「魔法の都」(イーディス・ネスビット)
ー今日われわれの住んでいる世界と強い類似性を持っているという、
狂気の世界についての物語ー
科学者となる喜びと悲しみを知った後に初めて、この本について
考えをめぐらし、自分のいる世界の鏡像を見たというー
著者が最初に述べる通り、
科学者でない人に向けて科学は内側からどう見えるかを書く
という試みは、まさしく鏡像ー鏡のように、
一科学者の立つ世界を映し出している。
ピアジオの「微分方程式」から離れず、
数学との恋に落ちたクリスマス休暇
戦時下、爆撃空軍司令部に民間人科学者として
勤務した間の自問
戦後の物理学開花の年ー1947年ーイサカ・コーネル大で
出会い師となったハンス・ベーテ
ここで出会う科学者たち
ファインマン
シュインガー
トモナガ
・・・蒼々たるメンツで、ピンと来ないほど(笑)
ファインマンに誘われた
アルバカーキへのドライブと道中の議論
彼と別れ、アナーバーでシュインガーの講義を受けた後で、
ミュンスターの友人から届いた手紙にしたためられた、イエーツの詩。
I would spread the clothes under your feet,
But I am poor, and have only my dreams.
I have spread my dreams under your feet;
Tread softly, becauses you tread on my dreams.
私はあなたの足もとに、衣裳を広げたい
だが私は貧しくて、夢だけしか持っていません。
私はあなたの足もとに、私の夢を広げました
そっと踏んでくださいね、私の夢を踏むのですから。
この後、イサカへ戻る途中、彼を一躍有名にした
量子電気力学理論〈ダイソン方程式〉を発見する。
相対性理論と量子力学を
量子電気力学的に統合した数式
・・・言われてもわかんないんですけど(笑)
ファインマンの描像と シュインガーの方程式の統合
・・・言われるとちっとはわかる(笑)
そして、そっと踏むよと約束した彼はーイギリスをたってちょうど一年後ープリンストン高級学術研究所へ招かれる。
オッペンハイマーとの出会い
核の平和利用とゼネラル・アトミック社
フレディ・ド・ホフマン、テッド・テイラー、エドワード・テラーらと
共に開発し初めて利益を生んだ原子炉TRIGA
そして核禁止の流れの中でまるで敵味方のように分かれ
また糾弾された科学者たち
1970年までに土星へと詠ったオリオン計画とその終わり
・・・マーティン・ルーサー・キングの演説を
かの有名な、とも数日後に亡くなるとも知らず
聞いた話で終わっているのが象徴的。
いつか尽きるエネルギーの代わりに原子力を、
宇宙へ飛び出すのに核燃料を・・・兵器ではなく
生きるために使えるようにと試行錯誤したけど、
先に兵器として使われたが故に乗り越えられなかった壁。
彼をピースメーカー(平和をつくる人)と称したけど、
みんな(科学者)だってそうだよね。
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★ 「音楽はすごく好きですが、長すぎます」
幼い頃、父に連れられて行った音楽会で著名なソリストから
そんなに若い時に良い音楽を沢山聴けてさぞうれしいだろう、
と尋ねられ答えた言葉。
・・・それ以来、父はこの言葉を度々引き合いに出した、ってトコが
お父さん本当に嬉しかったんだろうなぁ。
音楽そのものよりも楽譜の記号の複雑さに興味を持つあたりが
数学好きだよね~
★ 父の演奏そっくりなピアノ
カリフォルニア大で教えていた時、借りていた家を空っぽにして散歩に出掛け、
帰ると中から響いてきたのはバッハの前奏曲第八番変ホ短調。
弾いていたのは、自宅のパーティに招待するため訪れたエドワード・テラー。
水爆製造計画への関与から深く傷つくことになる彼を
「私には彼を敵と見なすべき理由はなにもない」と言い切っちゃうところがいいなぁ。
