本日は2月9日【金】に化石ブロガー『夏樹さん』の案内で神奈川県相模原市内で採集した化石を紹介します。
化石の解説をする前に化石産地の詳細について解説をしておきます。
【産地全景】
化石が含まれいるのは、その露頭下部の小規模なレンズ状にできた礫岩内から多産します。
中津層群 神沢層は、今から約310万年前に堆積した地層のようです。
産出する化石の種類は、静岡県掛川市周辺に広がる掛川層群大日層から採集できる種類と同一種が採集できるようですが、大日層のように多種にわたる貝化石は採集できないようです。
では、当日、採集した化石をみてください。
和名:アリソガイ
学名:Coelomactra antiquatus (Spengler,1802 )
殻長:94.35mm
殻高:74.96mm
産地:神奈川県相模原市 (相模川 左岸)
産出層:中津層群 神沢層
岩層:砂岩
特徴:殻は亜三角形で大型。後端は裁断状。殻表には規則的な細かい同心円状の皺がある。バカガイに類似しているが、バカガイより頂角が狭い。
現世種は、相模湾以南の潮間帯~水深20mの砂底に生息。
ちなみに採集した化石を『アリソガイ』と判定した事に関して異論がある方はいないとは思えますが、私は判定にあたり他のバカガイ科との比較も行っておりますので、その論証をしていきたいと思います。
まずは、寒冷系バカガイ科で形状が類似している『ウバガイ』と比較をしていきます。
【清川層産『ウバガイ』(左)と神沢層産の二枚貝化石(右)を比較】
殻長:97.62mm
殻幅:82.71mm
産地:千葉県木更津市椿
産出層:下総層群 清川層
時代:第四紀更新世後期(約20万年前)
特徴:殻は亜三角形だが卵形に近く、大型になる。殻質は厚く、良く膨らむ。前後側歯は強大。殻表は平滑。
現生種は、鹿島灘以北、日本海北部、沿海州、サハリン、南千島、オホーツク海の潮間帯下部~水深30mの砂底に生息。
※形状は類似していますが、殻の厚さ、殻表の成長脈の間隔や殻表の光沢が違いますね。
なお、殻の厚さに関して云えば、地域差の可能性もあり、殻表の光沢については風化の度合いによる違いあるため、これだけでは決め手にはしていません。
一番の違い(ウバガイでは無いことの確証)は、内面櫛歯の形状でした。
【清川層産『ウバガイ』の櫛歯】
一応、大日層産『アリソガイ』と清川層産『ウバガイ』の比較もしておきました。
【大日層産『アリソガイ』(右)と清川層産『ウバガイ』(左)を比較】
殻長:80.36mm
殻高:64.54mm
産地:静岡県掛川市大字遊家
産出層:掛川層群 大日層
時代:第四紀更新世前期(約200万年前)
※形状は類似していますが、殻の厚さ・殻の膨らみ・成長脈の構造・殻表の光沢についてはかなりの違いがありますね。
ちなみに櫛歯の形状は以下のとおりです。
【清川層産『ウバガイ』の櫛歯】
【大日層産『アリソガイ』(左)と神沢層産二枚貝化石(右)を比較】
一番の決め手である内面の櫛歯の形状も以下の画像のとおりです。
【大日層産『アリソガイ』の櫛歯】
これで、神沢層から産出した二枚貝化石は『アリソガイ』であると云うことに納得していただけたと思います。
ちなみに『バカガイ』と『アリソガイ』の違いについても比較をしておきます。
【木下層産『バカガイ』(右)と大日層『アリソガイ』(左)を比較】
バカガイ科
和名:バカガイ
学名:Mactra chinensis (Philippi,1846)
殻長:76.21mm
殻高:56.01mm
産地:千葉県印西市吉高
産出層:下総層群 木下層
時代:第四紀更新世後期(約13万年前)
特徴:殻は亜三角形で大型。薄質で良く膨らむ。殻表は平滑ではあるが、腹縁近くで太く、低い同心円肋が発達する。
現生種は、殻表にはしばしば褐色の放射色帯をもつ。套線は二重、套線湾入は丸く浅い。サハリン、オホーツク海から九州の潮間帯下部~水深20mの砂泥底に生息。
※『アリソガイ』と『バカガイ』は、既に形状に大きな違いがあります。『アリソガイ』は殻頂部の傾きがあり、後端が裁断状であることです。
本当なら木下層産『アリソガイ』で比較検討をするのが一番ベストな方法なのですが、残念ながら木下層産『アリソガイ』は採集したことがありません。
何時かは採集してコレクションに加えたいですね!
(´▽`)ノ