三人の追いかけっこが終わり、また椛へと向き直ると、少し驚いた表情をしていた。


「・・・・・紅魔館の三人と仲良くなる人間なんて、珍しい人間・・・・」


普通の人間だったら、食われてるとでも言いたいのか? でも・・・咲夜は人間なはず。


美鈴は微妙だ。もしかしたら妖怪かもしれない。



しかし、まだ尻尾を振っている。一体、いつになったこいつは気づくんだ?


もう、僕から言おうかな?


「椛、尻尾振ってる・・・」


「えっ?」と間抜けな声を出して、初めて気づいたらしく、尻尾を頑張って制御した。


「ななななな・・!?なんで、私の名前・・・・それと・・・・尻尾が揺れているの?」


「いや、僕に聞かれても・・・」


君の体なんだから・・・。


その不可解な行動に、やっと椛は理解したらしく。


「そういえば、あなた、あああぁぁ・・・主って言われてたよね?」


オドオドした口調で、椛がごまかすように言う。


「そう・・・だけど・・・?」


目を見開いて、僕の全身を改めて眺める。


「えっ、まさか、あなたって・・・・。あのちびっ子の・・・天田主!?」


「今はチビっ子じゃないぞ」


やっと思い出してくれたか・・・と言いたいところだけど、完璧、僕も忘れていた。


「へぇ・・・。あのちっさかった主が・・・・」


幼い頃、僕がこんなにも妖怪と知り合っているのは、妹の病気の治療法を探すために、あっちらこっちら、走り回っていたからなんだろうな。


「久しぶりだな。椛」


「うん、久しぶり、主」


固い握手をした。


「でかくなったね・・・・・・。頭、もう一回撫でさせてよ」


僕の頭を触る前に、椛の手は高速で揺れていた。


「・・・・・・いいけど」


この年になって、頭を撫でられるのは、すごく恥ずかしいものだ。


断るのも、少し・・・・・あれなので、恥ずかしながら許可をした。


撫でやすいように屈んであげると、温かい手の感触が伝わってきた。


「うん・・・。この頭は主だ!」


手の感触だけで、僕ってわかるんだな・・・。


「それよりさ、もう山へ登ってもいいでしょ?僕が君の知り合いってわかったんだから」


椛が腕を組み、考えに考えた末。


「私が守ってあげるから、一緒に登ろうか」


幼い頃と同じ提案をしてきたのだ。


end


犬走編始動。

前回はフラン編かなぁ~♪