もしかしたら、僕とこいつがどこかで会った事があるという証拠か・・?


頭では覚えていなくても、体が覚えているから、尻尾を振っているのかもしれない。


何か、記憶を取り戻すキーワードーがないか・・・・それとも、勝手に修正が起こるのか・・?


「この山は危険だから、人間が入ってきてはだめ」


頭がうずいた。


――――――――――――回想


同じ場面が、脳裏に映し出されている。


幼い自分が、この狼を見上げている姿。


「この山は危険だから、チビっ子が入ってきてはだめ」


僕に言い聞かせている。


「わかったよ・・・白いお姉ちゃん」


狼は青空を見上げて、すぐに自分に視線を移した。


「でも・・・・・・・ちょっとだけなら、私と一緒に入っても・・・いいかな」


考え直したように、狼が言った。


「本当に!?ありがとう・・・・。えっと、僕は天田主っていうんだぁ!」



「私は、犬走椛。この山は危険だけど、私が守ってあげるから、ちょっとだけ、登ろっか」


懐の刀を取り出して、僕の頭を撫でた。


「私の首に乗って」


椛が屈むと、自分は首に足を回して乗った。


「じゃあ、行くよ!早いから、振り落とされないでね」


先程の二人とは段違いの速さで、森林へと色を溶かしていった。


――――――――――――――――――――――――――


なるほど、こんなほのぼのした出来事があったのか・・・。


「あ、主さーん」


振り返ると、紅魔館の庭師であり、門番である美鈴が走ってきたのだ。


なぜ、こんなところに美鈴がいるんだ?門番の仕事はどうしたんだろう


「こんなところで何やってるんですか?」


「まぁ・・・・立ち往生してるというか・・・」


「ほうほう」と二回頷いた。


「美鈴は何やってるの?」


聞くと、美鈴は走るマネをして。


「自主トレですよ。それでは~」


と、中国娘は去って行った。


中国娘が走り去っていくと同時に、メイド服の例の人が走ってきた。


「はぁ・・・はぁ・・・・・・・主・・・・美鈴見なかった?」


銀色の髪の毛が、太陽に反射して眩しい咲夜さんが現れた。


「見たけど・・・?自主トレとか言って、そっち走って行ったよ」


息を切らしている咲夜なんて、珍しいかもな。


「あの子は・・・!門番サボって何やってる!」


と、咲夜さんもまた、同じ道を去って行った。


僕の予想通りに事が進んでいた。


今度は、お日様が高く上る真昼間っから、レミーが日傘を持って、テクテクと歩いてきたのだ。


「あ、主。ねぇ、咲夜見なかった?」


なんてベタな展開なんだ・・・。


「そっち息切らして、走って行ったよ。ちなみに美鈴もね」


「あぁ・・・そういうことね。わかったわ。ありがとう・・・・。で、主は何やってるのよ?」


「ん・・・まぁ、色々とね」


「そぉ・・・・・。私は暑くて火傷しそうだから、帰るわ・・・。今日、夕方から嵐だって、気をつけてね」


紅魔館の方向へとゆっくりと消えていった。


end


なんかこういうほのぼのが、なんとなく嬉しかったり。