サミットを日本の信頼回復の好機に
日本の首相が主要8カ国(G8)首脳会議(サミット)に出かけると、米欧に埋没せず、どこまで存在感を示せたかが話題になる。
だが、26、27両日にフランスのドービルで開かれるサミットではそんな心配は要らない。東日本大震災後の困難に立ち向かう日本の情報発信を、世界が待っているからだ。
菅直人首相はこの好機を逃さず、原子力発電所の事故で揺らいだ日本の信頼の回復につなげてほしい。
今回のサミットでは議長国のフランスの発案で、冒頭、菅首相に発言の機会が与えられる。この異例の対応は、それだけ各国が原発事故の行方と影響に不安を抱いていることの表れだ。
日本にとっては世界の不安を和らげるまたとない機会だ。原発事故がいま、どんな状況にあるのか、危機を抑える道筋はどう描いているのか。菅首相はしっかり説明する必要がある。日本の原子力政策の見直しについても、各国の関心は強い。
サミット参加国に限らず、エネルギーを原発に頼っている国々はたくさんある。今回の事故のほとんどは、それらの国々にとって未知の問題だ。日本が事故で学んだ教訓を各国と共有できれば、それだけでも大切な貢献になるはずだ。
海外では事故による放射能汚染を恐れて、日本からの農水産物や工業製品の輸入を規制する動きが続いている。22日の日中韓首脳会談では日本の求めに応じ、日本産品の輸入は「科学的証拠」に基づいて対応することで一致した。
サミットでも同じような合意を得られれば、行き過ぎた輸入規制を減らすのに役立つ。
今回のサミットでもうひとつ忘れてはならないのは、大震災で日本を支援してくれた世界各国に改めて感謝の気持ちを伝えることだ。
大震災では150を超える国・地域が日本に支援の手を差し伸べてくれた。救助隊を派遣した国や地域も20を超える。
これらの支援に応えるには、菅首相が「ありがとう」の言葉を繰り返すだけでは十分ではない。各国が知りたいのは日本はどうやって震災から立ち直るのか、である。
菅首相はどのように成長を回復させ、企業の部品・素材の供給体制をどう立て直していくのか、具体的な方策を発信することが大切だ。
世界では中東情勢が緊迫し、テロや核拡散の危険も消えない。日本は必ず困難を乗り越え、外交上の役割も果たしていく。サミットではそんな姿勢を示してほしい。
***社説終わり***
「日本はどうやって震災から立ち直るのか?」は各国はもちろん、日本の方々…とくに被災地の方々が知りたい内容だと思います。
具体的で、明確で、詳細なプランがいち早く出されることを願っています。
パスカル進学教室(茂原)