ボロ傘を差して階段を駆け下りる。 なげぇ・・・・。
この高いところから滑り落ちたら、骨折は免れないだろうなー。そんなのんきな事を考えていると、文がこちらへ上がってくる。
「・・・?文だ」
僕に気がついた。
「あ、主さん!!大変です!椛が・・!!」
「え?」
椛が・・?
「何かあったのか?」
「はい、椛が嵐の中、警備をしていたのですが、滑り落ちてしまい、気を失っているんです!!嵐で永遠亭へはいけません・・・・!どうすれば!」
顔に似合わず、焦っている文、永遠亭・・・?どこだそれ・・。
「とりあえず、僕も行くよ・・・」
・・・・・・懸命に勉強して、得た医学の知識を、このまま放置しておくのはもったいない。
人のために使えるのならば、使おう。
なぜ、梢が死んでしまったとき、そう思わなかったのか、今になって疑問に思う。
医者になって、梢を助けてやろう。そう願って、頑張った。
梢が死んでしまって、僕の目標は消え、やめてしまった。
だったら、他の人を助けるために、勉学に励もう・・・。 なぜ、この思いにいたらなかったのか 自分は本当に愚かだ。
少しだけ、戻りたいと嘆いている。しかし、戻ったところで、僕の居場所は消えている。
椛は苦しそうな表情で、寝ていた。 天狗達は何もできないまま、椛の目が覚めるのをまっていた。
「主さん、どうでしょうか?」
・・・・。
「文、洩矢神社へいって、僕のバッグを取ってきてくれないか」
レントゲンがないから、確実なことは言えないが、体の左半分が重症だ。
肌の感覚で、どこが骨折しているか明確にわかる。
まず、鎖骨の形が変形してることから、鎖骨は確実に骨折しており、左腕と左足に激しい腫脹があることから、骨折または打撲が考えられる・・。
左腕をつり包帯と巻き包帯で固定し、左足は副木で固定したものだが・・・僕のバッグには、副木などという便利なものはない。
なぜか、あの家を出て行くとき、医療関係のものは、多数バッグに持ち込んでいた。
本当に、未練タラタラだな・・・。
「主さん、もって来ました!」
「よし、今から応急処置をするから、とりあえず見ててくれ」
「本当ですか・・!!」
左腕を固定し、左足はとりあえず、ギプスを巻いてゆく。
左半分が重症だが、右肩の関節も脱臼している。
整復をして、こちらもギプスで右腕を固定。
後、脳のほうは、外見だけでは見分けがつかない。今すぐにでも処置してあげたいところだが、どうにもならない。
「これでOKだ・・・。応急処置はしたが、専門の医者を呼んでくれ」
「今、天狗の仲間が嵐の中、永遠亭に向かって呼んできています!」
・・・・その永遠亭っていうのが、幻想郷で言う病院なのだろうか。
「僕の役目はここまでだ・・・。」
他に打撲やねんざの箇所をさがしたが、特にこれといって目立ったものもない。
気になるのは頭のほうだ。 この衝撃はどう考えても、落下が原因だ。
頭蓋骨の骨折はかなり危ない・・・・。
頼むから・・・無事でいてくれ・・・。
end