思いがけないところで、頭が疼いたのだ。


―――――――――――――――――回想


山の麓で、自分と椛が対話している場面だ。


「ありがとう、白いお姉ちゃん」


椛が、幼い自分の頭を優しく撫でる。


「白いお姉ちゃんじゃなくて、椛って呼んでほしいな」


笑顔で、提案をした。


「うん、椛お姉ちゃん・・・・あの・・・」


「うん?」


椛は優しく聞き返した。


「今度は、僕が守るから・・!守れるように、強くなるから!」


――――――――そこで、回想は途切れてしまった。


少し考えて、この場面で、この回想が成り立つ理由が思い浮かんだ。


そういうことか。幼い僕も、本当に・・・・やってくれるよ。


「椛は僕を守る必要はない」


振り向き、椛が僕の表情を伺う。


「僕が椛を守るから」


その表情は、少しずつおっとりとしてくる。


「うん・・・よろしくね、椛」


完璧忘れていたけど、覚えているフリをした。 そうしなければ、悲しい結果になるだろうから。



それから、椛の能力を使って、ナズーリン達の位置を把握し、山へと入って行った。


(人間の子供は・・・本当にかわいい)


そう、ひそかにおもう椛であった。


「あ、主、あそこにチルノ達がいる」


指差す方向に、青い洋服と、青い髪をした少女が見える。


「おーい、チルノ」


僕の声が届いたのか、チルノが振り返り、笑顔になる。


「あ、主。ちょうどバッグ見つかったところ」


なるほど、だから先程から止まっていたのか。


「これであってるよね?君のバッグ」


ナズーリンに手渡されたのは、正真正銘、僕のバッグだ。夕方から嵐が来ると言っていたけど、その前に見つかって良かった。


「中身わぁ・・・」


中身も無事だ。何一つ壊れていない。


「ありがとう。ナズーリン、本当に助かったよ・・・!」


「それが私の仕事だからな。喜んでくれると、こちらも嬉しいよ」


では・・・というように、僕の方へ手の平を見せた。


「はいはい・・・わかってますよ」


財布を取り出して、千円を手の平に乗せた。


「よろしぃ。それでは、私はご主人の元へと帰るとするよ」


そのまま僕達に別れを告げて、ナズーリンは飛び去って行った。


「僕は少し、この山の神社に用事があるけど、チルノはどうする?」


「んー、あたい、これからレティと約束してるから、もう降りなきゃ」


レ、レティ?・・・・・幻想郷はやはり広いな。まだ知らない奴がわんさかいる。


「わかった。じゃあな、チルノ」


「頑張ってねー。あたいの子分よー」


end