その日曜日はマヤ歴の新年らしかったが、自粛ムードで長梅雨でもあり鬱々と迎えた。


僕は、二日酔いなのか酷い頭痛を寝床で感じていた。

大して飲んでないのに?

寝違えたのかな?

むち打ちで髄液が漏れると脳圧が変わり気持ちが悪くなる。

そんな症状が今までもたまに出ていた。

 

突然スマホの着信が響いた。実家の親父からだった。

お盆には、コロナのことを考えて電車を使わずレンタカーで帰省する予定を伝えていたが、

他県ナンバーの車は白い目で見られるとの内容だった。

今年は、帰省できないかな。

年老いた両親に会えないのは心が痛んだ。

 

そのまま寝床から出る気力もわかず、どんどん思考がマイナスになっていった。

先日出た給料は人生で最低の額だった。怒りを感じた。

若いころは、給料は二倍三倍と上がっていくと思っていた。しかしそんなことはなかった。

今までの人生は何だったんだろう。

 

結婚して離婚して、職も変わった。

色々あったが、結局は何も手にしてないと感じた。

迷惑をかけてしまった人がたくさんいた。

 

経済的も何も達成せず、

もっと最悪だったのが、精神的にも何も達成していなかった。

成し遂げたものは何も無かった。

 

虚しかった。

 

布団から出たがそのままソファーに横になった。

怒りや悲しみを通り越し、ただただ虚しかった。

自己憐憫も感じなかった。

鬱っぽいと認識はできた。

寝不足や運動不足、エアコンの当たりすぎも原因だとわかっていた。

でももう動けなかった。

考えることも感じることもしたくなくなった。

心さえも動くのをやめようとしていた。

空虚だった。

時間だけが無駄に過ぎていった。

 

 

部屋が暗くなりかけたころ、ある考えが心に浮かんだ。

 

忍び寄れ。自分の意識に忍び寄れ。

 

制御できない自我が刃のイメージで沸いた。

そして僕は、その刃に気づかれぬようそっと後ろから忍びよりスッと身を寄せた。

 

 

その瞬間、何かが変わった。

虚しさが消えた。

何事もなかったかのように頭痛も消えていた。

まるで憑き物が取れたようだった。

 

外側の世界は何も変わらない。

ただ僕の内側で起きたことだった。

 

新しい年を迎えたのかもしれない。

 

 

この作業を人は自己参照、モニタリング、俯瞰で観ることだと言うかもしれない。

しかし、僕は意識に忍びよるというイメージが好きだ。

力づくで手なずけるには手強わすぎる。

だって、相手はどうにもしょうがない自分だから。

だからそっと自我をトリックにかけるのだ。