日本維新の会の「維新八策」に対する提言やコメントを行う。私は経済の専門家ではないが「新自由主義(経済)」的な観点や自らの経験を基に記述する。
日本維新の会は「新自由主義」という特定の統治方法だけに基づいてはいないが、もし「小さい政府」を志向するのなら、官僚の裁量をできるだけ小さくする体制・制度を基本的な政策とすべきだ。
政府は原則として、マクロ経済、外交、防衛、国際関係、国内安全管理に注力し、地方に関わることは各道州ないしは、下部の自治体に委ねるべきだ。
ただし、各種の監査については、各道州および、その上部に国家監査組織を設けて、予算・補助金などの適切な運用を確認するべきだ。
以下では、文中の番号は「維新八策」(2022年6月16日 Ver. 2.1)の項目を示す。
議員待遇
3, 4
議員歳費などのカットなどによる返納金は、国家予算と比較すると少額ではあるが、原則として国庫に返納すべきで、寄付などには充てない方が良い。一政策・一予算が原則だ。
立法改革
「維新八策」に項目が無い。裁判制度も改革すべきだ。
米国の裁判では、実際の損害に加え、巨額の懲罰的罰金を支払わせることで、同一の犯罪防止を図っている。日本も同様に、加害者側に弁護士費用と懲罰的罰金が請求できる判決制度に変えるべきだ。
立法改革については、その他にも多くの改革項目があると思われる。
選挙制度改革
62
「一票の格差」解消の記載はあるが、改めて早急かつ完全に解消しなければならないことを強調したい。
特定の人々が、特定の地域に住んでいるという理由だけで、他の人々の2倍もの投票権を有することは、平等や民主主義に反している。
地方活性化
73
地方活性化は、その地域の自治体に任せるべきであり、国費の投入をしてはならない。もし道州制に移行すれば、予算面での自由度が増えるので、各道州に任せるべきだ。
安全保障
安全保障に「スパイ防止法」などの策定が含まれていない。関連法案も含め早急に具体化し、修正を重ねて効果的な法律とすべきだ。
84
自衛隊の位置付け、日米同盟などに関しては、ここには書き切れないので別の機会に回す。
「維新八策」には「非常時の即応体制」について明確な記述がない。5W1Hすなわち、どのような場合に、誰が、どこで、何を、どのように判断し、どのような指示命令系統で自衛隊に伝達するのか、概略でも明記すべきだ。
また、自衛隊が現場で判断できる範囲を、出来るだけ拡大すべきだ。
85~
兵器の供給を海外に全て依存すると、有事の際に兵器供給が途絶える可能性がある。ドローンなどの新型兵器、戦闘機、戦艦、潜水艦、兵器、武器、装具およびこれらの輸送手段については、可能なものから国産化を進めるべきだ。自衛隊向けだけでは生産量が少なすぎて高コストになるので、海外に輸出(または支援)することも可能とすべきだ。
別には、米国で(共同)生産・備蓄して、必要に応じて日本に優先的に配備することも視野に入れるべきだ。
また緊急事態に備え、StarlinkまたはStarlink日本版の製造と設置を急ぐべきだ。
85~
米国では、警察、CIA、FBI、Homeland Security、IRA(税金)などの多重の組織で国家(国内・海外)の安全保障を実施している。日本も、これに倣って、組織・体制の見直しをすべきだ。
また、それに従った法整備も必要である。
日本の、こうした安全保障が手薄であり、日本が外国のスパイ天国になっている可能性がある。宗教団体などを通じて、海外に巨額の「日本人の献金」が流出している例や、NPOやNGOを経由して、不正な資金が海外に流出していると言う噂もある。政府による、しっかりとした取り締まりが必要である。
87
記載されているように、兵器開発やその基礎研究には、旧国立研究所や大学の参加を促すべきだ。軍用の研究開発から民生用のハイテク技術が生まれる可能性がある。
104
農産物の生産については、すべての規制を撤廃し、農家または農業企業などの組織による自主性に任せるべきだ。
JAは段階的に縮小し、解散させるべきだ。
エネルギー政策
132
地球温暖化などの環境問題を解決する方法として、自然エネルギーの活用が進められている。しかし、例えば「太陽光エネルギー」に関しては、国内生産の割合が低い。
(総出荷量比)日本企業/外国企業 = 38/62
(生産比) 国内生産/海外生産 = 10/90
