あの桜の丘で決心をしてから3年が経ち私は近所の公園で自分で作った歌を歌っていた、最近になってよく近所の人が聴きに来てくれるようになった、歌い終わると1人の男性にこんなことを言われた、「そんなに歌が上手いなら歌手になったらどうだ」と、確かに私は歌手になりたい、だから音楽大学に入りたい気持ちもある、ただやりたくても出来ない、なぜなら入学するためのお金がないのだ、私が事情を話すと近所の人たちは事情を察してくれたのかそれ以上行ってくることはなかった、そして月日は過ぎ自分の人生にとって一番大事な季節になった、そう進路を決める季節だ、教室にいる同級生たちはみんな進路の話をしている
「私はどうしたいんだろう」下校をしながらポツンと呟いた、もし彼がいたら私になんて言ったのだろう、その時だった、「あんた、音楽大学に行きたいんだろう?」突然後ろから声が聞こえた、振り向くとそこには近所の人たちがいた、突然の出来事に私は驚いていた、「あんたの事情は私の娘から聞いたよ、お金がなくていけないのだろう?ならこれを使いな」すると近所の人たちが白い封筒を渡してきた、中を見るとそこにはお金が入っていた「こんなに受け取れませんよ」と私は返そうとした、すると「いや、受け取りな、そんなに歌が上手いんだその才能を潰すのは勿体無いよ」と笑顔で言われた、その時私は思い出した、彼が生前私に「君の声は優しい、その声なら世界中の人を幸せにできる」とその時私は決めた、歌手になろうと「皆さんありがとうございます、このお返しは必ずします」近所の人たちは笑顔で「もし歌手になったら、またあの公園で歌ってくれよ」と言われ私は「必ず歌手になってまたここで歌う」と約束を交わし、私は音楽大学に願書を提出するのだった。
そして気づけば入試の前日になっていた、沢山勉強はした
でもやはり緊張する、体の震えがとまらない、私は震える足でいつもの丘へ向かった、あと少し月日が過ぎればこの木がまた花を咲かせる、私はその木の下で深呼吸をして
「必ず、合格するから待っててね」と言い丘を降りようとした時「待ってるよ」と彼が言った気がした。
そして試験当日、支度をして家を出た、程よい緊張感と共に試験会場へと向かう、段々と他の試験を受けるであろう
人たちが増えてきた、会場に着くとまだ開始まで時間があったので私は彼が持っていた小説を読んでいると隣の子が焦った様子でバックの中身を出していた、気になった私はその子に話しかけた、彼女は驚いた様子で「筆箱がないの」と言った、私は誰かが忘れたりした時のために予備の鉛筆と消しゴムを持ってきている、彼女にその鉛筆と消しゴムを渡すと「ありがとう、試験が終わったら返すから」と言われ同時に試験官が入ってきた、一気に緊張感が増した、試験の答案用紙と解答用紙が渡され、試験官の合図と共に試験が始まった「勉強したことをここで発揮すればいい」そう心に言い聞かせ解答用紙に答えを記入していく、「必ず合格してみせる」私はその一心で試験に挑んだ、
「そこまで」試験官の合図と共に試験は終わった、疲れのあまり私は鉛筆と消しゴムを貸していたのを忘れて帰ろうとしていた、試験会場を出て家に帰ろうとした時、後ろから話しかけられた、振り返るとそこには試験の前に鉛筆と消しゴムを貸した子がいた、「これ、ありがとうございました」と鉛筆と消しゴムを渡された、「私の名前は友永深雪!あなたの名前は?」と聞かれ「神崎美春です」すると彼女は笑顔で「もし合格したら友達になって欲しい」そう言われた、「友達」私には縁がないと思っていた、この時久々に「嬉しい」という感情を感じた、彼女に私は「合格したら、柊木町の中にある一本の桜が咲く丘にきて」そう伝え私は試験会場を後にした。