朝。
私は数日前から、腰が痛くて
なるべく横になっていました。
そこへ、おじいちゃんが現れ、
「passさん、お話がありますので
ちょっとこっち(自分の部屋)へ
来てください。」
おじいちゃんは話し方が重いですよ。
今ここで言えないくらい
大変なお話でしょうか。

腰をさすりながら行きますと
「夕べは全く眠れませんでした。
こんなことは初めてです!」
どうしたの?
「右の胸が痛み、手足がしびれて
一晩中こすっていました!」

私の寝場所は、おじいちゃんの部屋の
続きでしきりも無いので、物音は
ほとんど聞こえます。
耳の遠いおじいちゃんは
自分が気にならないので
真夜中にごそごそ荷物をかきまわしたり
髭をそり始めたり、結構うるさいです。

ああ、夕べの聞きなれないごそごそは
手足をさする音だったのね。
それでも一晩中ということは無いです。
寝息も聞こえてましたよ。
「とにかく、全然眠れんで!
こんなことは今まで一遍もなかった!」

話は延々と続きます。
いつの間にか、自分の病歴になってます。
こうなるとすごく長くなります。
「5年も入院していたが・・」とか
「頭の血管を二本ほど取って・・」とか
は、いつもお決まりの勘違いネタ。
放っておくと30分くらい続くときも。

う~ん、でも、今はさほど痛く
無さそうに見えますよ。
じゃあ、お盆休み明けたら病院ね、と
さっさと逃げました。
振り返ると、横になった途端
おじいちゃんが寝息をたてています。
やっぱりね。


それとは別に。
おじいちゃんの足の爪の付け根が
化膿してしまいました。
デイサービスの看護師さんから
受診を勧められています。
それについても、毎日のように
おじいちゃんから、
「passさん、お話が・・・」で始まる
ご報告があります。
もう聞いてるよ。
それもお盆休み明けですね。


で、お盆明けましたので、
休みのチョクに頼みます。
私は別用で外出。

さて帰ってみると、チョクはいなくて・・
「passさん、お話があります。」
はいはい。
病院のご報告ね。

「今日は三軒も病院を回りましたが
全部休みでした!」
あら、まだ休みだったの?
それも三軒?

「だけど、これが良く効いたので
続けさせてください!」
これ・・・アクエリアス?
「これを飲んだら、胸の痛みが
消えました!しびれもありません!」
でもこれ・・・ただの清涼飲料ですよ?
「ここにミネラル、クエン酸、アミノ酸が
入っていると書いてあるでしょう!」
確かに。
「これが効いたんです。」
んな、ばかな。
「飲んだら、痛みが止まったのは
本当です!続けさせてください!」
いや、飲むのは構わないですけどね。

今までスポーツドリンクなんて
飲んだこと無かったのかも。
それでサプリメントのように
思っちゃったのかな。

帰ってきたチョクに話すと・・
「え~、一軒しか行ってないよ。」
・・・何で、三軒になったんだろ・・・
「コンビニに寄ったから?」
それか!二軒だけど。
「おじいちゃんを、おばあちゃんみたいに
何か食べさせてあげようと思って・・」
偉い!
「・・何が良いですか?と聞いたら、
メニューは?って」
せめて店は決まらないとメニューは
出ないわね。
「それで、大体の希望だけでも、と
言ったら、熱いものが良いって。」
この季節にですか。
「そう。それで何だか、面倒くさくなって
コンビニで冷凍鍋焼きうどん買って・・」
ふむふむ。
「車で待ってたおじいちゃんが
熱中症になってるとまずいから・・」

そうそう。チョクの車は今
エアコンが壊れてて、窓開けて
走ってます。
「アクエリアス飲ませてた。」
出た。
「始めはちょっとしか飲まないから、
熱中症になったら大変だから、
ちゃんと飲んでください、って言った。」
そこか!
つながったわ。

あれ?冷凍庫のこのうどんは?
「で、これ買って車に戻ったら
冷たいそうめんにしましょう!って。」
・・・それは・・・。
「今日だけでも、何かすごく疲れた」
あんた、プロでしょ。
でもご苦労様。

おじいちゃんの食べ方では
普通の外食は無理かな・・と
思っていたんだけど・・・
今度、何か連れてってあげるかな。
でも・・・希望は聞かないで置こう。