しかも豊かな自然を破壊して大量の太陽光パネルを設置している事例もあり、これでは環境問題の解決に資しているとは言えない。太陽光パネルの設置を地方自治体に任せていることが問題であり、導入・設置・廃棄・運営のガイドラインを政府が策定すべきである。
自然エネルギーがいくらクリーンであっても、エネルギーの安定供給はすぐには可能にならない。当面は、日本が高い技術を持つ化石燃料(石炭・石油・天然ガス)火力発電所は稼働を維持すべきだ。有害排気ガス処理、CO2処理技術の進歩を促せば、いずれはこれらのガスの大気中廃棄は、極めて微量になる。
これに並行して、当面は既存の原子力発電所の稼働・維持、場合によっては新設も検討すべきである。しかし安全な廃棄物処理の方式、廃棄場所の問題は一朝一夕には解決できないので、拡大することは困難である。さらに検討が必要だ。
現在の原子力発電は、放射性元素であるウランを濃縮し、棒状に加工して燃料棒とし、これから発生する熱エネルギーを水蒸気として取り出し、蒸気タービンを回転させて発電する。
しかし、そもそも燃料棒からは、高エネルギーのアルファ線(陽子)、ベータ線(電子)、ガンマ線(X線)が放出されており、それぞれを電気に高効率に変換する方法が発明されれば、『原子力発電所』の概念は全く変わり、より安全になるだろう。
このような研究開発は、大学で長期間かけて実施されるべきものであり、電力会社に学生を送り込む代わりに研究費を受け取るだけで、研究開発を怠って来た大学の「工学部原子力工学科」に、真剣に取り組む責任がある。
133
日本の有効利用できる土地は狭いが、日本の背後には広大な領海が広がっている。この領海を活用しない理由はない。産業に有用な資源やエネルギー源が大量に埋蔵されている可能性がある。より積極的に海洋調査・海洋資源探索などによる海洋利用を進めるべきだ。
加えて海洋浄化にも取り組むべきだ。
景気対策(短期)
134
発行国債は政府の負債であり、「日本維新の会」に政権奪取する意図があるのなら、国家予算に占める国債の比率が欧米並みになるまで、消費税減税は実行してはならない。
政府による給付金・助成金などがあるところには、必ず贈賄がある。これを徹底して取り締まり、かつ、政府・国家関連組織の税金の無駄遣いを徹底的に監査すれば、想定しているよりも早く、国家財政の正常化(PB)が達成されるであろう。
コロナ対策
143
今後、さまざまな感染病が特異な形で発生する可能性がある。これを既存の感染症分類に入れることは、無駄な議論にしかならない。過去に経験のない感染病に対しては、新たに適切な分類項目をつくれば良い。
150
コロナ病床に対応する病院・医院に補助金を出すことには問題がないが、適切に使用されているかどうかの監査が必要である。
補助金全般に言えることだが、補助金の使途が適正かどうかの監査および罰則が弱すぎて、税金の無駄遣いがひどい。
そもそも政府が十分な検討と国民への説明もなく、補助金を支給することは、中止すべきだ。
税制改革
150
ベーシックインカムの制度を導入している国は無く、国家予算を硬直化させる可能性があり、当面、「維新八策」から削除すべきだ。
一方、給付付き税額控除方式は現行の税制の改正であり、その可能性を、もっと丁寧に検討すべきだ。
153
消費税の一時的な低減はしてはならない。販売者と消費者に混乱をもたらし、消費税を10%に戻す時に、再び混乱が生じる。
財政政策
164
国家予算の国債負担分を(10%程度に)低減すべく、最善を尽くさなければならない。現状は与党の選挙対策のバラマキ政策のために、他の国に比較しても、極端に大量の国債を発行しており、これが日本の国内・国際的な活動を制限している。借金を後の世代に負担させたり、円の価値を下げることにもつながる。
プライマリーバランスを早期に達成することが重要だが、維新には大阪でその経験があり、日本の政党の中で、唯一、冠水できる。
金融政策
167
金融政策に対する政府・日銀の介入は最小限にすべく、関連法制を見直すべきだ。
168
これは最悪の政策。日銀の権限範囲は米国FRBと同等とし、それ以上の権限を持たせてはならない。
171
脱税などに繋がりかねない海外資産の把握を行うべきだ。
社会保障制度
174
上記に述べた通り、ベーシックインカムは「維新八策」からは削除すべき。
そもそも有権者から「日本維新の会の、ベーシックインカムは何ですか?」と聞かれて、正しく答えられる国会議員や党員が何人いるのか、極めて疑問である。
