「キリマンジャロの雪」アーネスト ヘミングウェイ | ​ 観るチカラを、生きる糧に。 ー SCREEN(私設)研究所

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潜在数秘術×映画で
「観る」ことと心の関係を
映画を通して読み解いていきます。

キリマンジャロは、高さ19,710フィートの雪におおわれた山で
アフリカ大陸の最高峰と言われている。
西側の頂きはマサイ語で“神の家”と呼ばれている。
この西側の頂上に近く、ひからびて凍りついた一頭の豹の死体が横たわっている。
こんな高いところまで豹が何を求めてやってきたのか、だれも説明したものはいない。





「BANANA FISH」劇中に登場するヘミングウェイ
死を恐れないアッシュが
死を思うときに考えるという

  キリマンジャロ頂上近くに横たわるひからび凍てついた豹

どこから来て
どこへ向かっていたのか・・・



今さ~キリマンジャロ雪ないんだよね。
じゃぁこのお話、氷河期が舞台なの?って
いや氷河期なんて長いスパンから見たら
ついこないだなんだけどね。




ミモザの木の木陰で
ベッドに縛りつけられてる男は
女を相手に悪態をついている

女は
明日こそは飛行機がくると
信じてる



自分の人生の最盛期に
もっとも幸福に過ごした地

再出発をするつもりで来たアフリカで
怪我を負い
医者も
車もない地で
連絡も取れず

悪くなるばかりの脚を抱える男の脳裏には
幾度となく思い出が浮かぶ

作家の彼が
書こうと思っていたことさえ
今は思い出すだけ・・・

書くことすら
どうでもよくなってる。

苦痛も
恐怖も
なくなり

疲労と
憤りだけで
横たわる男のそばに
死が顔を見せる




人は、黙っていても
頭の中で考えていたり
会話をしているという。

まさしくそんな感じ。
思い出すことも、楽しい思い出というよりは
たまたま開いた日記帳のページのような。
それとも、忘れたくないことなのかな。




死を前にして
後に何も残してゆきたくない男は
女に
「もう愛してない」
とまで告げる

いつもの嘘
見抜いているのかいないのか
彼女は付き合う



男は
辛うじて喧嘩になるところを思いとどまり
振り返った

今までいつも喧嘩をし過ぎて
その腐食作用で
関係を駄目にしてしまったこと

求めすぎて
何もかも
すり減らしてしまったと



誰かの死にゆくところが描かれる時って
大体が病と闘うか
幸せの一瞬に訪れる事故とか・・・

だからこんな風に
つらつらと昔の話が出てきたりするのが
ちょっと異質なようにも感じられるよ

このようにして死んでいくのだーなんて言葉
作家じゃなきゃ出てこないよね。



もちろん
何を語ってもその時は来る・・・

そして
彼が何を求めてやってきたのか
だれも説明したものはいない







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