ポーランドの監督アグニェシュカ・スモチンスカの長編デビュー作
「ゆれる人魚 The Lure」
(ネタバレがお嫌な方はどうぞ読まないでくださいね^_^)
舞台は 1980年代のワルシャワ
水面から眺める人魚の姉妹と
二人を陸へ引き上げたバンドマン
姉妹をボーカルに仕立て上げ
ナイトクラブは盛り上がります
ミュージカル仕立てで
歌が、心情を吐露するのと対照的に
彼女たちが覚えた「ニンゲンの言葉」で話すさまは
叶えたいことの為に アレコレ学んだ人の ぎこちなさを感じます
イルカの鳴き声みたいな“本来の声”が
なぜかしっくりくる
そう、二人はヒトを食らう人魚。
男は捕食対象、つまり餌。
そんな男、つまり
陸へ引き上げてくれた
ベーシストに恋する姉
浮かれる姉を心配しつつも
ただ見つめ、餌を食らう妹
鱗を引きちぎり
「これでベースを弾いて」と告げる姉は
その鱗も捨て、移植手術で人間の足を手に入れる
代わりに声を失います。
歌えない 歌姫
ろくに歩けない両脚を ベッドに投げ出しても
好いた男は血を見るだけ
(いくら好きでも 抱くたび血を見るのはまぁ耐えられないわよね^^;)
果てに男は 人間の女と 結ばれる
結婚式の夜
鱗を捨てた 人魚と同じく
角を捨てた悪魔が ヒトの姿で囁く
“男を喰らえ”
恋に破れた人魚は 夜明けまでに
好いた男を 喰らわなければ
そのまま 海の泡となるのです
★★★☆☆
人魚が姉妹ってところが
ヒトは捕食対象ってところが
そして魚が 人に恋をするってところが
ポイントですね^_^
興味を持って陸に(異世界)へ上がった
陸の生きものになり 皆に好かれる
欲しいもの(男)を手に入れるため
姉は鱗を捨て ヒトになろうとする
妹は平気で近づき 喰らおうとする
姉妹にとって
男は欲しいもの、なのです
陸に上がる前までは 生きる糧の食べもの
恋したから 初めて食べもの以外に見えた
姉妹はどちらも 欲しいもの
しっかり 手に入れてんのよね^_^
結婚式の夜が明ける時
男に声なく寄り添い抱かれて
至福の笑みと共に泡になる姉貴と
それを見届け
泡まみれになって ???な男に
一瞬で 食らいつく妹
(あの素早さは見もの!)
邦題こそ「ゆれる人魚」ですが
原題は「Lure」
(誘惑するもの,魅惑,魅力,おとり,擬似餌,ルアーの意)
妹が獲物を仕留める為に
姉は図らずも疑似餌になっとりますねw
欲しいものを手に入れるのに
なんの躊躇もない人魚たち
欲しいもの が恋の対象になったから
複雑になっちゃった(ように見える)というお話
ヒトだけでなく 人魚ですら
(まぁ、半分ヒトだし^_^)
物事を複雑にするものなのだなぁ。
薄っぺらい 他人目線の 美しさ至上主義もぶっ飛ばす
カッコいいのか ダサいのか よく分からない(けど持っていかれちゃう♪)音楽と ファッションと その色彩と
一瞬で我にかえる グロテスクな鱗が素敵です。
この世界では
ヒトと魚は 食べるか食べられるか
陸に上がることで 違う世界へ飛び込んだから
その世界でのやり方に 合わせようと
言葉を覚えたり 脚を付けたり したけど
やること(欲しいものを獲ること)は変わらない
その身を無くして(泡になって)悦びを得る姉と
その悦びを疑似餌に 生きる糧を獲る妹
二人はセットだね(´∀`*)
欲しいものを
代償払って獲ようとする者と
ただストレートに手に入れる者
どっちでもいいのよね。
あなたはどっち?^_^
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