柚木麻子という作家はご存知ですか?
私は最近まで読んでいませんでした。
何となく名前に聞き覚えはあるけど…と言うくらい。
どんな作風かは全然、知りませんでした。

最初に読んだのはこれ。
作品的には川上弘美さんのを気に入ったと記憶していますが、柚木さんの女性同士(複数)の思いやりがもの珍しく、この人もっと他のも読んでみたい…と思いました。

次がこれ。
これも遇然の出会い。

前回の、女同士の連携はたまたまなのかも?…と思っていたのですが、この作品はさらに強烈な女性の存在感と、それを支持する複数の女性達というイメージがはっきりしてました。
ああ、こういうものを書く作家なんだな、と知りました。

良い悪い、面白い面白くないだけじゃなく、記憶に残りました。
私も女だから。


そして…今回読んだのは
刑事事件の容疑者とそれを追うジャーナリストの話です。
凄く良い表紙だ。




以下はややネタバレ気味になるかも…。


婚活で知り合った複数の男性を殺した、と数年前に話題になった事件を思わせる話です。

この容疑者は特に美しくもなく、何なら太り過ぎと思われるくらい。なのに次々に男を手玉にとる。料理が素晴らしく上手く、本人も食に執着している…。
その人に何度も面会して独占記事を書こうとしているのは、スレンダーで優秀な記者で、人から憧れられるような素敵な人。同じように優秀で美しい友人や理解のある恋人もいる。
…なのに。

容疑者の凄まじい存在感に、記者のメンタルは揺さぶられる。ここの描写で容疑者は何とも言えない魅力があります。
前半は二人の濃厚なやり取りが面白く、このまま進むのか…と思いましたが。

後半は今まで主人公(記者)の背景のようだった人たちにも厚みが増して、思いがけない面を見せてきたり、それぞれの変化もあり、記者の人生も変わって行きます。
そして、記者と容疑者との関係も…。

人の描写が多角的。人は出会い、変化していく。


面白かったです。

美人でも美人でなくても、生まれたときに与えられたものがどんなでも、その中で手探りで後戻り出来ない人生を歩いていくのは、誰しも変わらない。


一気に読んだ…と言いたいところですが、中々の厚みと、出てくる食べ物描写に惹かれて、いつもより丁寧に読みました。

料理は全部美味しそうですが、とにかく…バター。
ほんとにバターが食べたくなりました。

作中にも出てくるバター醤油餅。

いつもはレンチンだけど、トースターで焼いて、バターと醤油を垂らして…

「読みながら、何度も食べてたね。」
いやせいぜい三回くらいでしょ。
バターご飯はしなかった。
バターラーメンはしました。

美味しかった。
面白かった。


この次は同じ作者で恵泉女学園を創立した河井道を描いた「らんたん」を読むつもり。
文明開花期の女性の学問の苦労と言えば、朝ドラのような壮大な話になりそう。
その時代のシスターフッド。楽しみです。

女同士は結構助け合うものですよ。