ひとは、毎日生まれ変わる ー「めぐり逢わせのお弁当 Dabba」 | ​ 観るチカラを、生きる糧に。 ー SCREEN(私設)研究所

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観る映画が、あなたの、わたしの、人生のヒントになる。
ここは、SCREEN(私設)研究所。

潜在数秘術×映画で
「観る」ことと心の関係を
映画を通して読み解いていきます。

|<600万分の1>の出逢い|



インド・ムンバイ
お昼どき
ダッバーワーラー(弁当配達人)たちが
各家々から集荷したお弁当を
慌ただしく配って歩くオフィス街
勤め人は
家族がつくったできたてのお弁当にありつく



主婦イラは
自分にも家庭にも 関心を示さなくなった夫を気にしてる

ある日
「料理は愛を深める」と信じて作ったお弁当が
まるで舐めたみたいに空っぽで帰ってきた



イラは喜び
夫の帰宅を待ちわびるが 夫は素知らぬ顔

それどころか見当違いに
『カリフラワーがうまかった』
とかぬかしてる



そんなの入れてない!
…食べてない?

じゃ空っぽのお弁当箱は何?



翌日
イラはお弁当に手紙を忍ばせる
『食べてくれてありがとう』



返ってきた返事は
『今日のは塩辛かった』

???
・・・それだけ?




1日20万個のお弁当を配る
2千人のダッバーワーラー(弁当配達人)たち

誤配送は
確率たったの<600万分の1>



その600万分の1で
イラがつくったお弁当は

35年勤め上げ
早期退職間近の男サージャンのもとに届いた

彼はイラの手料理に驚き
次第に イラのお弁当を 心待ちにするようになる



イラは
夫への不満や 老いた父母のこと

誰にも言えない不安を
手紙で サージャンに打ち明けるように




四段重ねのお弁当
チャパティの下に忍ばせた手紙

顔も知らない
女と男の
奇跡みたいな
手紙のやりとりが続く。




|お弁当と共に 運ぶもの|




心通わせたふたりは
お弁当箱が運ぶ手紙が
お互いに届くまでの時間

毎日 新しく生き直すかのように
時間を紡ぐ

周りは 決して気づかない
本人たちも 気づかないほどの
小さな変化

お弁当箱が 往復するたびに
毎日ふたりは 小さく生まれ変わっていく



ダッバーワーラー(弁当配達人)たちが
自転車で
電車に乗って
お弁当を運ぶ

力強い手拍子と 歌と共に



"人はたとえ間違った電車に乗ったとしても、正しい場所へと導かれる"




|それぞれの、“正しい場所”|




やがて イラは
サージャンに「会いたい」と告げる

待ち合わせをし 会おうとする



だけど サージャンは来なかった

自分に 懐かしい祖父の匂い
ー老いを感じとった彼は

遠巻きにイラを見留め
顔を合わせることなく その場を去ります

そして手紙で
想いを告げる



映画は
イラが何を
誰を選択したのか
描かれることなく終わります

ただ
会えなかったサージャンからの手紙を読んだ
彼女の前には
新しい世界が拡がっている



イラとサージャン
二人が それぞれ“めぐり逢った”のは

小さく生まれ変わった
自分自身。