セーフティネット
180
ベーシックインカムについては既に述べた。これが実際にセーフティネットになるかどうか不明なので、現段階で政策に入れる必要はない。
有権者/国民を混乱させるだけであり、またベーシックインカムに加えて、従来の皆保険制度、年金制度も維持することになることは避けられないだろうから、国家財政を硬直化させる可能性がある。
187
ハローワーク(公共職業安定所)は民営化すべき。
206
安楽死を明確に制度化すること。
消費者保護
208
教育現場、職場など社会のどこであっても、パワハラ・セクハラなどは厳罰化すべき。
パワハラなどによる自死の隠蔽があった場合には、関係者・組織にも厳しい罰則を設ける。
小児性愛者については再犯の可能性が高く、長期間にわたって所在をモニターできるようにすべき。
成長戦略
217
産官学軍の連携で半導体・蓄電池・医療の技術開発を進める。米国のDARPAに倣って、防衛省が大学に研究費を拠出できる制度を作るべきである。
217
現在の大学・研究機関は下記の理由で研究開発能力が衰退している。これを回復するためには、実用化研究開発をまず強化するべきだ。基礎研究は実用化研究の中で、必ず必要となるので、それを含めれば良い。
将来、研究開発能力が強化されれば、実力に応じて基礎研究を独立して実施することも検討する。
また大学・大学院には、以下のような問題があり、さらに改革する必要がある。
・大学、大学院での競争が無い。例えば博士号学位を取得できるかどうかは、教授の手に握られており、大学院生の能力と関係がなくなっている。
・大学生、大学院生の経済力が十分でなく、研究に打ち込めない。
・研究室の教授を含めたスタッフの教育・研究の指導能力・指導時間が少ない。
・大学、大学院のカリキュラムのレベルが低い。例えば英語の講義は大学2年生で終了するため、英語力や英語でのプレゼンテーション能力が低い。数学も同じである。少なくとも基礎的な実用数学については、大学・大学院を通じて、一貫して実施すべきだ。
228(NHK改革)
NHKの基本的な役割は、全国の情報、国内政治情報、海外情報を事実に基づいて正確に報道することを明確に定義すべきだ。これに加えて品質の高い教育・文化事業関連の番組編成も必要である。これ以外の番組に関しては、民放に任せるべきだ。
245~
農業の企業化が可能となるよう、規制を撤廃すべきだ。農家も農業企業も生産・流通・販売は、他の製品と同様な形態とする。形の悪い農産品の廃棄などは停止する。
275
地方空港は維持すべきである。緊急事態に必要となる。
また過疎地の電車路線も緊急事態に必要となるので、維持すべきである。
外国人対応
348
日本に滞在する外国人には、「生活保護」を含み生活支援は認めず、自費または国費での帰国を促すよう制度改正すること。
教育無償化
394~
維新八策の中に「教育」という項目が、独立して設けられていないのは問題だ。
1)教育内容
2)義務教育
3)教室崩壊、不登校、いじめ
4)教師の資質、小児性愛犯罪
5)英語、数学の大学院博士課程までの一環教育
語学教育は大学で行っても良いが、民間の語学学校も活用すべきである。例えばフランス語なら「日仏学院」を利用できる。
6)大学教員の資質
7)企業の博士課程修了者の採用、博士課程大学院生の企業就職・待遇
8)大学管理と大学教授会の分離、教授会の権限縮小
9)試験制度
10)社会人再教育、医師・弁護士などの再教育
など、課題が山積している。
さらに、スポーツ、学芸、伝統芸術の振興についても述べるべきだ。これは、大阪で実績があり、大阪維新の経験が生かせる。
インフラ改修
「維新八策」では項目として挙げられていない。
国内の高速道路(東名高速道路 1968-1969年、東京高速道路 1959年)、大架橋(明石大橋 1998年)、高層建造物、国有河川堤防などは西暦2000年以前の好景気の時代に建造されたものであり、現在では劣化が著しい。
これらは震災時、戦争などの国家有事には不可欠のインフラであり、できるだけ早く改修・再建設する必要がある。
そのためには、予算の裏付けはもとより、改修・建設技術、作業機器・設備、作業要員が必要となる。
米国では、高速道路(Interstate)の一部は、非常時の戦闘機の発着陸が可能となるように設計されている、と聞いている。日本においても、一部は同様な設計にすべきである。
以上