分娩台に上がってからは、早かった。
朦朧とする頭で、
まな板の上の鯉状態の私。
もう煮るなり焼くなり
好きにしてくださいよ!
と、
半ば投げやりになりつつ
いきんで〜
の声に合わせ、いきむ。
それを三回繰り返したのち、
元気な産声を上げて
息子が誕生したのである。
これが、
私と息子の初対面。
この時は、
あまりの痛みと
無事に産まれてきてくれたこと、
産めたことの安心感の方が
強かったと思う。
だって、
とんでも妊婦だったから。
自分の行いとはいえ、
妊娠後期は
元気な姿で
無事に産まれてきてくれるか、
そればかり考えていたから。
元気な男の子ですよ。
と言われ、
緊張の線が切れたのか、
その後のことはあまり覚えていない。
次の記憶は、
ベッドで目を覚ました時だった。
死ぬまで続くんじゃないか、
ってくらいの痛みはすっかり消えていた。
まだ寝てなきゃダメ、
と言われたけど、
どーしても息子に会いたくて。
骨盤がずれたのか、
カクカクする足腰をひきずりながら
壁伝いに新生児室へ歩いていった。
鈍い痛みはあったけど、
陣痛の後だと余裕に感じた。
まだ寝てなきゃダメだよ!
母子同室は明日からだよ!
って言われたけど
何回も何回も会いにいった。
ここからが
本当の始まりだと気付いたのは、
そう遠くない未来だったけど。
息子の顔を見た瞬間に、
著しくかけていた
母親の自覚が芽生えたのだと思う。
今まで、
愛してるだの好きだの
思ったりしてきたけど
その概念は、
彼が私の人生に出現した瞬間に
覆された。
小さな寝息を立てる小さな息子が
可愛くて、愛しくて、
泣いた。
愛しくて、
涙が出るなんて知らなかった。
この子を全力で守ろうと思った。
初めて、
〇〇ベイビーと書かれた札の
父親欄が空白なことを
ごめんなさい、と思った。
この時はきっと
まだちゃんと
お母さんになることがどういうことか
わかっていた訳ではなかったと思う。
けど、
この日
怖いもの知らずだった私は
自分以上に大切なものを手に入れて
初めて、
失うことがこわいとおもったんだ。
続く