夜に啼く鶯 -2ページ目

夜に啼く鶯

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よく知られたお話の一つに『三匹の子豚』があります。いくつもバージョンがあるようで、三匹でなかったり、豚でなかったり。

自由ですね。

私が知っているのは一番目二番目の子豚は狼に食べられ、三番目の子豚はレンガの家を建て、煙突から侵入しようとした狼は鍋に落ちて食べられてしまう、というシンプルかつオーソドックスなものです。なかには残酷な部分はつるりと綺麗に書き換えられ、誰も死なず、みんな仲良くハッピーエンド、なんてバージョンもあるようです。素敵ですね、卒塔婆ですね。

 

ところで『三匹のネズミ』のお話はご存知でしょうか?

 

とある料理店。時間は朝の四時くらい。

まだ誰もいない厨房の扉の鍵を開けて男が中に入っていくと、床には強力な粘着テープが張られたボール紙が敷かれ、その上に三匹のネズミが横たわっています。中央の大きなネズミを挟むように一回り小さなネズミが二匹。大きなネズミは最早脱糞し、血を吐いているけれどいずれもまだ息はしている。やがて海を渡ることは間違いなさそうです。

複雑な感情が浮かぶ中で男が不思議に思ったのは何故三匹も揃って捕まっているのだこいつらは?ということです。

ネズミは賢く慎重で臆病とも言われている動物です。いつも通る場所にいつもと違うものがあればいくらご馳走があるからと言って「うっひょおおおお~~!!メシだ~~~!!」と三匹揃って飛び掛かるとも思えない。

何よりネズミは高度なコミュニケーション能力を持つことで知られ、概ね実家に連れられてきた三歳の男子児童と九六歳の高祖母とのやりとりと同程度の意思疎通ができることがわかっています。わかっています?

 

男は耳を澄まします。彼か彼女かは知らねどその喘鳴の中から何か聞き取れるのではないかと。

大きなネズミは霞む目を見開き男を見つめます。アヒンサーを実践する正しい人が来たのではないかと。

 

男は菜箸を手にすると、つむつむと中央の大きなネズミをつつきます。「どうしたんだい?へへいべいべ。バッテリーはバッテリーだろ?」

錯乱しているのですね。男にはよくあることです。

男はこう言いたいのです。「お前はバッテリーでバッテリーはバッテリーか?」と。

大きなネズミはそっと目を閉じました。