(ネタばれあり)
スピルバーグ作品へのリスペクトや80年代へのノスタルジーとして
語られることが多いのでしょうが 一方で映画的な技巧のうまさに
あふれた作品でもあり 私はそこを評価します。

たとえば 子どもたちが闇に包まれたオハイオの原野で 
線路をバックにロケ撮影をしているシーン。
監督のチャールズが予期せぬ列車の通過に興奮し、
"クオリティをあげるために"大あわてで撮影を始めたあと 
衝撃的な転覆にいたるまでを ほとんどノンストップで一気に見せる
手法は ヒッチコックの演出を連想とさせます。
恋の季節にはまだ早い子どもたちは 8ミリ仲間というありふれた
友情でつながって行動しているわけですが ミステリアスな女の子
の登場で 場の空気がしだいに変わり 波紋が広がっていく様子が
得体の知れないモンスターへの不安に相乗していく展開も巧みですし、
子どもたちが自分の体に伸びる触手の影に気づいてスクリーンを見やると
そこで恐るべき光景に気づいて.....という見せ方や オーバーランしたバス
から脱出した少年たちが住宅地から墓場へ向かい やがて地下の洞窟へ
と 複数にまたがったシークエンスの構成も優れています。

(DVD鑑賞)

Vista Visions

田中絹代、山田五十鈴、高峰秀子、杉村春子、岡田茉莉子、中北千枝子…..
この顔合わせだけで空前絶後 ここに栗島すみ子と賀原夏子が加わったら 
もう手がつけられないよね(笑)

成瀬巳喜男のクラシック「流れる」は 何度観ても圧倒されてしまう
”女優映画”の傑作中の傑作。
隅田川沿い 柳橋界隈にある老舗の芸者置屋「つたの屋」を舞台に
“新入り家政婦 絹代は見た!” 花柳界の現実。
彼女演じるお手伝いさん 梨花を狂言回しに、没落していく置屋に
身を任せた女たちの日常が 流れるままにつづられていきます。

芸者接待の場面は一切なく ほとんどを置屋の建物内だけで描ききった
舞台劇的構成ですが、一階場面と二階場面の効果的な描き分け、
窓からのぞく雷鳴きらめく夏の夜空など優れた映像表現もいっぱい。
豪華キャストのひとりひとりにきちっと見せ場を作りつつ 的確に
アンサンブルをさばいていく成瀬の演出は 映画の教科書。

現代娘 茉莉子の奔放さ、すべてがイヤになるくらい巧い杉村先生、
女の盛りを過ぎた五十鈴のはかなげな横顔、クールに突っぱりながら
どこか人の良さを隠せない秀子、幼な子を抱えろうばいするか弱き千枝子、
本当の大女優ってのは 派手な見せ場を用意されなくても 演技力で
目立ってしまうものよ ごめんあそばせ な “大和撫子” 絹代….

でも 本当にすごいのは 優しい姐さんぶりを漂わせながら 
最後の最後に全員を”崖から突き落とす” 栗島すみ子。
確かに女優だったら コレ演ってから死なないとつまらないね(笑)

それにしても この映画の杉村春子、宮口精二、賀原夏子、
中村伸郎、南美江 という ザ・文学座な顔ぶれをみるにつけ 
当時の日本映画を豊饒なものにしていた源が 演劇(舞台)界にあった
ことを痛感させられます。

1956年といえば、三島由紀夫作の「鹿鳴館」が初演された年で 
杉村さんのキャリアにとっての絶頂期。
それから7年して例の大量脱退事件が起こり、やがて文学座は 
三島さん 賀原さん 中村さん 南さんたちと訣別することに.....

杉村、沢村貞子、細川ちか子、望月優子が元芸者を演じて
四つに組んだもう一本の成瀬監督作「残菊」もありますが そちらは
未見なのが残念。 DVD化もまだみたい.......
「ヘドウィグ アンド アングリー インチ」「ショートバス」の
ジョン・キャメロン・ミッチェルの最新監督作 「ラビットホール」の予告編↓
http://www.youtube.com/watch?v=K9iJH2P96dM

ニコール・キッドマンとアーロン・エッカートが夫婦役で、愛児を交通事故で亡くしたことからはじまる
シリアスドラマで ピューリッツア賞を受けた舞台劇の映画化なんだって。
キッドマン、エッカートを起用した ミッチェル監督にとっては初の"メジャー作品"ということが
言えるかもしれません。

冒頭に出てくるのは"子どもを失った親の会"みたいなミーティングの様子だと思うけど
サンドラ・オーの顔も見えるのが キャメロンらしい感じ。