―――心地よい夢を見た。 妹の病気が治って、二人で楽しく過ごしている。


 

現実的に言えば、「理想」で止まってしまっている夢。




薄っすらと目を開けると、妹の顔が映った。


「ぁ・・・こ・・梢・・」


もういない、優しい妹が・・・僕の目の前に・・・。


頭を撫でようと、手を伸ばそうとするが、手は一歩も動かなかった。


「え・・・」


その一瞬で、現実へと呼び起こされた。目の前に映っている謎の少女は、僕の手をガッチリと掴んでいる。


少女とは思えない強力。


「え、いや、ちょっと・・・なんだよ」


大きく開け続けた口から、よだれが顔をぬらす。


「ルーミア!食べちゃだめだって」


食べちゃだめ・・?僕を食べる気だったのか・・!?


チルノに引き剥がされ、黄色い髪をした少女は、隣に座って、笑っていた。


「主、大丈夫?」


チルノも、同じように座る。


「ん、昨日・・・・どうしたんだっけ・・僕・・・」


「いきなり倒れたんだよ。体でも、冷えてたんじゃない?」


冬の寒い空気に、濡れたままだったからか・・・・。


「チルノのせいじゃないの?チルノの周りって、結構寒いよ」


「ぁ、そっか・・・。私の冷気のせいか」


アハハハッと二人で笑っていたが、僕にとって、あまり笑いごとではなかった。


「ずっとチルノの世話になるわけにもいかないし・・・・それに、凍え死にそうだから、なんか、寝泊りができる場所・・・ないかな?」


朝日が差して、周りの様子がはっきりとわかるようになってきた。記憶通り、すぐそこに館が見える。


「ルーミア、どこか知ってる?」


「んー、人間の里とかは?」


人間の里?人間が普通に住んでいるところかな・・・?


「あ、そうだ、博霊神社は?」


「博霊神社は信仰が弱いけど、私はあんまし好きじゃないなぁー」


「あんたのことは別にいいの。ほら、あそこに神社が見えるでしょ?」


指差した青空の方向へと視線を向けると、山の頂上に建物があった。


「あそこには、神社の巫女が住んでいるから、そこにお願いしてみたら?」


なるほど、神社なら・・・、そういうのは断れないはず。


「オーケー、ありがとう。行ってみるよ。道は自分で探ってみる」


立ち上がると、乾ききっていない服が肌にべっとり粘着している。


昼になれば、太陽の光で乾くはずだ。


「うん、わかった」


チルノに手を振り、とりあえず、博霊神社へ向かうことにした。



「あの子、あたいの子分なんだよ」


「そーなのか・・」


「だから、食べちゃダメ」


「うん、わかった」

end