまった。

「どうしてあんたはそぅ・・・魔物に対してオープンなのよ・・・」

もう動けないところまで迫られた俺達は・・・。

「このまま捕まって・・・一生働かされたりするのかなぁ・・・。優しくしてくれるといいけど・・・」

「こ、怖いこといわないでよ」

泣きながらそう独り言を呟いていると・・・。

「・・・やっぱりそうだ・・・お前、アツキだろ!?」

俯いて涙を流していると、そんな声が聞こえた。

見上げると、そこには・・・

ゴツゴツとした頑丈な体に、獲物を射るような鋭い瞳を持った・・・。


とても、懐かしいような・・・。